太陽が赤色巨星へと変化するのは、現在から約50億年後と予測されています。太陽の寿命は約100億年とされており、すでに誕生から46億年が経過しているため、主系列星としての寿命の半分をすでに過ぎたことになります。主系列星とは、中心部で水素をヘリウムに変換する核融合反応を行っている段階の恒星を指します。
この核融合反応は太陽の中心部の約1割の水素を消費すると終わりを迎え、中心部にヘリウムが蓄積していきます。水素が枯渇すると、核融合反応の場所は中心核の周囲の殻状の領域へと移動し、星全体のエネルギーバランスが崩れ始めます。
参考)https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v8/n6/%E8%B5%A4%E8%89%B2%E5%B7%A8%E6%98%9F%E3%81%AE%E5%86%85%E3%81%AA%E3%82%8B%E9%BC%93%E5%8B%95/36534
恒星の寿命は質量によって大きく異なり、重い星ほど核融合反応が活発で寿命が短くなります。太陽の8倍の質量を持つ恒星の寿命は約1000万年程度ですが、太陽の2割程度の質量しか持たない恒星は何兆年もの寿命を持つとされています。
参考)太陽の寿命はあと50億年。軽い星ほど「長生き」する/身近な科…
赤色巨星への変化は、恒星の中心部での核融合反応のメカニズムが変わることで引き起こされます。主系列星の段階では中心部で水素がヘリウムに変換される核融合反応が行われていますが、水素が枯渇するとこの反応は止まります。
参考)赤色巨星 - Wikipedia
中心部に蓄積されたヘリウムは重力によってさらに圧縮され、周囲の水素殻で核融合反応が続きます。この殻状の水素燃焼によって生じる熱量は主系列星時代よりも大きくなり、その結果として星の外層が大きく膨張します。膨張によって表面積が増大するため、表面温度は相対的に低下し、恒星は赤く見えるようになります。
参考)https://thewonder.it/article/762/description/
赤色巨星の段階では、中心核のヘリウムの温度がさらに上昇し、最終的にはヘリウム同士の核融合反応(ヘリウム燃焼)が始まります。このヘリウム燃焼によって炭素や酸素などのより重い元素が生成されます。
太陽が赤色巨星になると、その大きさは現在の約200倍にまで膨張すると予測されています。直径は現在の100倍、光度は500倍にも達し、表面温度は約4000度にまで低下します。この膨張により、太陽は地球の公転軌道、さらには火星の軌道付近にまで達する可能性があります。
参考)https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/7837
地球が太陽に飲み込まれるかどうかは、太陽の質量放出と地球の軌道拡大のバランスによって決まります。赤色巨星の段階では、太陽は質量の約3分の1(0.332太陽質量)を失うとされており、これにより地球の軌道は外側へ拡大する可能性があります。
参考)http://arxiv.org/pdf/0801.4031.pdf
しかし、仮に地球が太陽に飲み込まれなかったとしても、それ以前に生命が存続できる環境は失われます。赤色巨星化の数十億年前から太陽の光度は徐々に増大し、約15億年後には現在より光度が15%増加して極域の氷が溶け始めると予測されています。
参考)地球の未来 - Wikipedia
山口大学天文学研究室 - 50億年後の地球の詳細な理論計算
夜空には実際に赤色巨星の段階にある恒星を観測することができます。代表的な例として、おうし座のアルデバランがあります。アルデバランは太陽質量の約1.16倍、半径は太陽の44倍にまで膨張しており、表面温度は約3900Kでオレンジがかった赤色に見えます。
参考)https://starwalk.space/ja/news/aldebaran-star
その他の赤色巨星としては、くじら座のミラ、はくちょう座W星、うしかい座のアークトゥルスなどが知られています。これらの恒星は肉眼でも観測可能で、その赤い色が特徴的です。
参考)https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/stars/stars05.html
さらに大きな赤色超巨星の例としては、オリオン座のベテルギウスやさそり座のアンタレスがあります。赤色超巨星は太陽の10倍以上の質量を持ち、普通の赤色巨星よりもはるかに巨大で明るい恒星です。ベテルギウスは太陽系から約640光年の距離にあり、近い将来超新星爆発を起こす可能性が指摘されています。
参考)ベテルギウスとは何? わかりやすく解説 Weblio辞書
Star Walk - アルデバランの観測情報と特徴
赤色巨星の段階を経た太陽は、最終的に白色矮星へと変化します。質量が太陽の約8倍以下の恒星は、赤色巨星の膨張した外層を宇宙空間に放出し、惑星状星雲を形成します。この過程で恒星は質量の大部分を失い、中心部の炭素と酸素で構成された高密度の核だけが残ります。
参考)https://dic.pixiv.net/a/%E8%B5%A4%E8%89%B2%E5%B7%A8%E6%98%9F
この核が白色矮星と呼ばれる天体で、大きさは地球ほどしかありませんが、質量は太陽の半分程度もあります。白色矮星は核融合反応を行っておらず、蓄積された熱をゆっくりと放出しながら冷却していきます。
参考)白色矮星 - Wikipedia
一方、太陽よりも質量が大きい恒星(太陽の8倍以上)の場合、赤色巨星よりもさらに大きな赤色超巨星となり、最終的に超新星爆発を起こします。超新星爆発によって恒星の外層は吹き飛ばされ、中心部は中性子星やブラックホールになります。
赤色巨星の研究は、星座を構成する恒星の理解を深める上で重要な役割を果たしています。多くの明るい恒星が赤色巨星または赤色超巨星の段階にあり、その色や明るさの変化を観測することで恒星進化の理論を検証できます。
参考)オリオン座の赤色超巨星ベテルギウスに伴星、NASA観測で確認…
例えば、ベテルギウスは2019年から2020年にかけて急激に暗くなる現象が観測され、超新星爆発の前兆ではないかと話題になりました。最新の研究では、ベテルギウスには非常に接近した伴星があることが判明し、この伴星が明るさの変化に影響を与えている可能性が示されています。
赤色巨星の観測は、恒星の質量放出や表面活動、内部構造の研究にも貢献しています。赤色超巨星として過ごす期間は恒星の質量によって異なり、太陽の15倍の質量を持つ恒星では約30万年、20倍の質量では約55万年と推定されています。
これらの知識は、夜空を見上げたときに星座の恒星がどのような進化段階にあるのかを理解する助けとなり、星座観察をより深く楽しむことができます。また、太陽系の遠い未来を想像する上でも、他の恒星の赤色巨星段階の観測は貴重な情報を提供してくれます。
参考)https://shiminkagaku-pj.org/wp-content/uploads/2023/02/221118_0403_Sakurai.pdf
国立科学博物館 -html">国立科学博物館 - 恒星の進化についての解説