ヘルクレス座は、ギリシア神話で最も有名な英雄ヘルクレス(ヘーラクレース)の姿を表した星座です。大神ゼウスとミケネ王の王妃アルクメネーとの間に生まれたヘルクレスは、12の偉大な冒険を成し遂げたことで知られています。この12の冒険には、しし座、うみへび座、かに座、りゅう座など、他の多くの星座が関係しており、ギリシア神話の星座同士が深くつながっていることがわかります。
参考)ヘルクレス座ってどんな星座?【神話も紹介】
ヘルクレス座が空で逆さまになっている理由には興味深い背景があります。ゼウスの正妻ヘラは、夫の不倫によって生まれたヘルクレスを疎んでいたため、星座として天に配置される際も敬意を払われず、逆さまの姿で描かれているという説があります。この逆さまの姿勢は「ひざまずく者」とも解釈され、主星ラスアルゲティの名前の由来にもなっています。
参考)https://sd17df35cb28e8b65.jimcontent.com/download/version/1633676837/module/12159228712/name/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%B9%E5%BA%A7_11.pdf
ヘルクレスの冒険の中でも特に有名なのが、ネメアのライオン退治(しし座)、レルネの怪物ヒュドラ退治(うみへび座)、ヘスペリデスの黄金のリンゴを守る竜ラドン退治(りゅう座)などです。これらの偉業により、ヘルクレスは死後に神となり、星座の仲間入りを果たしました。
参考)ヘルクレス座|星や月|大日本図書
あまり知られていない神話として、ヘルクレスがリグリア人との戦いで重症を負い、ひざまずいた際、父ゼウスが大量の石を与えて勝利を助けた話があります。この神話は、南フランスのクロー平野に同じような大きさの石が点在する理由を説明するために考案されたものと考えられています。
ヘルクレス座は全天で5番目に大きい星座ですが、2等星以上の明るい星がなく、3等星以下の比較的暗い星たちで構成されているため、あまり目立たない星座です。主な恒星の数は、3等星が6個、4等星が19個、5等星が52個、6等星が168個となっており、合計で約230個の星が肉眼で確認できます。
参考)ヘルクレス座の天体と位置がわかる星図や写真|天体写真ナビ
α星ラスアルゲティは、ヘルクレスの頭部に位置する3等星で、「ひざまずく者の頭」を意味するアラビア語に由来する名前を持ちます。この星は実視連星であり、小望遠鏡でも分離して観測することができます。主星αAは2.7〜4.0等の間で変光する半規則型脈動変光星で、直径が太陽の約800倍と推定される赤色超巨星です。伴星αBは5等星で、黄色の恒星ですが実際には緑から青色に見えるという興味深い特徴があります。
参考)http://yumis.net/space/star/greece/her-g2.htm
β星コルネフォロスは、ヘルクレス座で最も明るい恒星で3等星です。裸眼で見ると1つの星に見えますが、連星系であり、伴星の公転周期はおよそ410日程度で、離心率0.55という楕円軌道を持ちます。この星はヘルクレスの胴体を形作る星の一つで、星座を見つける際の重要な目印となります。
参考)ヘルクレス座|やさしい88星座図鑑
その他の主な恒星には、δ星サリン、κ星マルファク、λ星マシム、ω星クヤムなどがあり、これらの星がヘルクレスの体や手足を形作っています。特にヘルクレス座の胴体部分は、6個の3等星が描き出す少し真ん中がへこんだH字形(または歪んだHの字、リボンの形)として認識され、星座を識別する重要な手がかりとなります。
参考)https://www.astroshop-tomita.com/post/summer01_hercules
ヘルクレス座は、夏の夜空で比較的簡単に見つけることができる星座です。最も効果的な見つけ方は、うしかい座の1等星アルクトゥルスとこと座の1等星ベガを利用する方法です。アルクトゥルスとベガを結んだ線の間、ややベガ寄りの位置にヘルクレス座は位置しています。隣接する星座として、かんむり座も同じ領域に挟まれているため、合わせて探すと良いでしょう。
参考)http://www.ksky.ne.jp/~tatsuo/siki/6gatu/001.htm
南中位置での具体的な見つけ方として、まず南を向いて天頂近くに昇ったα星ラスアルゲティを探します。南を向いた状態で、げんこつ7個分上を見上げると、3等星のラスアルゲティが見つかります。次にラスアルゲティから北(上)へ、げんこつ1個半の所を見ると、ほぼ天頂付近に6個の3等星が描き出す、少し真ん中がへこんだH字形が見つかります。
ヘルクレス座の胴体を形作る星の配置は、縦横げんこつ1個半位の範囲で、リボンの形や歪んだHの字として認識できます。この形を見つけられれば、後は星座図を見ながら丹念に手足を形作る星を探していくことができます。ヘルクレス座は隣接する星座として、へびつかい座、へび座、わし座、こと座、りゅう座、うしかい座、かんむり座と接しているため、これらの星座との位置関係も参考になります。
