アンドロメダ座は古代エチオピアの王女アンドロメダの物語を夜空に描いた星座です。物語の発端は、王妃カシオペアが娘アンドロメダの美しさを「海の神ポセイドンに仕える妖精ネレイド50人の姉妹たちよりずっと美しい」と自慢したことでした。この傲慢な言葉が海の神ポセイドンの怒りを買い、エチオピアの海岸に怪物ケートス(化けクジラ)が送られ、国土は荒らされてしまいます。
参考)https://ryutao.main.jp/mythology_01.html
困り果てたケフェウス王が神託を求めると「娘アンドロメダを海の怪獣の生け贄に捧げれば災いが静まる」とのお告げを受けます。苦渋の決断を下した王と王妃は、アンドロメダ姫を海岸の岩に鎖で縛り付け、怪物の到来を待つことになりました。このシーンこそが星座に描かれている光景であり、鎖に縛られた王女の姿が星々によって表現されています。
参考)ギリシャ神話にみる「アンドロメダ座」の由来
英雄ペルセウスは、怪物メドゥーサを討伐した帰路、岩に縛られたアンドロメダを空から偶然発見しました。怪物ケートスがアンドロメダに襲いかかろうとしたその瞬間、ペルセウスは倒したばかりのメドゥーサの首を使い、怪物を石に変えてアンドロメダを救出します。こうして救われたアンドロメダとペルセウスは結ばれ、この勇気と愛の象徴が夜空に永遠に刻まれることになったのです。
ギリシャ神話に登場するアンドロメダ座の詳細な神話解説(外部サイト)
アンドロメダ座はα星、β星、γ星の3つの2等星で構成される大きな星座です。最も特徴的なのは、これらの星々がほぼ等間隔に並んで王女の身体を表現している点です。
参考)アンドロメダ座 - Wikipedia
主要な星の特徴を以下にまとめます。
| 星の名称 | 等級 | 意味と特徴 |
|---|---|---|
| α星アルフェラッツ | 2等星 | 「馬のへそ」を意味し、ペガスス座の大四辺形を構成する北東の角の星。アンドロメダ姫の頭部を表す |
| β星ミラク | 2.1等星 | アラビア語で「腰」を意味するアル・マラークに由来。アンドロメダ姫の腰の位置で輝く |
| γ星アルマク | 2.1等星 | 「大地の子」という意味のネコ科動物を指す言葉に由来。アンドロメダ姫の左足の位置 |
アルフェラッツは赤道儀の基準星設定にもよく使われる重要な星で、ペルセウス座α星ミルファクからアンドロメダ座のγ星・β星・α星・ペガスス座β星と繋いだ曲線は「秋の大曲線」と呼ばれることもあります。これら2等星以下の暗い星で作られる大きな星座ですが、配置の美しさから秋の夜空を代表する星座として親しまれています。
アンドロメダ座を見つけるには「秋の四辺形」(ペガススの大四辺形)を目印にするのが最も確実な方法です。秋の四辺形は少し歪んだ四角形をしており、4つの星のうち北東にある星がアンドロメダ座α星アルフェラッツです。
参考)http://www.cc9.ne.jp/~lynx/cosmic/151011.html
観察に適した時期と時刻は以下の通りです。
💫 見つけ方の手順。
秋の四辺形は3つの2等星と1つの3等星で構成されており、それほど目立つ星の少ない秋の夜空では最も目につく星の並びです。10月は一晩中観察できるため、じっくり星座を楽しむには最適な時期といえます。
参考)秋の四辺形を眺めよう|三菱電機 DSPACE
秋の星座探しの詳しい方法(アストロアーツ特集ページ)
アンドロメダ座γ星「アルマク」は、数ある二重星の中でも色の対比が特に美しいことで知られ、天文ファンから高い人気を誇る天体です。太陽系から約200光年の距離にあるこの星は、実際に2つの星がお互いに回り合っている連星系です。
参考)天体望遠鏡博物館 公式ホームページ
🔭 アルマクの観察ポイント。
参考)http://www.starclick.ne.jp/backnumber/1999Aut/andromeda/doublestar.html
小望遠鏡でも簡単に観察できるため、天体観測の入門者にも適した対象です。同様の色の組み合わせを持つはくちょう座のアルビレオという二重星も有名ですが、アルマクの方がより接近し合っているため、色が濃く感じられるという特徴があります。アンドロメダ座には他にも多くの二重星が存在しますが、その中でもアルマクは最も見応えのある二重星として位置づけられています。
アンドロメダ座には肉眼でも観察可能な「アンドロメダ大銀河(M31)」が存在し、日本から見える銀河としては最大のものです。M31の広がりは満月を横に5つ並べたほどもあり、約1兆個の星で構成される巨大な渦巻銀河です。これは私たちの天の川銀河の約2000億個の星の5倍に相当し、「大銀河」と呼ばれる資格を十分に持っています。
参考)M31 アンドロメダ大銀河 (銀河:アンドロメダ座)|富山市…
🌌 アンドロメダ銀河の観察情報。
M31は私たちの天の川銀河を含む局部銀河群の中で最大の銀河で、M32やM110といった伴銀河を従えています。最近の研究によると、M31がこれらの伴銀河を吸収しつつあり、さらに数十億年後には天の川銀河と合体すると考えられています。
参考)https://www.astroarts.co.jp/alacarte/messier/html/m31-j.shtml
また、ミラクを挟んでM31の反対側にはM33という銀河があり、これも同じ局部銀河群の仲間です。M33も双眼鏡で観察できる明るさを持ち、アンドロメダ座の観察時には合わせて楽しむことができます。よく晴れて空気の透明度が良ければ、M31は肉眼でもぼんやりと確認できるため、秋の観望会では誰もがまず最初に望遠鏡を向ける対象となっています。
ちなみに、ミラク(β星)のすぐそば(地球から見て7分角の距離)には「ミラクの幽霊」と呼ばれる11等級の楕円銀河が存在します。この銀河は2等星のミラクの圧倒的な明るさによって隠されてしまうため、普通の望遠鏡では見つけにくく「幽霊」という愛称で呼ばれています。
参考)アンドロメダ座β星に隠れている「ミラクの幽霊」 その正体と名…
アンドロメダ大銀河M31の詳細情報(メシエ天体ガイド)
アンドロメダ座の神話は、ペルセウス座、カシオペア座、ケフェウス座、くじら座、ペガスス座といった複数の星座と深く結びついており、秋の夜空で壮大な物語を展開しています。これらの星座は互いに隣接し、神話の登場人物すべてが天に昇って星座になっているという点で、他の季節には見られない特徴的な星座群を形成しています。
参考)秋の星座の神話にまつわる話
🌟 関連星座とその配置。
これらの星座配置により、秋の夜空では神話の場面を追体験することができます。アルフェラッツからペルセウス座α星ミルファクまで星を辿ると、まるで英雄ペルセウスが王女アンドロメダを救いに向かう道筋を夜空で確認しているかのような体験が得られます。
秋の夜長には、これらの星座を順に探しながらギリシャ神話の世界に想いを馳せることができ、月とともに楽しむことで一層ロマンチックな星空観察が可能になります。特にカシオペア座の傲慢な王妃、ケフェウス座の苦悩する王、そして勇敢な英雄ペルセウスといった登場人物が全て天に配置されているため、物語全体を俯瞰できる珍しい星座構成となっています。