くじら座神話と構成する星、見つけ方と変光星ミラ

秋の夜空で最も有名な変光星ミラが輝くくじら座は、ギリシア神話の海の怪物ケートスが星座になったもので、全天で4番目に大きな広がりを持ちます。デネブカイトスやメンカルといった主要な恒星と、アンドロメダ姫を襲った神話のドラマが織り成す星座の魅力とは?

くじら座の神話と構成する星

この記事で分かること
📖
ギリシア神話の怪物

海神ポセイドンが送り込んだケートスの物語と、ペルセウスによる救出劇

構成する主要な星

デネブカイトス、メンカル、変光星ミラなど特徴的な恒星の魅力

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観測のポイント

秋の四辺形を目印にした見つけ方と、観察に適した時期

くじら座の神話とアンドロメダ救出物語

 

くじら座は古代エチオピア王国を舞台にした、壮大なギリシア神話に登場します。物語の始まりは、エチオピアの王妃カシオペアが娘アンドロメダ姫の美しさを自慢し、「海の神の娘より美しい」と言い放ったことでした。この傲慢な発言が海神ポセイドンの怒りを買い、エチオピアの国は洪水と海の怪物ケートスによる襲撃に見舞われることになります。

 

参考)https://ryutao.main.jp/mythology_30.html

くじら座のギリシア神話における詳細な伝承について(Wikipedia)
国を救うため、王ケーペウスはアンドロメダ姫を生け贄として海辺の岩に縛りつけることを決断しました。そこへ怪物ケートスが姫を襲おうと近づいてきたまさにその時、英雄ペルセウスが偶然通りかかります。ペルセウスはメデューサの首を掲げてケートスを石に変え、アンドロメダ姫を救出しました。この巨大な海の怪物は、その大きさとペルセウスの勇気を称えるために星座となったと伝えられています。

 

参考)「鯨座」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書

興味深いことに、くじら座のモチーフとなったケートスは神話上の海の怪物であり、海棲哺乳類のクジラとは全く関係がありません。古い星図では、前脚ととぐろを巻く尾を持つ半獣半魚の姿で描かれています。

 

参考)くじら座 - Wikipedia

くじら座を構成する主要な恒星デネブカイトスとメンカル

くじら座は全天で4番目に大きな領域を持つ星座ですが、明るい星は少なく、主要な恒星はデネブカイトスとメンカルの2つです。

 

参考)秋の星座の見つけ方|やさしい88星座図鑑

β星デネブカイトスはくじら座で最も明るい恒星で、唯一の2等星(2.01等)です。アラビア語で「くじらの尾」を意味するこの名前の通り、くじらの尾の部分に位置しています。太陽系から約96.3光年の距離にあり、スペクトル型G9.5IIICHの黄色巨星です。別名「ディフダ」とも呼ばれ、この名は「2匹目のカエル」を意味します。
参考)2025年11月の星空情報:秋の四辺形から読み取る、救出の星…

α星メンカルは3等星(2.53等)の赤色巨星で、くじらの鼻先に位置します。太陽系から約249光年の距離にあり、スペクトル型M1.5IIIaの恒星です。アラビア語で「鼻の穴」を意味する固有名を持ち、2.45等から2.54等の範囲で変光する長周期変光星の候補とされています。興味深いことに、β星の方が明るいにもかかわらず、メンカルがα星に指定されています。
参考)http://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili/keitou/qa/cetus.html

その他の注目すべき星として、γ星カファルジドマは太陽系から約74.8光年の距離にある三重連星系で、見かけの明るさは3.54等です。ζ星バテン・カイトスは約253光年の距離にある4等星の橙色巨星で、主星自体が分光連星であることが知られています。

くじら座の変光星ミラとその特徴

くじら座で最も有名な天体は、歴史上初めて発見された変光星ミラ(ο星)です。ミラはラテン語で「不思議なもの」を意味し、その名の通り驚くべき光度変化を見せます。

 

参考)ミラ (恒星) - Wikipedia

ミラは約332日の周期で2.0等から10.1等の間を変光する脈動変光星で、ミラ型変光星の代表とされています。ただし、この周期は必ずしも一定ではなく、短い時は304日、長い時は355日になることもあります。極大光度も変動し、通常は3等から9等台半ばまでですが、1779年にはおうし座の1等星アルデバランに匹敵する明るさ(0.9等)になったという記録も残っています。

