トレミーの48星座は、2世紀の天文学者クラウディオス・プトレマイオスが著書『アルマゲスト』の中で体系化した星座のことです。プトレマイオスの英語読みが「トレミー」であることから、「トレミーの48星座」または「プトレマイオス星座」と呼ばれています。これらの星座は約1000個の恒星の位置を表にまとめる際、位置の目印として使用されました。
この48星座は、それまで各地域で乱立していた星座を整理統合したもので、紀元前から伝えられてきた星座をヒッパルコスが星表にまとめ、それを基にプトレマイオスが発表しました。古代では夜空に描かれた絵にすぎなかった星座が、科学的にも意味を持つようになった歴史的転換点となったのです。
参考)https://space-park.jp/events/tenmon/2003/0513/index.htm
現代の88星座は、このトレミーの48星座をベースに、近世に考案された新たな星座を加えることで成立しました。48星座のうちアルゴ座を除く47個は現代の星座でも採用されており、まさに現代星座の基礎と言えます。プトレマイオスが定めたこの星座体系は、約1500年間もの間、増えることも減ることもなく使われ続けたという驚異的な持続性を持っています。
参考)現代の星座はどのようにして決められたの?|「マイナビウーマン…
北天星座は北の空に見える21個の星座で構成されており、多くが明るい星を持ち見つけやすいことが特徴です。代表的な星座には、W字型で有名なカシオペア座(椅子に座った婦人座)、1等星ベガを持つ琴座、北極星がある小熊座などがあります。
北天星座の完全な一覧は以下の通りです。小熊座、大熊座、竜座、ケフェウス座、牛飼い座、北のリース座(北のかんむり座)、跪く者座(ヘルクレス座)、琴座、鳥座、カシオペア座、ペルセウス座、手綱を執る者座(御者座)、蛇を持つ者座(へびつかい座)、蛇を持つ者の蛇座(へび座)、矢座、鷲座、海豚座(いるか座)、馬の首座、馬座(ペガスス座)、アンドロメダ座、三角座の21星座です。
参考)トレミーの48星座とは - わかりやすく解説 Weblio辞…
これらの星座の多くは現代でも同じ名称で使われており、夏の大三角形を構成する琴座のベガや、秋の代表的な星座であるカシオペア座など、季節ごとの星空を彩る重要な星座として親しまれています。北天星座は日本からも一年中観測できるものが多く、星座観察の入門に適した星座群と言えるでしょう。
黄道十二星座は、太陽の通り道である黄道上に位置する12個の星座で、占星術において重要な役割を果たしています。これらの星座は春分点から順に、牡羊座、牡牛座、双子座、蟹座、獅子座、乙女座、天秤座、蠍座、射手座、山羊座、水瓶座、魚座で構成されています。
参考)プトレマイオスの48星座|misuzu(樫村実錫)
プトレマイオスのコメントによれば、各星座には独自の性質が記されています。例えば牡羊座は勇敢さと荒野を開拓していく先駆の気性を表し、牡牛座は大地の星座として穏やかさの中にしっかりとした意思を持つ力を象徴しています。双子座は冬の代表的な明るい星座で、黄色い1等星ポルックスと白い2等星カストルの双子星の並びが有名です。
現在、春分点はうお座の領域に存在しており、星の配置や動きには占星術的な意味も見い出されてきました。魚座は黄道十二星座の中で最も暗い星座として知られ、最も明るい星でも4等星にとどまっています。これらの星座は2世紀から現代まで受け継がれ、天文学と占星術の両面で重要な位置を占め続けています。
参考)おうし座 - Wikipedia
南天星座は南の空に見える15個の星座で構成されており、冬の代表的な星座が多く含まれています。代表的な星座には、冬の星座の王者オリオン座(オーリオーン座)や、明るい1等星シリウスを持つ大犬座(犬座)、全天最大の星座であるうみへび座(ヒュドラー座)などがあります。
参考)プトレマイオスの48星座とアラートスの星座(ギリシャ語とラテ…
