いて座神話と構成する星の由来から南斗六星まで

弓を構える半人半馬の姿が印象的ないて座には、どんな神話の物語や構成する星々の秘密が隠されているのでしょうか?

いて座神話と構成する星

この記事でわかること
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いて座の神話

ケイローンとクロトス、二つの異なる神話の由来と物語

南斗六星の構成

いて座を形作る6つの明るい星々とその固有名

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銀河の中心

天の川の最も濃い部分に位置する特別な星座の魅力

いて座の神話における賢者ケイローンの物語

 

いて座のモデルとして最も広く知られているのは、ギリシャ神話に登場する半人半馬のケンタウロス族の賢者ケイローン(キロン)です。ケイローンは時の神クロノスを父に持ち、医術、音楽、哲学、占星術、武術など、あらゆる学術に精通した賢人として知られていました。彼の元では、ヘラクレス、医術の神となったアスクレピオス、黄金の羊毛を求めたイアソンなど、多くのギリシャ神話の英雄たちが学問を修めました。

 

参考)いて座 - Wikipedia

ケイローンの最期は悲劇的なものでした。彼の弟子であったヘラクレスがケンタウロス族と争った際、誤って放たれた毒矢がケイローンの膝を射抜いてしまいます。矢にはヒドラの猛毒が塗られており、不死身であったケイローンは死ぬことすらできず、激しい苦痛に苦しみ続けました。最終的にケイローンは大神ゼウスに懇願し、不死の身をプロメテウスに譲って死を迎えます。ゼウスはケイローンの才能と功績を称え、彼を天に上げて星座としました。

 

参考)https://seiza.imagestyle.biz/sinwa/ite.shtml

ケイローンの神話には、知恵と犠牲という深いテーマが込められています。師として多くの英雄を育て上げたケイローンが、自らの弟子の過失によって傷つき、最後は不死という特権さえも手放して安息を得たという物語は、教育者としての献身と、苦しみからの解放という普遍的な人間性を表現しています。

 

いて座のもう一つの神話クロトス説

実は、いて座のモデルには別の説も存在します。ギリシャ神話の研究家イアン・リドパスやテオニー・コンドスによれば、いて座の本来のモデルは クロトス というサテュロスであると主張されています。

 

参考)https://www3.nagasaki-joshi.ac.jp/~web06la/05/newpage58.html

クロトスは、女神ムーサイの母エウペーメーを母とし、牧羊神パーンを父とする存在でした。彼は弓を発明した優れた狩人であり、ムーサイたちの乳母でもあったエウペーメーと共に暮らしていました。クロトスはムーサイたちの演奏や歌に対して拍手喝采を送る習慣を作り出したとされ、これが人類の拍手の起源という説もあります。ムーサイたちの願いにより、大神ゼウスがクロトスを星座にしたと伝えられています。

 

参考)http://www.hal-astro-lab.com/history/episode12.html

この説では、いて座の足元に輝く みなみのかんむり座 が、クロトスが競技の際に脱いだ花の冠であるとされています。ケイローン説が悲劇的な最期を描くのに対し、クロトス説は芸術への貢献と女神たちからの敬愛という、より祝福的な物語となっている点が興味深い対比です。

日本ではケイローン説が一般的ですが、古代ギリシャの文献研究からは、クロトス説の方が本来の伝承に近い可能性が指摘されています。

いて座を構成する南斗六星の星々

いて座の中で最も目を引くのは、6つの明るい星が作る 南斗六星(なんとろくせい) です。この星の並びは、柄杓(ひしゃく)を伏せたような形をしており、北斗七星に対応する南の星座として古くから東洋で親しまれてきました。

 

参考)射手座ってどんな星座?【神話も紹介】

南斗六星を構成する6つの星は以下の通りです:

