たて座は17世紀末にポーランドの天文学者ヨハネス・ヘベリウスによって設定された新しい星座であるため、古代ギリシア神話には登場しません。当初は「ソビエスキーのたて座(Scutum Sobiescianum)」という名称で、1684年8月に学術誌『ライプツィヒ学術論叢』に星図とその説明が掲載されました。この星座は、1683年にウィーンを包囲したオスマン帝国軍を撃退したポーランド王ヤン3世ソビエスキーの功績を称えて命名されました。
参考)https://ryutao.main.jp/mythology_48.html
ヘベリウスは1679年に観測施設を火災で焼失した際、ヤン3世から再建の支援を受けた恩義もあり、この星座を献上したと考えられています。実在の人物の名前を冠した星座は非常に珍しく、たて座はその代表例です。19世紀以降、国王の名前は削除され、単に「たて座(Scutum)」として88星座の一つとして現在も残っています。
参考)たて座 - Wikipedia
中国では18世紀に編纂された星表『欽定儀象考成』で、たて座の星々は「天弁」という天子のかぶる冠を表す星官に配されました。日本では1931年の『天文年鑑』第4号で「ソビエスキの楯」として紹介され、現代中国では「盾牌座」と呼ばれています。
たて座を構成する星は4等星と5等星が中心で、全天で5番目に小さい星座であり、約30個の肉眼で見える星が含まれています。最も明るいのはα星で、見かけの明るさは3.83等、橙色巨星に分類され、地球から約199光年の距離にあります。α星はたて座で唯一4等星に近い明るさを持つ星です。
参考)いて座とたて座|星や月|大日本図書
β星は見かけの明るさ4.22等の4等星で、たて座で2番目に明るい恒星です。α星とβ星は天の川の中に埋もれているため、都市部からの観察は困難ですが、暗い空では細長い十字架のような形やひし形に並んだ星々として認識できます。
参考)たて座の恒星の一覧 - Wikipedia
δ星は特に興味深い天体で、4.60等から4.79等の振幅で明るさを変える変光星です。この星は「たて座δ型変光星」のプロトタイプとされ、0.1937697日(約4.6時間)の周期で脈動します。たて座δ型変光星は半径方向の膨張収縮ではなく、非動径脈動と呼ばれる特殊な脈動が原因で変光する脈動変光星の一種です。
参考)たて座 - Wikiwand
たて座には、メシエカタログに登録された2つの散開星団、M11とM26が輝いています。M11は「野鴨星団」とも呼ばれ、たて座で最も有名な天体です。この星団は天の川の中の「スモールスタークラウド」と呼ばれる領域にあり、双眼鏡を向けると視野一杯に星が広がる壮観な光景を楽しめます。
参考)https://ryutao.main.jp/dig_m11.html
M11は約6000光年の距離にあり、500個以上の星が密集した散開星団で、望遠鏡で観察すると野鴨が飛ぶような形に見えることからこの名が付けられました。一方、M26は同じたて座にありながらM11に比べると暗く、あまり目立たない散開星団です。等級は8等で、双眼鏡では殆ど確認できず、10cm程度の望遠鏡でいくつかの星が分離されて見えてきますが、星の数自体が少ないため印象は控えめです。
参考)https://tiger-cat.com/archives/692
これら2つの散開星団は、たて座が小さく暗い星座でありながら天体観測の対象として人気がある理由となっています。特にM11は、天の川の濃い部分に位置するため、星雲や星団が数多く観察できるエリアの代表的な天体です。
たて座はいて座の北、わし座の南に位置し、夏から初秋にかけてが見頃となります。具体的には、夏の大三角を形成するアルタイル(わし座α星)から南方向へ視線を移し、わし座の南端付近から天の川が一段と濃くなった辺りを探すと見つけやすくなります。天の川は7月から8月の夜に最も明るく輝き、特にいて座付近は銀河の中心方向にあたるため、天の川が最も濃く見える場所です。
参考)https://seiza.imagestyle.biz/natu/tatemain.shtml
たて座はわし座、へび座(尾)、いて座にはさまれた位置にあり、4等星と5等星がひし形または細長い十字架のような形に並んでいます。ただし、いちばん明るい星でも4等星のため、目印になる星が少なく、都市部の光害がある場所では見つけにくい星座です。観察には、街明かりの少ない暗い場所に移動し、天の川がはっきり見える環境を選ぶことが重要です。
参考)そうだ奥三河に行こう!天の川の中にある小さな星座たち。
星座アプリを活用すれば、スマートフォンを空にかざすだけでたて座の位置を正確に特定できるため、初心者でも容易に観察できます。観察時期は、7月の夜9時頃なら東の空、8月から9月なら頭の真上から南西の空に見え、最も観察しやすい時間帯は夜8時から11時頃です。
参考)夏の大三角・天の川・さそり座の見つけ方!方角や星座の神話も紹…
たて座は天の川の上に位置し、周辺には多くの有名な星座が配置されています。北側にはわし座があり、わし座の1等星アルタイルは夏の大三角の一角を成す明るい星として知られています。南側にはいて座が広がり、いて座の南斗六星は北斗七星に似た形で、枡を伏せた柄杓のような配置が特徴的です。
参考)夏の大三角と天の川を見てみよう!
へび座(尾)はたて座の西側に接しており、天の川を挟んでこれらの星座が複雑に絡み合っています。たて座の領域は非常に小さく、全天で5番目に小さい星座であるため、周辺の大きな星座に埋もれがちですが、天の川の濃い部分に位置することで独特の存在感を示しています。
参考)たて座ってどんな星座?【神話も紹介】
天の川は地球と銀河の位置関係から、夏には銀河の真ん中の部分が見えるため、他の季節よりもはっきりと観察できます。この天の川を境界線として、夏の大三角を構成するデネブとベガ・アルタイルが分かれて輝き、その流れに沿ってたて座も配置されています。たて座周辺は星雲や星団が豊富なエリアで、双眼鏡や小型望遠鏡での観察対象として天文ファンに親しまれています。
参考)星座八十八夜 #11 実在の出来事がモデルの珍しい星座「たて…
たて座の詳しい星図と観察情報(天体写真の世界)
たて座の位置や構成する星、散開星団M11とM26の詳細な解説と美しい天体写真が掲載されています。
たて座の歴史的背景と天文学的データ(Wikipedia)
ヘベリウスによる星座の設定経緯、ソビエスキー王との関係、中国や日本での呼称など、歴史的な詳細情報が網羅されています。
実在の出来事がモデルの珍しい星座「たて座」(アストロアーツ)
たて座の成り立ちと観察方法、周辺天体について、初心者にもわかりやすく解説した記事です。

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