反射星雲のフィルター
反射星雲を輝かせるフィルターの選び方
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フィルターの種類と効果
反射星雲の撮影にはどんなフィルターが?広帯域から狭帯域まで、それぞれの特徴と得意な天体を解説します。
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光害地での撮影術
都市部の明るい夜空でも諦めない。光害カットフィルターの原理を理解し、最適な一枚を選ぶ方法を紹介します。
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色の再現と画像処理
撮影して終わりじゃない。フィルターによる色被りを補正し、星雲本来の美しい色を引き出すテクニックに迫ります。
反射星雲の撮影に適したフィルターの種類とそれぞれの効果
反射星雲の撮影を成功させる鍵は、その天体の特性を理解し、最適なフィルターを選択することにあります。反射星雲は、近くにある恒星の光を星間ガスや塵が反射して輝いて見える天体です 。恒星の光、つまり連続スペクトルで輝いているため、特定の波長の光だけを出す輝線星雲とは撮影のアプローチが異なります。ここでは、反射星雲撮影で主に使われるフィルターの種類と、その効果について詳しく解説します。
広帯域フィルター(LPRフィルター)
広帯域フィルター、特にLPR(Light Pollution Reduction)フィルターは、反射星雲や銀河、星団といった連続スペクトルの天体撮影において最も一般的に使用されるフィルターです 。
特徴 : このフィルターは、天体の光をできるだけ多く透過させながら、光害 の主な原因となる水銀灯やナトリウムランプが発する特定の波長の光を選択的にカットするように設計されています 。可視光の広い範囲を透過するため、「広帯域」と呼ばれます 。
効果 : 光害による夜空の「カブリ」を軽減し、背景の空を暗くすることで、淡い反射星雲のコントラストを向上させる効果があります 。天体本来の色バランスを大きく崩すことなく撮影できるため、自然な仕上がりを求める場合に最適です。M45プレアデス星団(すばる)を取り巻く青い反射星雲のような、デリケートな色彩を持つ天体の撮影には特に有効です。
意外な情報 : LPRフィルターは、光害を「カット」するだけでなく、特定の波長域の透過率をわずかに下げることで、結果的に赤い星雲(Hα領域)を強調する効果を持つ製品もあります 。また、安価なフィルターの場合、コーティング技術が未熟で、明るい恒星の周りに「ハロー」や「ゴースト」と呼ばれる偽像が現れやすいというデメリットもあります。これは、フィルター内部で光が多重反射することで発生する現象です 。
狭帯域フィルター(ナローバンドフィルター)
狭帯域フィルターは、Hα(水素アルファ)、OIII(酸素スリー)、SII(硫黄ツー)など、星雲が自ら発する非常に狭い波長域の光(輝線)のみを透過させる特殊なフィルターです 。
特徴 : 光害の光をほぼ完全にシャットアウトできるため、都市部などの極端な光害地でも星雲の撮影を可能にします 。モノクロカメラと組み合わせて各輝線を個別に撮影し、後からカラー合成(ハッブル宇宙望遠鏡 のような画像を作成する「SHO合成」など)を行うのが一般的な使い方です 。
反射星雲への効果 : 結論から言うと、反射星雲の撮影には基本的に不向き です 。なぜなら、反射星雲は連続光で輝いているため、ナローバンドフィルターを通すとその光のほとんどがカットされてしまい、非常に暗く写るか、あるいは全く写らなくなってしまうからです。
意外な情報 : しかし、全く使い道がないわけではありません 。例えば、有名なM20三裂星雲のように、赤い輝線星雲と青い反射星雲が混在している天体の場合、Hαフィルターで輝線星雲を強調した画像と、フィルター無し(あるいはLPRフィルター使用)で撮影した反射星雲の画像を別々に取得し、後から合成することで、両方の構造を鮮明に描き出すという高度なテクニックがあります。ただし、デュアルバンドフィルターなどを使用すると、反射星雲部分の光が失われることがあるため注意が必要です 。
デュアルバンド・クアッドバンドフィルター
近年、ワンショットカラーカメラ(デジタル一眼レフや冷却CMOSカメラなど)の普及とともに人気が高まっているのが、複数の輝線を同時に透過させるタイプのフィルターです。
特徴 : HαとOIIIの2つの輝線を透過する「デュアルバンドフィルター」や、さらにHβ、SIIなどを加えた輝線を透過する「クアッドバンドフィルター」などがあります 。これにより、カラーカメラ1台で、あたかもナローバンド撮影のようなコントラストの高い星雲写真を手軽に得ることができます 。
反射星雲への効果 : これらも基本的には輝線星雲をターゲットとしたフィルターであり、反射星雲の撮影には適していません 。しかし、製品によっては輝線以外の波長域も比較的広く透過させる特性を持つものもあり、「セミ・ナローバンド」として、ある程度の光害カット効果と、反射星雲への対応を両立させようとした製品も存在します。
意外な情報 : これらのフィルターは、メーカーや製品によって透過させる輝線の組み合わせや透過率、カットする波長域が微妙に異なります。そのため、同じ天体を撮影しても、フィルターによって星雲の色合いや写り方が大きく変わることがあります 。例えば、あるフィルターでは赤が強く出るが、別のフィルターでは青緑色が強調される、といった具合です。自分の表現したい作風に合わせてフィルターを選ぶという、新たな楽しみ方(あるいは悩み)が生まれています。
以下の表は、各フィルターの特性をまとめたものです。
フィルターの種類
主な撮影対象
光害カット効果
色再現性
反射星雲への適性
広帯域フィルター (LPR)
反射星雲、銀河、星団
中~高
比較的自然
◎(最適)
狭帯域フィルター (ナローバンド)
輝線星雲
非常に高い
疑似カラー合成が必要
×(不向き)
デュアル/クアッドバンド
輝線星雲(カラーカメラ用)
高い
製品により大きく異なる
△(基本は不向き)
このように、フィルターごとに得意な天体や特性が大きく異なります。反射星雲の淡く美しい姿を捉えるためには、まず光害を軽減しつつ、星雲からの光を最大限に活かせるLPRフィルターのような広帯域フィルターを選択するのが基本戦略と言えるでしょう。
反射星雲の撮影でLPRフィルターとナローバンドフィルターはどう違う?
天体写真、特に星雲の撮影においてフィルターは不可欠なアイテムですが、「LPRフィルター」と「ナローバンドフィルター」は、その目的と仕組みが根本的に異なります。特に、恒星の光を反射して輝く「反射星雲」を撮影する際には、この違いを理解しておくことが極めて重要です。誤ったフィルターを選ぶと、せっかくのシャッターチャンスを無駄にしてしまうことにもなりかねません。
目的と対象天体の違い
まず、それぞれのフィルターが何のために作られたのかを見ていきましょう。