わし座には主に2つのギリシャ神話が伝えられており、いずれも最高神ゼウスに関連した物語です。最もよく知られているのは、ゼウスが美少年ガニメデスをさらった際に変身した、または遣わした大鷲の物語です。ガニメデスは古代都市トロイアの王子で、この世で最も美しい少年と言われていました。栗色の髪に黒い瞳、バラ色の唇を持ち、その容姿は女性にも男性にも勝る美しさだったと伝えられています。
参考)https://seiza.imagestyle.biz/sinwa/wasi.shtml
ある日オリンポスからトロイの国を見渡していたゼウスは、羊の群れを追うガニメデスの姿を見つけ、その美しさに心を奪われました。ゼウスは大鷲に変身し、瞬く間にガニメデスをさらって天上へと連れ去ります。オリンポスに着いたゼウスは、ガニメデスに「永遠の若さと美しさを与え、人々の憧れとなるように約束しよう」と告げました。こうしてガニメデスは神々の側で酒を酌む給仕役として留まることになり、後にみずがめ座として夜空に配置されたと言われています。
参考)わし座2 ギリシャ神話でわし座となった鷲の候補は,6.その内…
もう一つの神話は、人類に火を与えた罰として岩山に縛られたプロメテウスを、毎日ついばみに来る鷲の物語です。この鷲もゼウスが遣わした存在で、プロメテウスの肝臓を日々食い破る役割を担っていました。いずれの神話においても、わし座の鷲はゼウスの意志を実行する存在として描かれ、神の力と権威の象徴となっています。
参考)わし座ってどんな星座?【神話も紹介】
わし座の中心を成すα星アルタイルは、全天21の一等星の一つであり、地球から見える恒星の中で12番目に明るい星です。視等級0.76という明るさで白く輝き、鷲の目を表す位置にあります。アルタイルという名前はアラビア語で「飛翔する鷲」を意味し、古代から鷲のイメージと結びついていました。
参考)アルタイル(わし座α星)|やさしい88星座図鑑
この星は太陽系から約17光年という近距離にあり、肉眼で見える恒星の中でも地球に最も近い星の一つです。アルタイルは太陽の約1.8倍の質量と約11倍の明るさを持つA型主系列星で、驚異的な自転速度を持っています。自転周期はわずか約9時間しかなく、秒速240kmという高速回転のため赤道部分が膨らんだ楕円形になっているのが特徴です。
参考)https://starwalk.space/ja/news/aquila-constellation-guide
日本では七夕伝説の彦星(牽牛星)として古くから親しまれており、天の川を挟んで輝くこと座のベガ(織姫)と対をなす星として知られています。アルタイルはこと座のベガ、はくちょう座のデネブとともに「夏の大三角」を形成し、夏の夜空を代表する星の配置を作り出しています。この大三角の中でアルタイルは2番目に明るい星として、夏の星空観測の重要な目印となっています。
参考)わし座 - Wikipedia
アルタイルの両脇には、わし座の姿を特徴づける2つの重要な星が配置されています。アルタイルの東側に位置するβ星アルシャインは視等級3.7等の星で、アルタイルと一直線に並ぶ配置が目印になります。一方、西側に輝くγ星タラゼドは2.7等級のオレンジ色の星で、アルタイルよりも暗いものの、その色合いが観測時に識別しやすい特徴となっています。
参考)http://yumis.net/space/star/greece/aql-g3.htm
この3つの星が作る配列は、わし座の胴体の中心部を形作っており、古代バビロニアの時代から鷲の基本的な姿として認識されていました。当初はアルタイルを胴体、両脇の2つの星を翼と見立てていましたが、その後近くの星を加えて現在のような翼を広げた雄大な姿になりました。
参考)https://www.moonsystem.to/p/cons/washi.htm
アルタイルとこれら2つの星で形成される小さな三角形は、天の川を横断するように飛ぶ鷲の中心となり、星座全体の骨格を成しています。夜空でこの3つの星の配列を見つけることができれば、わし座の位置を確実に特定できるため、星座観測の初心者にとっても分かりやすい目印となります。アラビアでは、この3つの星の配列を「飛ぶ鷲」として捉え、一方でこと座のベガを含む3つの星を「落ちる鷲」と呼び、対照的な鷲の姿として認識していました。
参考)https://seiza.imagestyle.biz/natu/wasimain.shtml
