ペガススの大四辺形は、ペガスス座のα星マルカブ(馬の鞍)、β星シェアト(足のつけね)、γ星アルゲニブ(わき腹)の3つの2等星と、アンドロメダ座のα星アルフェラッツ(馬の肩)という3つの2等星と1つの3等星が作る大きな四角形です。この四辺形は東西南北に沿った配置になっており、秋の夜空で最も見つけやすい星の並びとして知られています。
参考)ペガススの大四辺形 - Wikipedia
四辺形の内側にはほとんど明るい星がないため、都市部の明るい空でも比較的容易に見つけることができる特徴があります。11月の夜8時頃に頭上を眺めると、明るさの揃った4個の星が四角形の形で輝いているのが目に留まります。
意外なことに、四辺形の北東の星アルフェラッツは、実はペガスス座ではなくアンドロメダ座に所属しています。これは1929年の国際天文連合総会で星座の境界線が決められた際に、アンドロメダ座のα星として正式に決定されました。それ以前は、この星はペガスス座のδ星でもあったという歴史的背景があります。
参考)「ペガスス座」の見つけ方や誰かに教えたくなる星の話 - 星座…
ペガススの大四辺形は秋の夜空を代表する星の並びで、10月下旬の午後8時頃に南中して最も見やすくなります。具体的な観測時期としては、9月下旬は23時ごろ、10月中旬は22時ごろ、11月上旬は20時ごろにほぼ頭の真上に位置します。
参考)https://www.discoverypark.jp/news/20230808/19971/
秋の宵空で南を向いて天頂を見上げると、すぐに明るい星が四角く並んだ「秋の四辺形」が見つかります。9月10日午後8時頃の関東地方では、東の空にすでにペガスス座の秋の四辺形が大きく広がって見えます。
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カシオペヤ座のW型の星の並びから南に視線を移すと、秋の大四辺形が見つけやすくなります。ペガススは頭を下にして、逆さの姿になっているため、南を向いて見上げると首は南西側、空高く上ったときは右下に伸びています。先端には鼻にあたる2等星エニフが輝いているのでわかりやすいでしょう。
参考)星座八十八夜 #27 翼のある天馬「ペガスス座」 - アスト…
秋の大四辺形は、秋の星座を見つけるための優れた目印として機能します。四辺形の西の辺(β星とα星を結ぶ線)を南に伸ばすと、みずがめ座を通ってみなみのうお座の1等星フォーマルハウトが見つかります。フォーマルハウトは秋の南の空で輝くただ1つの1等星なので非常に見つけやすい星です。
参考)秋の星座の見つけ方|やさしい88星座図鑑
東の辺(γ星とアルフェラッツを結ぶ線)を南に伸ばすと、くじら座の2等星デネブカイトスにたどり着きます。さらに、東の辺を北に伸ばせば、カシオペア座、ケフェウス座を経由して北極星に到達することができます。
四辺形の北の辺を成すペガスス座β星とアンドロメダ座α星を結ぶ線から北東方向に伸ばしたカーブは、「秋の大曲線」と呼ばれる場合があります。アルフェラッツから東側に2列に並んだ星が、アンドロメダ王女の体を表わしています。左と下の辺に沿っては、うお座が広がっています。
ペガススは古代ギリシアの伝承に登場する翼の生えた馬ペーガソスをモチーフとしています。ペーガソスという名前はギリシャ語で「泉」または「水」を意味するΠηγαί(pegai)に由来するとされています。
星図に描かれたペガススは翼が生えた白い馬で、その出自は有名な勇者ペルセウスが怪物メドゥーサの首を切った際、そのほとばしる血から生まれた馬という説が有名です。ただし意外なことに、実際のギリシャ神話ではペルセウスはペガススに乗っていないという事実があります。
参考)ペルセウスはペガススに乗ったのか?ペガスス座の翼とモコモコ腹…
ペーガソスは、ムーサたちの住むボイオーティアのヘリコン山に辿り着き、ムーサたちを喜ばせようと岩を蹄で撃って、そこから泉を湧かせたとされています。日本では、この4つの星は「桝形星」や「四つ星」などと呼ばれていました。
星座絵では、ペガススは頭を下にして逆さの姿で描かれており、星の名前の意味からもそれがよくわかります。四辺形の右下の首のつけねの星がマルカブ(馬の鞍)、その上がシェアト(足のつけね)、左上がアルフェラッツ(馬のへそ、または馬の肩)、左下がアルゲニブ(わき腹)という名前が付けられています。
参考)http://www.hal-astro-lab.com/history/episode18.html
ペガスス座には、球状星団M15という見ごたえのある天体が存在します。M15は星座絵ではペガススの鼻先の位置にあり、地球からの距離は約31,100光年から33,600光年とされています。この球状星団は、およそ120億年前に生まれた10万個以上の老齢の星の集まりで、実際の直径は約175光年です。
参考)https://www.shitennojigakuen.ed.jp/sgjh/cosmos/2015/12/%E3%83%9A%E3%82%AC%E3%82%B9%E3%82%B9%E5%BA%A7%E3%80%80%E7%90%83%E7%8A%B6%E6%98%9F%E5%9B%A3/
M15の見かけの大きさは18秒角、明るさは6.2等級と、かなり大きく見ごたえがあります。核の密度は極めて高く、中心部からX線の放射が検出されていることもあり、中心には銀河同様に大質量ブラックホールがあるのではないかとも考えられています。
参考)M15(球状星団、ペガスス座)
さらに興味深いことに、星団内部には「Pease1」と呼ばれる惑星状星雲が存在していることが知られています。球状星団内部に惑星状星雲が見つかっているのは、このM15とM22だけという貴重な天体です。
ペガスス座にはまた、NGC7331という斜め横から見た渦巻き銀河も存在します。この銀河は距離が4200万光年、大きさは10.2×4.2分角、等級は9.5等で、ステファンの五つ子の近くにあり比較的大きく見やすい銀河として知られています。
参考)NGC7331 (銀河:ペガスス座)|富山市科学博物館 To…
ペガススの大四辺形は、固定撮影でも十分に美しい写真が撮れる被写体です。1つの星座を1枚のカットに収めて撮る場合、ペガスス座の大きさには35mmの焦点距離のレンズが適しています。
参考)はじめての天体撮影
撮影の際は、赤道儀をセッティングし、カメラを取り付けてレンズを目当ての星座に向けます。慣れないうちは目当ての星座を画角に収めるのがやや大変なので、少し広角気味(焦点距離が短い)のレンズを使って、撮影した後にトリミングすると良いでしょう。
広範囲を1枚の画像に収められるため、星座の形を全体的に写せたり、木立や建物を一緒に入れたりして個性的な作品を作ることができます。ペガススの大四辺形は内側に明るい星が少ないという特徴があるため、四辺形の形がはっきりと浮かび上がる写真が撮れます。
秋の夜空は明るい星が少ないため、ペガスス座はまさに頭角を現す存在として撮影しやすい対象です。球状星団M15を含めた撮影を行う場合は、露出時間を長めに設定することで、より多くの星団内の星を写し出すことができます。