こぐま座は北極星として有名なポラリス(α星)を筆頭に、7つの主要な恒星で構成されています。この7つの星は小さなひしゃくの形を作り、日本では「小北斗七星」や「小びしゃく」とも呼ばれてきました。
参考)https://seiza.imagestyle.biz/haru/kogumamain.shtml
ポラリスは2等星で、こぐま座のα星として尻尾の先端に位置しています。実はこの星は三重連星ですが、光度差が大きいため望遠鏡でも見分けにくいという特徴があります。正式にはラテン名で「ステラ・ポラリス(極の星)」と呼ばれ、航海の目印として「ステラ・マリス(海の星)」という別名も持っています。地球の自転軸とほぼ一致する位置にあるため、夜空でほとんど動かず、一晩中同じ場所で輝き続けます。
参考)こぐま座とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書
こぐま座のβ星はコカブと呼ばれる2.07等星で、「北の星」を意味するアラビア語が語源です。興味深いことに、紀元前1500年から紀元前500年頃にかけては、このコカブが天の北極に位置していたため、当時の北極星として使われていました。γ星のフェルカドは3等星で、「子牛」を意味する名前を持っています。
参考)http://yumis.net/space/star/greece/umi-g2.htm
Wikipedia - こぐま座
こぐま座の詳細な天体データと構成する星々の情報が掲載されています。
こぐま座の神話は、おおぐま座と深く結びついた親子の物語として語られています。こぐま座のモデルとなったのは、ギリシャ神話に登場する狩人アルカスです。アルカスは大神ゼウスと森のニンフ(妖精)カリストとの間に生まれた息子でした。
参考)https://seiza.imagestyle.biz/sinwa/koguma.shtml
カリストは月と狩りの女神アルテミスに仕える美しいニンフでしたが、ゼウスに見初められて愛を受け、やがて男児アルカスを産みます。しかし、このことがゼウスの妻ヘラの激しい怒りをかってしまいます。嫉妬に狂ったヘラはカリストを大きな熊の姿に変えてしまい、カリストは恥じて森の中に身を隠しました。
参考)星座八十八夜 #76 北極星はこぐまのシッポ「こぐま座」 …
残されたアルカスは親切な人の元で育てられ、立派な狩人に成長します。ある日、森で狩りをしていたアルカスは一頭の大きな熊に遭遇しました。実はこの熊こそ、姿を変えられた母親カリストだったのです。カリストは我が子との再会に喜びの声をあげ、アルカスを抱きしめようと近づきますが、アルカスには一頭の熊が襲ってくるようにしか見えません。
参考)カリスト、アルカス。おおくま座・こぐま座になった悲しい経緯 …
まさにアルカスが槍を投げようとしたその瞬間、天上からこの光景を見ていたゼウスが大きな竜巻を起こし、二人を天空へと舞い上げました。この時アルカスも熊の姿となり、カリストはおおぐま座に、アルカスはこぐま座になったと伝えられています。二つの星座の熊の尻尾が長いのは、「ゼウスがあわてて尻尾をつかんで天に投げたため伸びてしまった」という興味深い説明がされています。
星座図鑑 - こぐま座の神話・伝説
アルカスとカリストの神話についての詳しい物語と背景解説が読めます。
こぐま座を夜空で見つけるには、まず北斗七星から北極星を探すのが最も簡単な方法です。北斗七星のひしゃくになっている部分の先端にある二つの星を結び、その長さを先に向かって約5倍伸ばした位置に見える星が北極星(ポラリス)です。この北極星がこぐま座の尻尾の先端にあたります。
参考)おおぐま座・こぐま座
北極星を見つけたら、そこからおおぐま座の北斗七星に向かい合うような形で星をたどっていきます。こぐま座全体は小さな北斗七星のようなひしゃくの形をしているため、その姿を描き出すことは難しくありません。北極星がひしゃくの柄の先端にあたり、おおぐま座と向かい合うように配置されています。
カシオペア座からも北極星を探すことができます。カシオペア座の「W」字の両端の辺をそれぞれ延長して二つの線が交わった点と、「W」字の山になっている星(γ星)を結び、交わった点から山の星との距離を約5倍した方向に北極星が見えます。