南天星座の完全な一覧は以下の通りです。くじら座(ケートス座)、オリオン座、川座(エリダヌス座)、兎座、大犬座、小犬座(前犬座)、アルゴ座、うみへび座、酒器座(コップ座)、からす座、ケンタウロス座、野獣座(おおかみ座)、祭壇座、南のリース座(南のかんむり座)、南の魚座の15星座です。
これらの星座にもそれぞれ特徴的な性質が記されています。例えばコップ座は金星と水星の影響力を持ち優しさや共感の能力を表し、からす座は火星と土星に近い影響力で技巧や巧妙さを示します。南のかんむり座は射手座の南に位置し、土星と木星の影響力により予期せぬ災いと同時に権威も与えるとされています。南天星座の一つであるアルゴ座は現在では「とも座」「ほ座」「りゅうこつ座」の3つに分割されており、実質的には47星座が現存しているとされています。
現代の88星座は、トレミーの48星座を基礎として、近世から近代にかけて新たな星座を追加することで成立しました。16世紀まで約1500年間、プトレマイオスの48星座は変更されることなく使われ続けましたが、その後望遠鏡の発明や天体観測技術の進歩により、新しい星座が次々と考案されていきました。
参考)http://ollcp.net/space/astronomy/constellation/const_history.htm
新しい星座が追加された理由は主に2つあります。一つは暗い星が観測されたり望遠鏡の発明に伴って、空のどの部分にも目が向けられるようになったためです。プトレマイオスの星座には明るい星のない目立たない部分が「空白の部分」として残されており、天体観測には不便だったのです。例えば16~17世紀にはヨハン・バイエルによって12星座が追加され、インディアン座、きょしちょう座、とびうお座、かじき座、くじゃく座、はえ座、カメレオン座、つる座などが加わりました。
参考)川口市立科学館
1928年に国際天文学連合が正式に88星座を制定し、天球全体を88の領域に分割することで、すべての天体が必ずどれか1つの星座に属することになりました。トレミーの48星座のうち、アルゴ座が3つに分割された以外は、すべて現代でも使われ続けています。また、プトレマイオスが認めなかった「かみのけ座」は、後にチコ・ブラーエによって復活させられ、現在の88星座の一つとなっています。このように、古代の知恵と近代の観測技術が融合することで、現代の星座体系が完成したのです。
トレミーの48星座の多くには、古代ギリシャ神話が深く関わっています。紀元前から多くの人々に伝えられてきた星座をヒッパルコスが星表にまとめ、それを基にプトレマイオスが星座を発表したため、トレミーの48星座にはギリシャ神話が絡んでいる星座が多数存在します。例えばペルセウス座、アンドロメダ座、カシオペア座は同じ神話で繋がっており、エチオピアの王妃カシオペアの傲慢さから始まる物語が夜空に描かれています。
参考)プトレマイオス?トレミー48星座ってなんだろう?|sola旅…
星座に込められた意味は、単なる神話だけでなく、占星術的な性質も記録されています。プトレマイオスのコメントによれば、各星座は惑星の影響力と関連づけられており、例えばケンタウロス座は金星と水星、および木星と関連し、気難しさや強い情熱、戦いへの愛を表すとされています。祭壇座は水星と金星に似た影響力を持ち深い献身を表し、おおかみ座は土星と火星の影響力で貪欲さを示すなど、各星座には独自の性質が割り当てられていました。
8~10世紀のイスラム黄金期には、天体観測と数学、占星術が結びつき、星の配置や動きに意味を見い出す思想が発展しました。このような文化的背景の中で、トレミーの48星座は単なる天体観測の道具を超え、人間の性格や運命を読み解く占星術の基礎として、また夜空に描かれた壮大な神話の物語として、現代まで受け継がれてきたのです。星座の線の結び方や領域に学術的意味はないものの、目印となるものが他にないため、2000年近く経った今でも星座が天文学の重要な参照点として利用され続けています。
参考)トレミーの48星座 - アニヲタWiki(仮) - atwi…