赤色超巨星とは何か、ベテルギウスなど有名な星の特徴と大きさと寿命

赤色超巨星とは、太陽の数百倍もの巨大な半径を持ち、宇宙で最も明るく輝く星の一種です。オリオン座のベテルギウスやさそり座のアンタレスなど、夜空に見える赤い星の正体がこれ。いつ爆発するのか、その謎に迫ります。あなたは赤色超巨星の真の姿を知っていますか?

赤色超巨星とは

赤色超巨星の3つの特徴
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巨大な大きさ

太陽の数百倍から千倍以上の直径を持つ、宇宙最大級の恒星

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低温の表面

表面温度が約3000~4000K程度で赤く輝く

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短い寿命

太陽質量の10倍以上の大質量星が最終段階で迎える進化形態

赤色超巨星の基本的な定義と特徴

 

赤色超巨星とは、直径が太陽の数百倍から千倍以上にも達し、明るさは太陽の数千倍以上(全エネルギー放射は太陽の3万倍以上)という巨大な恒星です。その表面温度は比較的低温で、約3000~4000K程度となっており、この低い温度が赤い輝きを生み出す理由となっています。赤色超巨星は、太陽質量の10倍以上という大質量を持つ星の進化の最終段階にあたり、年老いた巨大な星として知られています。

星の中心部では核融合反応の燃料を使い尽くしつつあり、やがて崩壊して超新星爆発に至る運命にあります。普通の赤色巨星が太陽の1~8倍程度の質量しか持たないのに対し、赤色超巨星は太陽の10倍以上の質量を持つことが大きな違いです。その巨大な大きさゆえに、もし太陽の位置にあると仮定すれば、木星の軌道にまで達するほどの半径を持つと考えられています。

 

参考)ニュース - 電波望遠鏡で見た赤色超巨星アンタレスの大気 -…

宇宙で観測される赤色超巨星の数は意外に少なく、天の川銀河において2023年時点で578個の高確率候補と62個の可能性候補が確認されています。これは赤色超巨星の段階が恒星の一生において極めて短い期間であることを示しており、まさに星の「最晩年」を示す貴重な天体といえます。

 

参考)https://academic.oup.com/mnras/advance-article-pdf/doi/10.1093/mnras/stae738/56991865/stae738.pdf

赤色超巨星とは何か、大きさと太陽との比較

赤色超巨星の大きさは想像を絶するスケールで、最大級のものでは太陽半径の約2,150倍に達します。現在観測されている最大の恒星「スティーブンソン2-18」は、たて座方向に位置する赤色極超巨星で、地球から約19,000光年離れた場所にあります。この星の体積は太陽の100億倍に相当し、地球と比較すると実に1.3京倍(13,000,000,000,000,000倍)という途方もない大きさです。

 

参考)『宇宙で一番大きな星は!? 』宇宙の大きさをわかりやすく考察…

代表的な赤色超巨星であるベテルギウスは、太陽の約750倍の半径を持ち、もし太陽の位置に置き換えると地球や火星の軌道をも覆い尽くすほどの大きさです。オリオン座の左肩に輝くこの星は、地球から約550光年離れており、肉眼でもオレンジ色に見えるほど明るく輝いています。さそり座アンタレスも同様に著名な赤色超巨星で、夜空で赤く輝く姿を観測できます。

 

参考)ベテルギウスはいつ爆発する? オリオン座の赤色超巨星を徹底解…

アストロアーツ - たて座UY星の詳細解説
たて座UY星に関する詳しい観測データと画像が掲載されており、赤色超巨星の大きさを視覚的に理解できます。

 

別の巨大な赤色超巨星として知られる「たて座UY星(UY Scuti)」は、直径が太陽の約1,700倍に達し、太陽系全体を飲み込むほどの大きさを誇ります。おおいぬ座VY星も太陽の25倍の質量と1400倍以上の半径を持つ巨大な赤色超巨星で、約3700光年彼方に位置しています。

 

参考)赤色超巨星に予想外の強力な磁場 - アストロアーツ

赤色超巨星の寿命と超新星爆発の仕組み

赤色超巨星の寿命は宇宙的なスケールでは極めて短く、わずか1000万年程度以下とされています。これは太陽の寿命が約100億年であることと比較すると、大質量星がいかに「生き急いで早死にする」存在であるかがわかります。赤色超巨星に進化する星は太陽質量の十数倍を超える大質量星で、数万年で星雲から主系列星となり、その後急速に進化していきます。

 

参考)http://www.nhao.jp/~kuroda/lecture/PDF/H20_reportkaito06.pdf

核融合反応の仕組みを見ると、星の中心部では水素がヘリウムに変換される反応から始まり、ヘリウムから炭素、炭素から酸素へと、次々に重い元素が生成されていきます。このプロセスは「灰」として重元素の中心核ができ、それが重力収縮して温度が上昇し、再び核融合反応の「火」がつくという繰り返しで進行します。重元素の核はタマネギ状に層を成して蓄積されていきます。