こぐま座は一年を通して北の夜空に見える星座で、季節を問わず観察できますが、特に春頃には高度が高くなり、その姿をよく眺めることができます。北極星は一年中ほぼ同じ位置にあるため、古くから天体観測や航海術に利用されてきました。
現在の北極星はこぐま座のα星ポラリスですが、実は北極星は永遠に同じ星ではありません。地球は約26,000年の周期で「歳差」と呼ばれるコマのような首振り運動をしており、地軸自体が時計と反対方向にゆっくりと回っています。このため、天の北極に位置する星も時代とともに変化していきます。
こぐま座のβ星コカブは、紀元前1500年頃から紀元前500年頃にかけて天の北極の近くにあり、当時の北極星として使われていました。つまり、古代の人々が見上げていた北極星は現在のポラリスではなく、コカブだったのです。
参考)古代の北極星はどれ? - なぶんけんブログ
現在のポラリスから、さらに未来へと時代が進むと、約13,000年後には琴座のベガが北極星になるとされています。その後も地軸の歳差運動により、西暦20,500年頃にはりゅう座のエダシク、西暦23,800年頃には再びこぐま座のコカブが北極星に戻ってくると予測されています。このように、北極星は数千年単位で入れ替わっていく壮大な天体の営みを示しています。
参考)https://starwalk.space/ja/news/polaris-north-star
β星コカブとγ星フェルカドは「矢来星」とも呼ばれました。これは北斗七星を矢に見立て、それらの星が北極星や周囲の星々を守る柵のような役割を果たしているという日本独自の解釈から生まれた名称です。
こぐま座は北天にあり、日本からは一年中いつでも観察できる周極星座です。20時頃の南中時刻は7月中旬で、正中高度は約北48度と高い位置に見えます。春の季節には特に観察しやすく、北の空高くにその姿を確認できます。
参考)こぐま座|やさしい88星座図鑑
こぐま座を構成する星々のうち、α星ポラリスとβ星コカブの二つの2等星以外は比較的暗い星ばかりです。そのため、都会の明るい空では全体の形を捉えるのが難しい場合があります。郊外の暗い場所や空気の澄んだ日を選んで観察すると、7つの星で構成された小さなひしゃくの形をはっきりと確認できます。
参考)https://ryutao.main.jp/mythology_37.html
毎年12月下旬頃には、こぐま座を中心として四方へ飛び散る流星群を観察することができます。この流星群はこぐま座流星群と呼ばれ、放射点(流星が飛び出してくるように見える中心点)がこぐま座付近にあります。ただし、ポラリスは望遠鏡で見ると三重連星であることが分かりますが、光度差が大きく見分けにくいため、大気の状態が良ければ二つ程度なら分かれているのを確認できます。
こぐま座は紀元前1200年頃にはすでに知られており、プトレマイオスの48星座の一つにも数えられています。北極星を含むことから、北半球を航海・旅行する人々にとって古くから重要な星座として役立ってきました。
こぐま座とおおぐま座は、神話においても天文学的にも深い関係を持つ星座です。どちらもクマをモチーフとした星座で、親子の物語として語られてきました。おおぐま座が母カリスト、こぐま座が息子アルカスという関係性は、夜空での配置にも反映されています。
両星座ともひしゃくの形をしており、大小二つの北斗七星のように見えます。おおぐま座の北斗七星は「大びしゃく」、こぐま座は「小びしゃく」として対比されてきました。二つの星座は互いに向かい合うような配置で、まるで親子が見つめ合っているかのようです。
参考)https://stellarscenes.net/seiza/umi.html
興味深いことに、アルカスはうしかい座のモデルにもなっていると言われています。かつての星座絵では、うしかい座はおおぐま座の方を向いて描かれており、これが狩人アルカスが熊の姿になった母カリストを追いかけている姿だとも解釈されています。実際、うしかい座はおおぐま座を追いかけるように夜空を巡っており、アルカスが母を慕っているように見えます。
両星座とも熊としては不自然に長い尻尾を持っていますが、これは神話の中で「ゼウスがあわてて尻尾をつかんで天に投げ上げたため伸びてしまった」という愛らしい説明がされています。この特徴的な長い尻尾は、星座絵の中でも印象的な要素となっており、二つの星座を見分ける際の目印にもなっています。