春の大三角は、うしかい座のアルクトゥルス、おとめ座のスピカ、しし座のデネボラを結んでできる大きな三角形です。この3つの星は、それぞれ異なる明るさと色を持ち、春の夜空を華やかに彩ります。ほぼ正三角形に近い形をしているため、一度見つければすぐに識別できる特徴があります。
参考)春の大曲線(だいきょくせん)、春の大三角(だいさんかく) -…
春の大三角は、4月頃に南東の空の高いところに見ることができ、午後10時ごろが観察に最適な時間帯です。北半球では春の訪れを告げる星の配置として古くから親しまれており、冬の大三角や夏の大三角と並んで、日本で広く知られる星の並びの一つとなっています。
参考)春の星空観察は北斗七星から、春の大曲線・春の大三角を探そう!…
アルクトゥルスは、春の大三角の中で最も明るい星で、全天でも4番目の明るさを誇る0等星です。うしかい座のα星として知られ、見かけの等級がマイナスとなる4つの恒星の1つで、単独の恒星としてはシリウス、カノープスに次いで3番目に明るく見えます。
この星の最大の特徴は、オレンジ色に輝く美しい色です。表面温度が約4600度と比較的低いため、このような色合いになっています。直径は太陽の26倍、明るさは太陽の113倍もある赤色巨星で、地球から約36.8光年の距離に位置しています。
アルクトゥルスという名前は、ラテン語で「熊の番人」という意味を持ちます。これは、うしかい座がおおぐま座を追いかけるように夜空を回ることに由来しています。霞んだ夜空でも見つけやすく、北斗七星から春の大曲線をたどることで容易に発見できます。
スピカは、おとめ座で最も明るい1等星で、全天でも15番目の明るさを持つ星です。青白く輝く美しい星で、日本では「真珠星」という雅な呼び名でも親しまれています。ラテン語で「麦の穂」を意味する名前の通り、おとめ座のモデルである女神が握る麦の穂先に位置する星として描かれています。
参考)https://starwalk.space/ja/news/spica-virgo-brightest-star
実は、スピカは単独の星ではなく、スピカAとスピカBという2つの星からなる二重星系です。これらの星は非常に近くを公転しているため、望遠鏡を通しても2つの星として識別することはできません。また、お互いの重力によって楕円形に歪んでいるという興味深い特徴を持っています。
おとめ座の神話では、スピカは女神デメテルやアストライアーが持つ麦の穂として描かれています。控えめながら白く輝くスピカは、女神が持つとがった麦の穂の先を表しており、英語の「スパイク(spike)」と同意語です。この星は、春の大曲線の重要な構成要素でもあり、北斗七星からアルクトゥルスを経てスピカへと続く美しいカーブを形成しています。
参考)おとめ座のスピカ
デネボラは、しし座のβ星として知られる2等星で、春の大三角を構成する3つの星の中で唯一の2等星です。アラビア語で「獅子の尾」を意味する名前の通り、しし座の尻尾の先端に位置しています。春の大三角の中では最も暗い星ですが、2等星であるため肉眼でも十分に見ることができます。
しし座には、デネボラのほかに心臓の位置に輝く1等星レグルスがあり、この2つはしし座を代表する星です。レグルスは「小さな王」という意味を持つ青白い星で、全天21個ある1等星の中では最も暗い星とされています。レグルスを使って春の大三角を形成する場合もあり、その場合はアルクトゥルス、スピカ、レグルスを結んだ、より大きな三角形になります。
参考)https://starwalk.space/ja/news/spring-triangle-asterism
デネボラから西に目を向けると、レグルスから上に伸びた「?」を逆にしたような星の並びが見えます。この特徴的な星の並びは「ししの大鎌」と呼ばれ、しし座の頭部を形作っています。デネボラは春の大曲線の円弧の中心あたりに位置しており、アルクトゥルスとスピカから西に正三角形を描くように探すと見つけやすくなります。
参考)春の星座 しし座にまつわるお話
春の大三角を見つける最も簡単な方法は、まず北斗七星を探すことです。北斗七星は、季節を問わず一年中見ることができますが、特に春の宵の口にきれいに見え、他の春の星座を探す手がかりにもなります。北の空から天頂にかけて柄杓(ひしゃく)の形をした7つの星を見つけたら、その柄の部分のカーブをそのまま南の空へ伸ばしていきます。
参考)北斗七星から始まる春の大曲線と大三角形の見つけ方
カーブを伸ばしていくと、まずオレンジ色に明るく輝くアルクトゥルスが見つかります。さらにカーブを進めると、青白く輝くスピカに到達します。この北斗七星からアルクトゥルス、スピカへと続く大きなカーブは「春の大曲線」と呼ばれ、春の星座探しの定番となっています。
参考)【春の星座10選】北斗七星や春の大曲線など有名な星の見つけ方…
次に、アルクトゥルスとスピカを底辺として、西の方向に正三角形をつくるようにデネボラを探します。春の大曲線の円弧を円と見立てると、その中心あたりにデネボラが位置しています。この3つの星を結ぶことで、ほぼきれいな正三角形の春の大三角が完成します。
参考)目印は北斗七星!「春の大曲線」「春の大三角」から発見するダイ…
春の大三角は、その名の通り春の時期に観察するのが最適です。具体的には、春分の日(3月下旬)頃から空に現れ始め、4月に最もよく見えるようになります。4月は午後10時頃、5月は午後8時頃に、南東の空の高いところに見ることができます。この時期、春の大三角は夜空で高く昇り、観察に最適な位置に達します。
参考)http://www.j-pca.net/haru/sizen/2103/daisankakkei2.htm
方角としては、まず北の空で北斗七星を見つけ、そこから南の空へ視線を移していくのが基本です。アルクトゥルスとスピカは南の空に輝き、デネボラはやや西寄りに位置します。春の大三角は北半球・南半球の両方から見ることができますが、特に北半球の春の時期には空の高い位置にあり、非常に見つけやすくなります。
参考)『春の大曲線』と『春の大三角』を使って春の星座を見つけよう!…
夜空の条件も重要な要素です。新月期前後の月明かりが少ない時期を選ぶと、より多くの星が見え、春の大三角をはっきりと観察できます。都心から離れた高原など、空が暗い場所に行くと、さらに美しい星空を楽しむことができます。また、春の大三角の領域には黄道が通っているため、月や惑星がこの周辺を通過することがあり、特別な天体ショーを楽しめる機会もあります。
参考)星空写真の色々な楽しみ方をご紹介! - 山と写真と毎日と
春の星座を観察する際は、星座早見盤やスマートフォンの星空アプリを活用すると、より簡単に目的の星を見つけることができます。冬の大三角も南西に見えているため、両方を比較しながら観察するのも楽しみ方の一つです。
春の大三角の見つけ方とカーブの詳細な解説(ケンコー・トキナー公式サイト)
子ども向けの春の星空観察ガイド(るるぶKids公式サイト)