アークトゥルスの色とスペクトル型から見る赤色巨星の特徴

うしかい座の1等星アークトゥルスは、なぜオレンジ色に輝いているのでしょうか。星の色と表面温度の関係、他の赤色巨星との違い、春の夜空での見つけ方まで詳しく解説します。あなたはアークトゥルスの色の秘密を知っていますか?

アークトゥルスの色と特徴

この記事で分かること
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アークトゥルスの色

オレンジ色に輝く理由と表面温度の関係

赤色巨星としての性質

ベテルギウスやアンタレスとの違い

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春の夜空での見つけ方

北斗七星から春の大曲線をたどる方法

アークトゥルスのオレンジ色が示す表面温度

 

アークトゥルスは春の夜空でひときわ目を引くオレンジ色の1等星です。この美しいオレンジ色は、星の表面温度が約4000〜4600度程度であることを示しています。星は温度によって色が変化し、赤からオレンジ、黄色、白、青白へと温度が高くなるにつれて変化していきます。

 

参考)知っておきたい!春の1等星「アークトゥルス」「スピカ」「レグ…

オレンジ色の星の温度帯は3300〜4700度程度とされており、アークトゥルスはまさにこの範囲に該当します。一般的に「赤い方が熱そう」というイメージがありますが、実際の星の世界では逆で、青白い星ほど表面温度が高いのです。アークトゥルスの表面温度は太陽(約6000度)よりも低いため、オレンジがかった色調で輝いて見えます。

 

参考)[宇宙の豆知識]輝く星の色はなぜ異なるのか?|『宇宙兄弟』公…

スペクトル型による分類では、アークトゥルスはK型に属します。スペクトル型は星を表面温度の高い順に「O、B、A、F、G、K、M」型に分類したもので、K型は比較的低温の恒星グループです。このスペクトル型と色の関係により、天文学者は星の物理的性質を詳しく知ることができます。

 

参考)アークトゥルス|閏賀みつき

アークトゥルスと他の赤色巨星の違い

アークトゥルスは赤色巨星に分類されますが、同じ赤色巨星でもベテルギウスアンタレスとは異なる特徴を持っています。アークトゥルスの直径は太陽の約26倍、明るさは太陽の113倍とされています。一方、ベテルギウスやアンタレスは太陽の数百倍もの直径を持つ「赤色超巨星」と呼ばれる、さらに巨大な星です。

 

参考)https://turupura.com/guide/star/akuturusu.html

表面温度の面でも違いがあります。アークトゥルスが約4000〜4600度であるのに対し、より赤く見えるアンタレスは約3500度とさらに低温です。スペクトル型で言えば、アークトゥルスはK型、ベテルギウスやアンタレスは最も低温のM型に分類されます。このため、アークトゥルスはオレンジ色、ベテルギウスやアンタレスは赤色に見えるという違いが生まれます。

 

参考)天文宇宙検定受験講座「目指せ!星博士ジュニア!!」

年齢の面でも興味深い特徴があります。アークトゥルスの年齢は約71億年と推定され、太陽(約46億年)よりも古い年老いた星です。金属量も太陽の3割程度しかなく、種族IIの星に分類される古い世代の星であることが分かっています。質量は太陽の約1.08倍とほぼ同程度ですが、進化の過程で膨張した結果、現在の巨大なサイズになりました。

 

参考)アークトゥルス - Wikipedia

アークトゥルスを春の大曲線で見つける方法

アークトゥルスは北斗七星を目印にすると簡単に見つけられます。まず北の空を見上げて北斗七星を探し、ひしゃくの柄の部分にある3つの星が描くカーブをそのまま延長していきます。すると、オレンジ色に明るく輝く星にたどり着きます。これがうしかい座の1等星アークトゥルスです。

 

参考)おうちでコスモ

さらにそのカーブを延ばしていくと、青白い色をした明るい星が見つかります。これがおとめ座の1等星スピカです。北斗七星からアークトゥルス、スピカを結ぶこの大きな弧は「春の大曲線」と呼ばれ、春の星座探しの定番となっています。視等級マイナス0.05のアークトゥルスは、全天で4番目に明るい恒星であり、地球から約36〜37光年の比較的近い位置にあります。

 

参考)1等星から2等星まで明るい順に93個並べてみた[明るさランキ…

「アークトゥルス」という名前には「熊の番人」という意味があり、北斗七星があるおおぐま座の後ろで熊を追いかけるように夜空を巡ることから名付けられました。春の夜、東寄りの空にオレンジ色の明るい星を見つけたら、それがアークトゥルスである可能性が高いでしょう。

 

参考)うしかい座の探し方|星座を見つけよう

アークトゥルスとスピカが春の夫婦星と呼ばれる理由

オレンジ色のアークトゥルスと青白いスピカは、その色の対比から「春の夫婦星」と呼ばれています。アークトゥルスの男性的なオレンジ色とスピカの女性的な純白または青白い色が、まるで夫婦のように調和しているように見えるためです。この2つの1等星は春の大曲線上に並び、明るさと色の対照が見事です。

 

参考)春の夜空を彩るアーチ:春の大曲線|三菱電機 DSPACE

表面温度の違いがこの色の対比を生み出しています。アークトゥルスが約4000〜5000度であるのに対し、スピカは約20000度という高温の星です。この約4倍もの温度差が、オレンジ色と青白色という全く異なる色合いとして私たちの目に映ります。スピカはスペクトル型B型に分類される高温の星で、アークトゥルスのK型とは対照的な位置にあります。

 

参考)http://ww1.city.asakuchi.okayama.jp/museum/news/news0503.pdf

日本では古くから、アークトゥルスは麦の収穫時に見えるようになることから「麦星」とも呼ばれていました。また、珊瑚と真珠にたとえて「珊瑚星」と「真珠星」という呼び名もあります。このように、色の違いは単なる視覚的な美しさだけでなく、文化的な比喩や季節の目印としても活用されてきました。

 

参考)春の一等星 アークトゥルス:なよろ市立天文台 きたすばる

アークトゥルスが形成する春の大三角とは

アークトゥルスは春の大曲線だけでなく、「春の大三角」という星の並びも形成しています。春の大三角は、うしかい座のアークトゥルス、おとめ座のスピカ、そしてしし座レグルス(またはデネボラ)を結んでできる大きな三角形です。レグルスを使った場合は二等辺三角形のような形、デネボラを使った場合は正三角形に近い形になります。

 

参考)https://starwalk.space/ja/news/top-7-brightest-stars-in-the-sky

この3つの星は明るさと色がそれぞれ異なります。アークトゥルスは0等星でオレンジ色、スピカは1等星で青白色、デネボラは2等星で白色です。さらに、りょうけん座のコル・カロリを加えると「グレートダイヤモンド(大菱形)」という星の配置ができます。この菱形は春の夜空で非常に大きく、見つけやすい目印となっています。

 

参考)春の大三角と流星 - ぐんま天文台

春の大三角を構成する星々はそれぞれ異なる特徴を持っています。アークトゥルスは赤色巨星、スピカは高温のB型星、レグルスは青白い星です。このような多様な星々が織りなす幾何学的パターンは、天文観測の入門として最適であり、星座を学ぶ上で重要な指標となります。春の穏やかな夜に、これらの星の配置を確認することで、宇宙の広がりを実感できるでしょう。

 

春の1等星の特徴と見つけ方について詳しく解説(日本気象協会)
春の大三角の詳細な観測情報(Star Walk)
アークトゥルスの物理的特徴と科学的データ(Wikipedia)

 

 


アークトゥルス完全攻略ガイド (KadokawaGameCollection)