  • ζ(ゼータ)星 アスケラ - 南斗六星の中で3番目に明るい星​
  • λ(ラムダ)星 - ひしゃくの柄の部分を形成​
  • μ(ミュー)星 ポリス - 固有名「ポリス」は2016年8月21日に正式承認​
  • σ(シグマ)星 ヌンキ - 南斗六星の中で2番目に明るい星

    参考)https://sendaiuchukan.jp/data/gallery/ex/sagittarius-bep20230906.html

  • τ(タウ)星 - スペクトル型K1型の巨星で、質量は太陽の約1.25倍​
  • φ(ファイ)星 - ひしゃくの底部を形成​

南斗六星の中で最も明るいのは ε(イプシロン)星のカウス・アウストラリス で、いて座全体でも最も輝く2等星です。「カウス・アウストラリス」という名前は「弓の南部」を意味しており、射手が構える弓の下側に位置することから名付けられました。

 

参考)南斗六星 — 天の川を映すもう一つの“斗” 8/27|星遊び…

いて座の主要な星の固有名と意味

南斗六星以外にも、いて座には興味深い固有名を持つ星々が数多く存在します。

 

α(アルファ)星のルクバト は「射手の膝」を意味する名前で、ケイローンの膝の部分に位置しています。この星の名前は天体望遠鏡メーカーである高橋製作所のオートガイダー「α-SGR(ルクバト)」の命名にも使われています。ルクバトは4.0等星と比較的暗めですが、星座の形を理解する上で重要な位置を占めています。
参考)https://ryutao.main.jp/mythology_03.html

β(ベータ)星のアルカブ は「射手のアキレス腱」を意味し、ケンタウロスの後ろ足の部分を表しています。γ(ガンマ)星のアル・ナスル は「矢の先端」という意味で、射手が狙いを定めている矢の先を示しています。
参考)http://www.bao.city.ibara.okayama.jp/stardb/sky/data/sky0017.html

δ(デルタ)星のカウス・メディア は「弓の中央部分」を意味し、2.7等星として比較的明るく輝いています。これらの星の固有名は、アラビア語に由来するものが多く、中世のイスラム天文学がヨーロッパの星座文化に大きな影響を与えたことを物語っています。
参考)http://yumis.net/space/star/greece/sgr-g3.htm

それぞれの星の名前が、射手の姿の具体的な部位を表している点は、古代の天文学者たちがいかに詳細に星座の物語を夜空に描いていたかを示す興味深い証拠です。

 

いて座と銀河中心の天文学的重要性

いて座は神話や星の美しさだけでなく、天文学的にも極めて重要な位置を占めています。いて座の方向には 銀河系の中心 があり、地球から約2万8000光年離れたところに位置しています。

 

参考)いて座(いてざ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

このため、いて座の領域では天の川が全天で最も明るく、幅広く見えます。実際、この方向を双眼鏡や望遠鏡で観察すると、膨大な数の星雲や星団を発見することができます。特に有名なのは、M8干潟星雲M20三裂星雲、散開星団の M23M25、球状星団の M22 などです。

 

参考)いて座とは?見つけ方や見どころ、神話まで

いて座は黄道十二星座の一つでもあり、太陽が通過する経路上に位置しています。古代メソポタミアのシュメール文明では、戦争と狩猟の神「パビルサグ(Pabilsag)」として紀元前2千年紀までには考案されていたとされ、人類最古級の星座の一つです。

 

参考)いて座 - 新興出版社啓林館・文研出版 万博プロジェクト

現代の天文学においても、いて座の方向は銀河系の構造や進化を研究する上で欠かせない観測対象となっており、多くの電波望遠鏡や赤外線望遠鏡がこの領域を詳しく調査し続けています。夜空に浮かぶ射手の姿は、宇宙の深淵へと続く窓のような存在なのです。

 

いて座の歴史や神話、天文学的な詳細について網羅的にまとめられた参考資料
いて座の神話とケイローンの物語が詳しく解説されている星座図鑑

 

 


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