優里の「ベテルギウス」の歌詞における「星」は、単なる天体ではなく「過去」や「思い出」を象徴しています。冒頭の歌詞「空にある何かを見つめてたら それは星だって君が教えてくれた」という表現は、二人が今までの思い出を振り返っている情景を描いています。星の光は地球に届くまで長い時間がかかるという特性を利用し、「何十年 何百年 昔の光が 僕らを照らしてる」という歌詞で、想いは時間を越えて届くというメッセージを込めているのです。
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楽曲では「星自身も忘れたころに僕らに届いてる」と歌われており、これは過去に想像していた未来に忘れた頃に辿り着いていることを表現しています。泣いた出来事も笑った出来事も繋ぎ合わせれば、それは「人生」という一つの星座になるという解釈ができます。実際の星の光も、ベガで生まれた光は25年かけて地球にやってくるように、現在見ている星の光は過去のものなのです。
ベテルギウスはオリオン座のα星で、オリオン座の巨人が振り上げる右腕の脇の下にあたる位置に輝く赤い1等星です。この星は地球から見える恒星の中で9番目に明るく、0.42等級という明るさで赤く輝いて見えます。ベテルギウスは太陽の約750倍の半径を持つ赤色超巨星で、その直径はあまりにも巨大なため、もし太陽系の中心に置いたら火星の公転軌道も飲み込まれてしまうほどの大きさです。
参考)ベテルギウス(オリオン座α星)|やさしい88星座図鑑
オリオン座には白いリゲルも1等星として輝いており、赤いベテルギウスと白いリゲルで対称的な美しさを見せています。さらにベテルギウスは、おおいぬ座の1等星シリウス、こいぬ座の1等星プロキオンと合わせて「冬の大三角」を形成していることでも知られています。冬の夜空を見上げれば、オリオン座の四角形の左上で赤く輝くベテルギウスを頂点の一つとして、美しい三角形が描かれているのです。
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歌詞に登場する「見えない線」は、星座を形作る星と星の結びつきを人間関係に喩えた表現です。星と星は本当は繋がっていないけれど、人は遥かに離れた天体どうしを見えない線で結び、星座を夜空に思い描きます。この「見えない線」は、絆や心のつながり、目には見えないけれど確かに存在するふたりの結びつきを象徴しています。
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楽曲では「君が不安になるたびに強がるんだ 大丈夫 僕が横にいるよ 見えない線を繋ごう」と歌われており、どんなに不安でも目に見えないその線を信じて一緒に未来へ進んでいこうという温かな決意が感じられます。ベテルギウスも人間の手によって、はるか遠く離れた他の星たちと結ばれてオリオン座や冬の大三角を形作っているように、人と人も見えない絆で結ばれているというメッセージが込められています。空に星が無数にあるように地球上にも多くの人が暮らしている中で、二人が出会えたのは奇跡と言えるのではないでしょうか。
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ベテルギウスは星の最終段階ともとれる赤色をしており、いずれ超新星爆発を起こして寿命を迎える赤色超巨星です。この「儚さ」と「美しさ」の象徴が、一瞬一瞬を大切にする愛や時を越えて残る想いというテーマと見事にリンクしています。歌詞のサビでは「遥か遠く終わらないベテルギウス 君にも見えるだろう 祈りが」と歌われており、この「祈り」とは幸せな時間が終わらないでほしいという願いなのかもしれません。
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しかし人間も星も永遠に生きられるわけではなく、ベテルギウスは直近の超新星爆発の可能性も踏まえて天文学者・研究者たちの間で研究が進められてきました。代表的な推定では半径は太陽の約760倍、質量は16〜19倍で、残寿命はおよそ10万年規模と見積もられています。一部の研究では数十〜数百年という短期予測もあり、ベテルギウスが通常より50%も明るく輝くようになったことが天文学者を驚かせています。地球から約530〜642光年離れた位置にあるため、もし爆発したとしても地球に重大な影響を及ぼすには遠すぎる距離ですが、夜空で半月並みの光度を数か月放つと見られています。
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ベテルギウスから放たれた光は、地球に到達するまでに約500〜642年の時間を要します。つまり現在私たちが見ているベテルギウスの輝きは、中世の時代に旅を始めた光なのです。この星の光が地球に届くまでの長い年月をたとえにして、今の僕らの気持ちや言葉、思い出も時を超えて誰かの心に届くというメッセージが込められています。
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光が1秒間に進む距離は約30万kmで、これを1年に換算すると約9兆5000億kmとなります。月から地球までは1.3光秒の距離で、月を見るとき私たちは約1.3秒前の姿を見ていますが、ベテルギウスの場合は数百年という気の遠くなるような過去の姿を見ていることになるのです。楽曲の2番でも「星の光」を思い出に例えており、素敵な思い出たちは辛い時に自分たちを励ましてくれる存在として描かれています。目に見えなくても心に残り続ける愛の形が、時空を超える星の光と重ねられているのです。
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「ベテルギウス」は、2021年10月期のフジテレビ木曜劇場ドラマ「SUPER RICH」の主題歌として書き下ろされた楽曲です。優里にとって初の地上波ドラマ主題歌となったこの曲は、ドラマの主人公やストーリーからイメージして制作され、人と人の繋がりや絆をテーマにした曲となっています。ドラマ「SUPER RICH」は、幸せのカタチを追い求めるベンチャー企業の破天荒な女性社長の波瀾万丈な半生を描く作品です。
参考)優里、初の地上波ドラマ主題歌決定。新曲「ベテルギウス」が10…
興味深いのは、曲名の「ベテルギウス」がドラマの舞台でもあるスリースターブックスの社名の由来である"星"にちなんでいる点です。優里本人は「ドラマと共に『ベテルギウス』の曲と歌が、皆さんの心に届いたら嬉しいです」とコメントしており、プロデューサーは「江口さん演じる衛、赤楚さん演じる優だけでなく全ての登場人物、そして今、不安や混沌に苦しむ日本を元気付けてくれる素晴らしい曲になりました」と評価しています。イントロと優里の裏声がきれいで、サビもかっこいい楽曲として、これまでの優里のどの楽曲とも違った新境地となっています。
参考)優里さんの新曲『ベテルギウス』が主題歌に決定
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