ヘルクレス座の最大の見どころは、北天最大で最も美しいとされる球状星団M13(NGC 6205)です。この球状星団は「ヘルクレス座球状星団」や「大球状星団M13」とも呼ばれ、約50万個もの星を含み、実直径は約100光年におよびます。M13の大きさは満月の3分の1ほどで、空の条件が良ければ肉眼でも見ることができます。
参考)夏の星座「ヘラクレス座」の見つけ方を紹介します
M13の見つけ方は比較的簡単で、ヘルクレス座の胴体を形作る星のうち、かんむり座寄りの北西にあるη星と中ほどのζ星を結び、その真ん中からややη星よりのところに位置しています。双眼鏡で覗くと縁のぼやけた小さな丸い天体として見ることができ、天体望遠鏡で観測すると数十万個の年老いた星が球状に集まった壮大な光景を楽しむことができます。この星団を構成する星々は年齢が100億歳を超えるような年老いた星で、一個の大きさは太陽の直径の100倍位もある巨星たちです。
参考)https://www.astroarts.co.jp/alacarte/messier/html/m13-j.shtml
M13の詳しい観測情報と美しい写真(アストロアーツ メシエ天体ガイド)
もう一つの見逃せない球状星団がM92(NGC 6341)です。M92は大きさこそM13にはかないませんが、小口径の望遠鏡でもじゅうぶん楽しめる立派な球状星団で、実直径は100光年前後、太陽の14万倍から33万倍の質量を持つと考えられています。M92の見つけ方は、ヘルクレス座π星とりゅう座β星の真ん中から、ややπ星よりの位置を探します。1781年3月18日にメシエが発見しましたが、その前の1777年にボーデが観測記録を残しているという歴史があります。
参考)https://www.astroarts.co.jp/alacarte/messier/html/m92-j.shtml
7×50の双眼鏡では、M92は周辺がにじんで見え、恒星像とは違うことがわかります。興味深いことに、双眼鏡での観測ではM13よりもM92のほうが明るく感じられることがあります。30cmクラスの望遠鏡で観測すると、中心近くまで星に分解できるようになり、その眺めは実に壮観です。
ヘルクレス座には球状星団以外にも、興味深い天体が数多く存在します。その一つが惑星状星雲NGC6210で、「タートル星雲(Turtle nebula)」という愛称で知られています。この天体は9等前後と明るいのですが、視直径が20秒角ほどしかない非常に小さな天体です。大きい望遠鏡で観測すると、手足の生えた亀のように見えることから「カメ」という愛称が付けられましたが、惑星状星雲にしてはかなり不規則な形をしているのが特徴です。
参考)NGC6210(惑星状星雲、ヘルクレス座)
もう一つの惑星状星雲IC4593も変わった形状をしており、おすすめの観測対象です。これらの惑星状星雲は、恒星が進化の最終段階で外層を放出した際に形成される美しい天体で、望遠鏡での観測に適しています。
銀河愛好家には、ヘルクレス座銀河団(Abell 2151)とArp272(NGC6050+IC1179)がおすすめです。ヘルクレス座銀河団は多数の銀河が集まった銀河団で、深宇宙の壮大さを感じることができる天体です。Arp272は相互作用銀河として知られ、2つの銀河が重力で影響し合っている珍しい姿を観測できます。
その他の主な天体として、球状星団NGC6229、銀河NGC6166、NGC6181、NGC6207、NGC6482、NGC6555、NGC6574、NGC6661などがあり、これらは中〜大口径の望遠鏡での観測に適しています。散光星雲Sh2-73も存在し、ヘルクレス座の多様な天体を楽しむことができます。
ヘルクレス座は天文学的な観測対象として有名ですが、占星術との関係では興味深い位置づけにあります。黄道十二宮には含まれていないため、一般的な星座占いには登場しませんが、恒星占星術の分野では主星ラスアルゲティが重要視されることがあります。この星の変光する性質は、占星術的には「変化」や「転換」の象徴として解釈されることがあり、ヘルクレスの英雄的な冒険と試練の物語と結びつけられています。
ヘルクレス座の逆さまの姿勢は、占星術的な解釈では「謙虚さ」や「奉仕」の象徴とされることもあります。最強の英雄でありながらひざまずく姿は、真の強さとは力だけではなく、困難に立ち向かう勇気と、過ちを認める謙虚さの両方を持つことだという教訓を示していると考えられています。
また、ヘルクレス座が全天で5番目に大きな星座でありながら明るい星を持たないという特徴は、「内なる強さ」や「目立たない真の価値」という象徴的な意味を持つと解釈されることがあります。この視点は、現代の自己啓発や心理学的なアプローチとも共鳴し、外見的な華やかさよりも内面的な強さや徳を重視する考え方につながっています。
ヘルクレス座の12の冒険と他の星座との関連性は、人生における様々な試練とその克服を象徴するものとして、現代でも多くの人々に inspiration を与えています。しし座、うみへび座、かに座、りゅう座といった関連星座を夜空で探すことで、神話の物語を立体的に体験することができ、星座観察に深い意味を加えることができるでしょう。

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