おおいぬ座神話と構成する星、冬の大三角、シリウスの輝き

全天で最も明るいシリウスを持つおおいぬ座は、ギリシャ神話の猟犬ライラプスとして知られ、冬の夜空を彩る重要な星座です。その神話と星々の構成、古代エジプトとの関係を知りたいと思いませんか?

おおいぬ座の神話と構成する星

この記事のポイント
シリウスの圧倒的な輝き

全天で最も明るい恒星シリウスを主星とし、4つの2等星を持つ華やかな星座

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猟犬ライラプスの伝説

どんな獲物も必ず捕らえる神犬が、決して捕まらないキツネを追い続けた神話

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冬の大三角の一角

ベテルギウス、プロキオンとともに冬の夜空を彩る壮大な星の配置

おおいぬ座を構成する主要な星々

 

おおいぬ座は、全天で最も明るい恒星シリウス(α星)を中心に、複数の明るい星で構成される冬の代表的な星座です。シリウスは視等級-1.46等という圧倒的な明るさを誇り、太陽の約25倍の光度を持っています。地球からわずか8.6光年という近距離にあることも、その明るさの理由です。

 

参考)https://starwalk.space/ja/news/canis-major-constellation-guide

星座を形作る主要な星は、シリウスの他に4つの2等星があります。ε星アダラは実際には非常に大きな恒星で、おおいぬ座で2番目に明るい星です。δ星ウェズンは黄色く輝く巨星で、大犬の胴体部分に位置しています。その他、β星ミルザム、η星アルドラ、ζ星フルド、γ星ムリフェインなどが星座の形を作り出しています。

 

参考)おおいぬ座の天体と位置がわかる星図や写真|天体写真ナビ

興味深いことに、アダラは全天で最も明るい2等星としても知られており、四捨五入の関係で2等星に分類されていますが、実質的には1等星に近い輝きを持っています。これらの星々を線で結ぶと、星空の綺麗な場所では大犬の姿を容易に連想できる形が浮かび上がります。

 

参考)https://ryutao.main.jp/mythology_12.html

おおいぬ座の神話:猟犬ライラプスの物語

おおいぬ座は、ギリシャ神話に登場する「どんな獲物でも絶対に捕まえる」という特殊な能力を持つ猟犬ライラプスの物語と結びついています。この神犬は、まさにチートじみた性能を持つ存在として語り継がれてきました。

 

参考)https://plus.chunichi.co.jp/blog/asada/article/282/3409/

ある日、国中の牧場や畑を荒らし回る大ギツネが現れました。このキツネもまた特別な存在で、「絶対に捕まらない」という運命を持っていました。そこで猟犬ライラプスが放たれましたが、何日経ってもキツネを捕まえることができませんでした。必ず捕らえる犬と決して捕まらないキツネ、この矛盾した運命を持つ二者の追跡劇は永遠に続くかに思われました。

いつまでも決着のつかないこの状況にあきれた大神ゼウスは、この見事な戦いに水を差すのは惜しいと考え、両者とも石に変えてしまいました。そして記念としてライラプスだけを天に上げ、おおいぬ座にしたと伝えられています。なお、おおいぬ座とこいぬ座オリオン座の狩人オリオンの犬という見方が一般的ですが、実はそれぞれオリオンとは無関係の神話もいくつか存在しています。

 

参考)おおいぬ座・こいぬ座物語

おおいぬ座と冬の大三角の関係

おおいぬ座のシリウスは、冬の夜空を代表する「冬の大三角」を構成する重要な星の一つです。冬の大三角は、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、オリオン座のベテルギウスという3つの1等星を結んでできる壮大な三角形です。

 

参考)冬の大三角(だいさんかく) - 冬の星座 - 星空 - Ya…

冬の南の空で、赤く輝くオリオン座のベテルギウスを見つけたら、その左下に青白く光るシリウスがすぐに見つかります。さらにベテルギウスの左側にこいぬ座のプロキオンがあり、この3つの星を結ぶことで大きな三角形が形成されます。このエリアは1等星が多く集まる華やかな領域で、冬の星空の中でも特に目を引く存在です。