わし座の領域にはメシエ天体は含まれていませんが、天の川の通り道に位置するため多くの興味深い天体が存在します。その多くは9等星以下の暗い天体ですが、望遠鏡を使えば観測する価値のある対象です。特筆すべきは、わし座付近に位置する「ファントム・ストリーク星雲」(NGC 6741)で、これはわし座の尾のあたりに見られる惑星状星雲です。地球から約7,000光年の距離にあり、見かけの光度は11.6等で観測できます。
またわし座に隣接するへび座には、通称「わし星雲」と呼ばれるM16(NGC 6611)が存在します。この天体は散開星団と散光星雲が複合した構造を持ち、赤い星雲の広がりが翼を広げた鷲を思わせる姿をしています。観測する際にはたて座γ星から西へ約2.5度の位置を探すと見つけやすく、双眼鏡でも観測可能です。
参考)わし星雲 - Wikipedia
わし座の西半分には天の川が通っており、特に南で接するたて座にかけては星が豊かに広がる領域となっています。ヒッパルコス衛星によって、わし座の枠内には1655個もの星が詳細に記録されており、星座を構成する主要な星は11個とされています。さらにわし座には、ヘルクレス座・かんむり座グレートウォールと呼ばれる銀河系外天体も位置し、これは観測可能な宇宙で最大規模の構造として知られています。
国立天文台の季節の天体紹介ページでは、わし星雲を含む星の誕生の場について詳しく解説されています
わし座は7月から11月まで観測可能で、最も見やすい時期は8月です。他の月は昼間の空にあるため観測が困難になります。夏の夜空で観測する場合、7月中旬から8月初旬の夕方が最適な時間帯となり、7月末頃の夕方なら真東に近い位置に現れます。この時期に2時間おきに位置を観察すると、明け方まで真東から南の空を通って真西に沈む様子を確認できます。
参考)https://kids.gakken.co.jp/box/rika/06/pdf/B046307140.pdf
わし座を見つける最も簡単な方法は、夏の大三角を目印にすることです。北半球では南の方角に、南半球では北の方角にわし座が位置します。夏の大三角の中で最も南にあり、かつ天の川のすぐ側で輝いているのがアルタイルです。アルタイルは大三角の他の2つの星から少し離れた位置にあるため、識別が容易です。
参考)わし座(Aquila)について知ろう!【天空を駆ける神話の鳥…
アルタイルを見つけたら、その両脇に一直線に並ぶ2つの星を探してください。この3つの星の配列がわし座の目印となり、ここから鷲の頭部と翼をなぞることができます。天の川を横断するように飛ぶ雄大な鷲の姿を想像しながら観測すると、星座の全体像を把握しやすくなります。天体観測アプリを使用すれば、星の位置を正確に確認でき、初心者でも確実にわし座を特定することができます。
参考)わし座とは?見つけ方や見どころ
わし座のアルタイルは東アジアの文化圏において、七夕の彦星(牽牛星)として特別な意味を持っています。この伝承では、アルタイルは天の川を挟んで輝くこと座のベガ(織姫星)と対になる星として位置づけられており、年に一度だけ会うことを許された恋人たちの物語が語り継がれています。
中国の伝統的な星座体系では、アルタイルを含む3つの星は「河鼓」と呼ばれる星座を構成していました。河は天の川を、鼓は太鼓を意味し、現在のわし座の恒星アルタイルがその中の一つとして含まれています。この東洋の星座観は、ギリシャ由来の星座体系とは異なる文化的背景を持ちながらも、同じ星々を観察の対象としていた点が興味深い事実です。
参考)わし座 - 新興出版社啓林館・文研出版 万博プロジェクト
日本では江戸時代から七夕行事が盛んになり、アルタイルは「彦星」として庶民の間でも広く知られるようになりました。現代でも毎年7月7日には、この星を見上げて願い事をする習慣が続いています。わし座という西洋の星座名と彦星という東洋の呼び名が共存している状況は、天文学における文化交流の一例といえるでしょう。
参考)アルタイル - Wikipedia
実際にこの時期の夜空を見上げると、天の川の両岸で輝くベガとアルタイルの姿を確認でき、古代から人々が星空に投影してきた物語の舞台を体感することができます。これらの星々は古代バビロニアの時代から認識されており、数千年にわたって人類の想像力を刺激し続けてきた天体です。

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