最終的に中心部で鉄の原子核が生成されると、それ以上の核融合反応ではエネルギーを取り出せなくなり、反応は停止します。すると中心部は熱エネルギーによる膨張力を失って急速に重力収縮し、その反動で超新星爆発を起こします。爆発後には中性子星やブラックホールという極限状態の天体が残されることになります。

国立天文台レポート - 恒星進化と超新星爆発
大質量星の進化過程と核融合反応のメカニズムについて、詳しい解説と図解が掲載されています。

 

ベテルギウスの場合、2020年初めに観測史上最も暗い等級まで減光し、超新星爆発が近いのではないかと注目されました。しかし詳細な分析の結果、この減光は星の脈動に加えて星から放出された大量の塵が原因であり、実際の爆発までにはまだ約10万年の時間があることが判明しています。

 

参考)赤色超巨星ベテルギウス、超新星爆発は約10万年後と判明 - …

赤色超巨星の観測と色の変化のメカニズム

赤色超巨星の観測において、その色と明るさの変化は重要な研究対象となっています。表面温度の正確な測定は長年の課題でしたが、東京大学の研究チームが近赤外線のYJバンド(0.97~1.32μm)に見られる鉄原子の吸収線に着目した新手法を開発しました。この手法により、ベテルギウスの表面温度が3611K(約3338℃)という高精度の値が得られ、統計誤差は30~70K程度に抑えられています。

 

参考)赤色超巨星の表面温度を正確かつ手軽に測定する新手法 - アス…

赤色超巨星が赤く見える理由は、その表面温度が約3000~4000Kと比較的低いためです。これは太陽の表面温度約6000Kと比べてかなり低く、黒体放射の原理により長波長(赤色)の光を多く放出するためです。星の外層が大きく膨張することで表面積が増大し、単位面積あたりのエネルギー密度が低下して温度が下がり、結果として赤い色を呈するようになります。

ベテルギウスは平常時でも0.3等級程度の振幅で変光しており、脈動変光星として知られています。研究により、この脈動のメカニズムは「κ(カッパ)メカニズム」であり、185日(±13.5日)と約400日という二つの周期で明暗を繰り返していることが判明しました。2019年末から2020年初頭にかけて起きた「ベテルギウスの大減光」は観測史上最大規模で、通常0.4等級だった明るさが約1.6等まで落ち込みました。

 

参考)谷口大輔のページ - 研究 - 赤色超巨星の大気構造

興味深いことに、赤色超巨星には予想外の強力な磁場が存在することが判明しています。従来、こうした老齢星は回転が遅いことなどの理由で若い星のような活発な磁気活動は行われていないと考えられていましたが、おおいぬ座VY星の観測により、大きく回転が遅い赤色超巨星でも強力な磁場を持つことが確認されました。この発見は赤色超巨星の物理メカニズムの理解を深める重要な知見となっています。

赤色超巨星とは何か、有名な星の位置と地球からの距離

代表的な赤色超巨星は地球から数百光年から数万光年の距離に位置しています。最も有名なベテルギウスは、オリオン座の左肩(α星)に位置し、地球から約550光年の距離にあります。冬の大三角を形成する恒星の一つとして、日本では冬の夜空で容易に観測できる明るい星です。肉眼で見える恒星の中でも特に明るく、夜空で10番目に明るい恒星として知られています。

さそり座のアンタレスも著名な赤色超巨星で、その名前は「火星に対抗するもの」を意味し、火星と同じような赤い色で輝いています。ケフェウス座のガーネット・スターも美しい赤色を持つ赤色超巨星の一つです。これらの星は肉眼でも赤みを帯びた色合いが確認でき、星座観察の際の目印となる重要な天体です。

 

参考)第69回 オリオン座に輝く星ベテルギウスの素顔

sorae - ベテルギウス観測ガイド
ベテルギウスの位置、観測方法、最新の研究成果について詳しく解説されており、初心者でも観測しやすい情報が満載です。

 

最大級の赤色超巨星「スティーブンソン2-18」は、たて座方向のたて・ケンタウルス腕にある巨大な散開星団「スティーブンソン2星団」の中に位置し、地球から約19,000光年も離れています。おおいぬ座VY星は約3700光年彼方にあり、太陽の25倍の質量と1400倍以上の半径を持つ極めて巨大な赤色超巨星です。

 

参考)Stephenson 2-18 - Wikipedia

天の川銀河内で確認されている赤色超巨星候補は、Gaia DR3の距離測定データと2MASS測光データ、3次元銀河塵マップを組み合わせた調査により、578個の高確率候補と62個の可能性候補が特定されています。これらの星々は銀河の構造を理解する上で重要な役割を果たしており、特に天の川銀河の反対側に位置する赤色超巨星については観測上の困難さから研究が進んでいませんでしたが、OGLE-IIIカタログのデータを活用した新たな手法により、銀河の反対側にある474個の赤色超巨星が新たに発見されています。

 

参考)New Red Supergiant Stars in th…

これらの赤色超巨星の距離と位置を正確に把握することは、銀河構造の理解だけでなく、次の銀河系内超新星爆発を観測するための重要な準備となっています。赤色超巨星は超新星爆発の前兆段階にあるため、継続的な観測対象として科学的価値が極めて高い天体群です。

 

 


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