主系列星とは、恒星の有効温度と明るさを示したHR図(ヘルツシュプルング・ラッセル図)上で、左上から右下に延びる主系列と呼ばれる帯状の領域に位置する恒星のことです。これらの恒星は、中心部で水素がヘリウムに変換される核融合反応をエネルギー源としており、恒星が一生のうち最も長い時間を過ごす段階でもあります。
参考)主系列星 - Wikipedia
HR図上に観測される恒星の大多数は主系列に沿った位置にあり、これは恒星が活動的な期間のほとんどを主系列星として過ごすためです。恒星のスペクトル分類と光度は、核で水素核融合を起こしている限り、主にその恒星の質量のみに依存するという特徴があります。
太陽もこの主系列星の一つであり、スペクトル型G2Vに分類される典型的な主系列星です。太陽の表面温度は約5800K、中心温度は約1550万Kで、質量は太陽の0.84倍から1.15倍程度のG型主系列星に該当します。
参考)太陽 - Wikipedia
主系列星では、質量が大きいほど光度も表面温度も高くなるという明確な関係性があります。この関係は質量光度関係と呼ばれ、光度は質量の3乗から4乗に比例するとされています。
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具体的には、太陽の10倍の質量を持つ主系列星の光度は、太陽の1000倍から1万倍にもなります。一方で、太陽の質量の半分程度のM型主系列星は、質量が約0.4倍、半径が約0.5倍と小さく、放つ光も非常に微弱です。
参考)「宇宙最大の星」はどの星なのか? - GIGAZINE
太陽は中心部で水素がヘリウムに融合される核融合反応を起こしており、1秒間に約3.8×10²⁶ジュールという膨大なエネルギーを放出しています。この核融合反応による膨張圧と重力が釣り合うことで、太陽は安定した輝きを保っているのです。
参考)太陽の進化:誕生から未来まで|理系大学生の日常
HR図上では、高光度・高温度の星から低光度・低温度の星へと帯状に並ぶため、これが主系列と呼ばれる理由となっています。
参考)HR図
主系列星として存在する時間は、星の質量に強く依存しており、大体質量の2乗から3乗に反比例します。太陽の主系列星としての寿命は約100億年と推定されており、現在は誕生から約46億年が経過し、主系列星として存在できる期間の半分を経過したと考えられています。
参考)星には寿命があるのでしょうか?
質量が大きい星ほど、核融合反応が激しく進むため、燃料である水素を早く使い果たしてしまいます。例えば、太陽の10倍の質量を持つ星の寿命は、太陽の100分の1から1000分の1、つまり1億年から1000万年程度と非常に短くなります。
参考)https://www.kouseisha.com/files/kyoku_solution/solution_c03s27.pdf
逆に、質量が小さい赤色矮星は寿命が非常に長く、太陽質量の10分の1の星では約1兆年もの寿命を持つと計算されています。これは、核融合反応がゆっくりと進行し、燃料を効率的に使用できるためです。
参考)https://members.elsi.jp/~hiro.kurokawa/lecture_files/Meiji_EarthPlanetaryPhysics_2022_09.pdf
恒星が一生のうち約90%の時間を主系列星として過ごすのに対し、次の段階である赤色巨星やヘリウム核融合の期間は比較的短期間です。
太陽のスペクトル型G2Vは、恒星の表面温度、光度、進化段階を示す重要な分類です。この表記において、「G」はスペクトル分類を、「2」は細分類の番号を、「V」は光度階級を示しています。
参考)G型主系列星 - Wikipedia
G型星は、スペクトル中に顕著なカルシウムのH線とK線を持つことが特徴で、これがG2で最大となります。太陽の表面温度は約5800Kで、G型主系列星の典型的な温度範囲である5300Kから6000Kの中に収まっています。
参考)スペクトル分類 - Wikipedia
光度階級「V」は主系列星を意味し、太陽が現在水素核融合を行っている活動的な段階にあることを示します。太陽は実際には白色であり、スペクトルのピークは青から緑の波長に位置していますが、地球の大気を通して見るとレイリー散乱の影響で黄色やオレンジに見えます。
参考)https://www.ncsm.city.nagoya.jp/cgi-bin/visit/exhibition_guide/exhibit.cgi?id=A509amp;key=%E3%81%BB
G型主系列星は太陽の0.84倍から1.15倍の質量を持ち、銀河系の中ではありふれた恒星の一つです。太陽近傍には、りょうけん座β星(G0V)やくじら座κ1星(G5V)といった他のG型主系列星も存在します。
太陽が主系列星でなくなるのは今から約50億年後のことで、その後赤色巨星へと進化します。中心部の水素が枯渇すると、星は重力収縮によって中心核が圧縮され、温度と圧力が上昇します。
参考)【主系列星→赤色巨星は何年後!?】太陽の進化をわかりやすく解…
この過程で、外向きのエネルギーが増加するため、時間の経過とともに恒星の外層は膨張を始めます。太陽は赤色巨星化すると、半径が現在の200倍にまで膨張し、その表面は水星、金星、場合によっては地球の軌道付近にまで達すると予想されています。
参考)残りあと50億年?「地球滅亡」に関する新たなシナリオ
赤色巨星となった太陽は、表面積が大きくなることで外層温度が低下し、表面が赤く見えるようになります。くじら座のミラやおうし座のアルデバラン、うしかい座のアークトゥルスなどが赤色巨星の代表例として挙げられます。
参考)おもしろい宇宙の科学(7)<恒星−その2>
その後、太陽は惑星状星雲の段階を経て、最終的には白色矮星となって一生を終えます。白色矮星は非常に高密度で小さく、もはや核融合を行わない恒星の残骸です。
参考)https://www.astr.tohoku.ac.jp/~saio/Astronomy/chap4.pdf
赤色巨星から白色矮星へ進化する過程で、太陽は質量の半分以上を失い、周囲に物質を放出します。地球が太陽に飲み込まれるか、蒸発するか、あるいは軌道を変えて生き残るかについては、さまざまな説が提唱されていますが、いずれにせよ現在の生命環境は維持できないとされています。
参考)http://arxiv.org/pdf/2405.09399.pdf