 

参考)冬のダイヤモンドと冬の大三角 - ぐんま天文台

オリオン座の三ツ星を東側に延ばしていくと、ギンギンに青白く光るシリウスにたどり着きます。実際には、オリオンからたどらなくても、冬の夜に南の空を見上げれば、シリウスの圧倒的な明るさですぐに見つけることができます。冬の大三角の内側にはいっかくじゅう座が含まれていますが、最も明るい星でも4等星と暗いため、目立ちません。

 

参考)冬の大三角 - Wikipedia

シリウスと古代エジプト文明の深い結びつき

シリウスは、古代エジプト文明において極めて重要な役割を果たした星として知られています。非常に明るい星であるシリウスは神格化されて崇められており、その信仰の歴史は古く、エジプト第1王朝の時代には既に確認されています。「ナイルの星」や「イシスの星」として崇められ、女神ソプデト(ソティス)として神格化されていました。

 

参考)古代エジプト文明とシリウス星:夜空に輝く、生命の源|√11

古代エジプトでは、日の出直前にシリウスが昇る時を新年と決めていました。シリウスが明け方の空に現れる時期とナイル川の氾濫が起きる時期が一致することに気づいたエジプト人は、シリウスを生命と再生の女神イシスと同一視しました。ナイル川の氾濫は上流から肥沃な土を運んでくるため、シリウスの出現は大地が再び命を吹き込まれることを告げる兆しだと信じられていました。

シリウスが地平線上に沈んで見えなくなった70日後、太陽が昇る直前に東の地平線上にシリウスが現れる時期になると、ナイル川は年に一度の洪水を起こし始め、エジプトの大地に水の恵みをもたらしたという言い伝えがあります。そのため、洪水の時期を知らせるシリウスは肥沃の女神として信仰され、古代エジプト人は1年を365日とする太陽暦をすでに使っていました。一部の学者は、ピラミッドの通気孔がシリウスの方角を指していることや、特定の日にシリウスの光が差し込むことを指摘し、ピラミッドがシリウスを崇拝するための天体観測施設であったとする説も提唱しています。

 

参考)https://ameblo.jp/egyptoiljapan/entry-12696909009.html

古代エジプト文明におけるシリウス信仰とナイル川の氾濫、暦との関係について詳しく解説されています

おおいぬ座の観測と天体の魅力

おおいぬ座は、プトレマイオスの48星座にも登場する由緒正しき星座で、誕生はギリシャ時代になってからのことです。以前からシリウスのことをキオン(犬の星)と呼んでいたことから、おおいぬ座ができあがったとされています。

シリウスは実は連星系で、主星シリウスAと伴星シリウスBから構成されています。シリウスAは太陽の約2倍の質量を持ち、表面温度は約9,845Kで、宇宙空間では白から青白い色をしています。しかし地球から見ると多くの色でキラキラ輝いて見えることがあり、一部の人々はシリウスを「虹色の星」と呼んでいます。一方、シリウスBは白色矮星で、視等級8.44等と暗く、表面温度は約25,000Kと非常に高温です。

 

参考)夜空で最も明るい「シリウス」ってどんな星?

おおいぬ座には、シリウス以外にも魅力的な天体が多数存在します。散開星団のM41、散光星雲のトールの兜星雲(NGC2359)、ミルクボット星雲(Sh2-308)、かもめ星雲(IC2177)などが有名です。また、おおいぬ座VY赤外線源やおおいぬ座矮小銀河なども含まれており、天体写真の撮影対象としても人気があります。星空の綺麗な場所で星を繋いでいけば、大犬の形を簡単に連想することができる、まとまりの良い星座でもあります。

中国では、シリウスを「天狼」と呼んで、獲物を狙うおおかみのぎらぎらした目を表していました。シリウスという名前自体は「焼きこがすもの」という意味で、そのすさまじい明るさを見事に象徴しています。凍てつく冬の夜空を元気に駆ける大犬の姿を見上げながら、古代の人々が抱いた畏敬の念に思いを馳せてみるのも良いでしょう。

 

 


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