国立天文台によるミラの観測情報と最新の極大予報
この星は1596年にドイツの牧師デビッド・ファブリキウスによって発見され、天文学史上重要な天体となりました。ミラは一生の終わりに近い段階にある赤色巨星で、非常に赤く、その脈動周期は100日より長く、変光範囲が可視光で2.5等級より大きいという特徴を持ちます。

 

参考)ミラ型変光星 - Wikipedia

2025年2月には急速に明るさを増し、2月2日に4.8等だったのが2月9日には3.9等と、わずか1週間で0.9等も明るくなる現象が観測されました。このような変光の様子を追うことは、アマチュア天文家にとっても魅力的な観測対象となっています。

 

参考)宵空で急増光中、くじら座の変光星ミラ - アストロアーツ

くじら座の見つけ方と秋の星空での位置

くじら座は秋の星座として知られ、12月中旬の午後8時頃に南中します。全天で4番目に大きな星座ですが、明るい星が少ないため見つけるには工夫が必要です。

 

参考)くじら座

最も確実な見つけ方は、**秋の四辺形ペガススの大四辺形)**を目印にする方法です。秋の四辺形の東側の辺を南に延ばしていくと、やや明るい2等星デネブカイトスに到達します。これがくじらの尾の部分です。そこから東へ星をつなぐと、くじら座の星の並びが見えてきます。

 

参考)https://www.hirahaku.jp/hakubutsukan_archive/tenmon/00000022/35.html

くじら座の詳しい見つけ方と星図(Zero-co星座ガイド)
もう一つの方法は、秋の唯一の1等星であるみなみのうお座のフォーマルハウトから探す方法です。南の空の低い位置に輝くフォーマルハウトから少し東へ目を向けると、2等星デネブカイトスが見つかります。

 

参考)秋の星座「くじら座」の見つけ方

くじらの頭部はおうし座のアルデバランの近くに位置しています。アルデバランから南へ目を向けると、いびつな5角形に並んだ4等星が見えます。これがくじらの頭部です。頭部が見つかったら、そのすぐ下に3等星の変光星ミラを探しましょう。

くじら座は天の赤道を跨ぐように位置しているため、人類が居住するほぼ全ての地域から観測が可能です。観望に適した時期は初夏から晩冬にかけてで、特に秋から初冬が見ごろです。

 

参考)くじら座とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書

くじら座M77銀河と深宇宙観測の舞台

くじら座には、メシエ天体として唯一登録されているM77(NGC 1068)という渦巻銀河があります。この銀河は地球から約6000万光年離れていますが、実際の広がりが17万光年と非常に大きく、メシエ天体の中でも最大級の直径を持つ巨大な銀河です。

 

参考)M77 (天体) - Wikipedia

M77の最大の特徴は、中心部が明るく輝くセイファート銀河であることです。中心部には1500万太陽質量のブラックホールが存在し、そこへ落ち込む物質が加熱されて強い光を放ちます。さらに、銀河の中心核から宇宙ジェットを噴出するなど活動性が高く、強い赤外線を放射しています。

 

参考)https://www.astroarts.co.jp/alacarte/messier/html/m77-j.shtml

M77銀河の観測ガイドと写真(アストロアーツ)
M77は銀河系に最も近いセイファート銀河として活発な研究の対象となっており、この銀河を対象とした研究論文の数は他の銀河を対象とした論文の総数より多いほどです。アマチュア天文家にとっても興味深い対象で、口径5cmの望遠鏡で小さな光芒として観測でき、口径が大きくなるにつれて腕の構造や暗黒帯が見えてくるようになります。

また、くじら座は天の川銀河の銀河面から遠く、星間減光が少ないという特徴があります。このため、2002年8月から2004年1月にかけて行われた「すばる/XMM-ニュートン・ディープサーベイ」では、くじら座の赤経2時18分・赤緯-5度00分を中心とする領域が観測対象として選定されました。北半球と南半球のどちらでも観測が可能であることも、この領域が選ばれた理由の一つです。

くじら座は黄道に近い位置にあるため、月や惑星、小惑星などの太陽系内の天体が領域を通過することがあります。小惑星番号3のジュノーは、1804年9月1日にカール・ハーディングによって発見された当時、くじら座の領域に位置していました。

 

 


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