天の北極と北極星の違いを解説|自転軸と位置の基本

天の北極と北極星は同じものだと思っていませんか?実はこの2つには明確な違いがあります。天の北極は地球の自転軸が天球と交わる点で、北極星はその近くにある実際の星です。この違いを正しく理解できていますか?

天の北極と北極星の違い

天の北極と北極星の基本的な違い
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天の北極は概念上の点

地球の自転軸を北極側に延長して天球と交わる仮想の点。実在する星ではなく、座標系の基準となる概念的な位置です。

北極星は実在する恒星

天の北極に最も近い明るい星を指し、現在はこぐま座α星(ポラリス)がその役割を担っています。視等級は2等星です。

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両者の位置関係

現在の北極星ポラリスは天の北極から約0.75度(約44分角)離れた位置にあり、完全には一致していません。

天の北極の定義と自転軸の関係

 

天の北極とは、地球の自転軸を北極側に延長した線が天球と交わる点のことです。これは実在する星ではなく、あくまで天文学における座標系を定義するための基準点となる概念です。天球は星座の位置や星の位置を分かりやすく示すために使われる仮想の空間であり、天の北極もこの天球上における仮想の点として存在しています。

 

参考)北極星と天の北極って同じですか? - Clearnote

赤道座標系において、天の北極は赤緯+90度の位置に相当します。地球の赤道面を基準とした天の赤道が赤緯0度、天の南極が赤緯-90度となり、天の北極はその最北端に位置する基準点です。この座標系は天体観測や航海における位置決定の基礎となっており、天文学において極めて重要な役割を果たしています。

天の北極は地球の自転軸の延長線上にあるため、地球が自転しても天球上での位置は変わりません。そのため、天の北極付近にある星々は地平線の下に沈むことなく、天の北極を中心に円を描くように回転して見えます。

 

参考)中学理科北極星と天の北極の違いってなんですか? - 地球の自…

北極星の正体と天の北極との位置関係

北極星とは、天の北極に最も近い明るい恒星のことを指します。現在の北極星は、こぐま座α星であるポラリス(Polaris)で、視等級は2等星です。ポラリスは天の北極から約0.75度(約44分角)離れた位置にあり、完全に天の北極と一致しているわけではありません

北極星が「動かない星」と呼ばれる理由は、地球の自転軸の延長線上近くに位置しているためです。地球が自転しても、北極星は天の北極の周りに半径約0.75度の小さな円を描いて動くだけなので、肉眼ではほとんど動かないように見えます。そのため、北極星は方位を知るための目印として、古来より航海や測量で重要な役割を果たしてきました。

 

参考)https://starwalk.space/ja/news/polaris-north-star

北極星は天測航行における固定点となり得るため、正確な測定が可能です。特に大航海時代には、北極星の高度から緯度を求める「緯度航法」が広く使われました。北極星の高度は観測地点の緯度とほぼ一致するため、航海者は北極星を観測することで自分の位置を知ることができたのです。

天の北極と歳差運動による変化

地球の自転軸は約25,700~25,800年の周期でゆっくりと円を描くように動いており、この現象を歳差運動(さいさうんどう)と呼びます。歳差運動により、地球の自転軸の延長線が天球上で円を描くように移動するため、天の北極の位置も時間とともに変化していきます。

 

参考)https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/BAD0BAB9.html

この歳差運動の影響により、天の北極に最も近い明るい星、つまり北極星も数千年ごとに交代します。現在はこぐま座α星のポラリスが北極星ですが、約4,000年前の古代エジプト時代には北極星は天の北極付近に存在せず、北の空には周極星だけが輝いていました。紀元前2,800年頃には、りゅう座α星のツバン(視等級3等星)が北極星として機能していました。

 

参考)未来の北極星はどの星? 歳差運動が描く星空のサイクル

未来の北極星も既に予測されています。西暦4,000年頃にはケフェウス座γ星(エライ、視等級3.2等)が、西暦6,000年頃にはケフェウス座β星(アルフィルク、視等級3.2等)が北極星となります。そして約12,000年後には、こと座の1等星ベガ(おりひめ星)が北極星として輝くことになります。このように、天の北極の位置が変化することで、北極星の役割を担う星も時代とともに変遷していくのです。

 

参考)北の空の星の動き(2)北極星のリレー

天の北極と周極星の観測

天の北極付近にある星々は、観測地点の緯度によって特殊な動きを見せます。これらの星は地平線の下に沈むことなく、一晩中天の北極の周りを反時計回りに円を描いて回転し、このような星を周極星(しゅうきょくせい)と呼びます。

 

参考)https://contest.japias.jp/tqj2005/80520/starguide/study/study6.htm

観測地点の緯度によって、周極星となる範囲は変化します。例えば、北緯35度の日本では、赤緯+55度以北の星が周極星となり、一年中沈むことなく観測できます。東京(北緯36度)の場合、赤緯+54度以北の天体が周極星となります。一方、北極点(北緯90度)では天の北極が天頂(真上、高度90度)に位置し、天の赤道以北のすべての星が周極星となります。逆に、赤道直下(北緯0度)では天の北極が地平線上(高度0度)に位置するため、周極星は存在しません。

周極星の観測は、天の北極の位置を理解する上で重要な手がかりとなります。北の空の星々は北極星を中心に円を描き、この円の中心が天の北極です。日周運動により、すべての星は天の北極を中心に回転しているように見えますが、実際には地球が自転しているために星が動いて見えるのです。

 

参考)【中3理科】「北の空の星」

天の北極を活用した航海術の歴史

天の北極と北極星は、航海術の発展において極めて重要な役割を果たしてきました。大航海時代以前から、航海者たちは夜間に北極星を観測することで方角を知り、航路を維持していました。特に15世紀から17世紀の大航海時代には、北極星の高度測定が緯度を求める主要な方法となりました。
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参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/pesj/45/1/45_KJ00005896744/_pdf

コロンブスの航海では、北極星の高度を一定に保つ「緯度航法」が用いられました。例えば、日本が北緯30度付近にあると考えられていたため、コロンブスは北極星の高度を28度に保ちながらひたすら西進したと記録されています。このように、北極星は単なる方位の目印ではなく、精密な位置決定のための基準点として活用されていたのです。

北極星が航海に適している理由は、磁気コンパスよりも優れた点にあります。磁気コンパスは磁北を指すため、地球上の場所によって真北とのずれ(磁偏角)を計算する必要があり、局地的な磁気の影響で誤差が生じることもあります。一方、北極星は常に真北を指し、天の北極からわずか0.65度しか離れていないため、より正確な方向指示が可能です。また、北極星の空での高さ(高度)は観測地点の緯度に対応しており、北極星が天頂に見えれば北極点(北緯90度)、赤道に近づくほど北極星は地平線近くに見えます。このような特性により、天の北極と北極星は航海術において不可欠な存在となってきたのです。

北極星の歴史的変遷と未来の北極星について - Wikipedia
天の北極と北極星の定義 - 天文学辞典
北極星の観測方法と天の北極からの距離 - Star Walkr Walk

 

 


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