楕円銀河と渦巻銀河の違い|形状・星・色で見分ける

楕円銀河と渦巻銀河の違い

楕円銀河の形状と構造の特徴

 

楕円銀河は、その名の通り球形から楕円形まで様々な形状を持つ銀河です。エドウィン・ハッブルが提唱したハッブル分類では、E0（ほぼ球形）からE7（非常に扁平な楕円形）まで細かく分類されています。

 

参考）“うお座”で共演する楕円銀河と渦巻銀河の輝き
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楕円銀河の最大の特徴は、渦巻銀河のような明確な渦状腕や円盤構造を持たないことです。内部の星々は規則的な回転運動ではなく、ランダムな軌道運動をしており、これが楕円形の外観を作り出しています。

 

参考）http://astro.u-gakugei.ac.jp/~nishiura/MEMO/2016-aegairon-nishiura-01x6.pdf
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観測では、一部の楕円銀河に「シェル構造」と呼ばれる同心円状の淡い構造が見られることがあります。この構造は銀河の中心から遠く離れたところまで巻きひげのように広がっており、過去の銀河合体の痕跡と考えられています。質量は太陽質量の100万倍程度の小型の矮小楕円銀河から、1兆倍を超える巨大なものまで幅広く存在します。

 

参考）楕円銀河(ダエンギンガ)とは？ 意味や使い方 - コトバンク
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渦巻銀河の渦状腕とバルジの構造

渦巻銀河は、中心部の膨らんだ「バルジ」と、その周囲を取り巻く薄い円盤構造を持つ銀河です。円盤部分には、明るく目立つ渦状腕（渦巻腕）が存在し、これが渦巻銀河の最も特徴的な要素となっています。

 

参考）https://kai-kuu.jugem.jp
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渦巻腕の形状は銀河によって極めて多様で、はっきりとした2本の腕を持つものから、ぼんやりとした腕を数本持つものまで様々です。ハッブル分類では、通常の渦巻銀河（S）と中心に棒状構造を持つ棒渦巻銀河（SB）の2つの系列に分類されます。

 

参考）ハッブル分類
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渦巻腕には電離水素領域や暗黒星雲が存在し、渦巻銀河の主要な星生成の場となっています。円盤部分の恒星とガスは回転運動をしていますが、バルジの恒星は楕円銀河と同様にランダム運動をしています。興味深いことに、バルジは楕円銀河の小型版のような性質を持っており、古い星が多く集まっています。

 

参考）渦巻腕
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楕円銀河と渦巻銀河の星の年齢と色の違い

星の年齢に注目すると、楕円銀河と渦巻銀河には明確な違いが見られます。楕円銀河には古い星が多く、ガスや暗黒星雲がほとんど存在しないため、色は赤く見えます。これは年齢の古い種族Ⅱの星のみから構成されているためで、新しい星の形成活動はほとんど行われていません。

 

参考）楕円銀河 - Wikipedia
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一方、渦巻銀河では星形成活動によって若い星が絶えず誕生しており、明るく青い大質量の星が含まれるため、全体が青白く見えます。特に渦巻腕の部分では、ガス同士が衝突してガスの密度が高まることで青い星が生まれやすくなっています。

 

参考）http://phys.koshigaya.bunkyo.ac.jp/~masa/lecture/MNagashima091012.pdf
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この色の違いは天体観測でも確認できる重要な特徴です。ガスが供給されずに星形成が止まった銀河は、時間とともにだんだん赤くなっていきます。楕円銀河のディスクの色指数を調べた研究では、楕円銀河のディスクは渦巻銀河より赤く、レンズ銀河より若干赤いことが確認されています。

 

参考）https://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/RESEARCH/symp2006/pdf/mizuno.pdf
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楕円銀河の形成と銀河合体のプロセス

楕円銀河の形成メカニズムについては、長年の研究により大きく理解が進んできました。エドウィン・ハッブルは当初、楕円銀河が渦巻銀河へ進化すると考えていましたが、これは誤りであることが判明しています。
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現在の理論では、楕円銀河は様々なタイプの小さな銀河が長い時間をかけてより大きな銀河へと衝突・合体した結果作られたと考えられています。銀河同士が合体する過程で、公転している恒星の軌道がずれてランダム運動が大きくなり、楕円形になるという説もあります。

 

参考）https://www.asj.or.jp/jsession/2018haru/files/12T.pdf
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最近の研究では、初期宇宙の銀河のデータから、渦巻銀河のバルジや楕円銀河を形づくる構造が爆発的な星形成で作られるという強い証拠が見つかっています。天の川銀河でも、80億～100億年前に衝突合体した銀河の痕跡が複数発見されており、銀河進化における合体の重要性が確認されています。

 

参考）楕円銀河の構造が作られる現場をサブミリ波でとらえた - アス…
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質量の大きい楕円銀河は合体が盛んに起きた可能性があり、楕円銀河は渦巻銀河よりも質量が大きいという傾向が観測されています。実際、天の川銀河とアンドロメダ銀河も約40億年以内に衝突する可能性があり、その結果として新たな楕円銀河が形成されると予測されています。

 

参考）銀河系とアンドロメダ銀河の衝突合体 - Wikipedia
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楕円銀河の星形成活動と観測の意外な発見

楕円銀河は古い星ばかりで新しい星が生まれないと長年考えられてきましたが、観測技術の進歩により意外な事実が明らかになってきました。年老いた軽い星ばかりで構成される楕円銀河は、星の材料となる低温ガスが不足しているために新しい星が形成されないと考えられてきましたが、赤外線天文衛星の観測により、一部の楕円銀河には星形成の材料があることが判明しました。

 

参考）https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/8540
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さらに驚くべきことに、特定の楕円銀河では電波ジェットによって星形成活動が誘発される現象も観測されています。NASAの観測によれば、「ミンコフスキーの天体」は形成されてから約750万年が経っているとみられており、その星形成活動を誘発したのは近傍の楕円銀河NGC 541の電波ジェットでした。

 

参考）見えざるジェットで星形成活動を誘発させた楕円銀河
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また、銀河の進化と形態の関係について、従来の理論を覆す発見もありました。理論的には楕円型の銀河の方が星形成効率が低くなるはずでしたが、グリーンバレー銀河の星形成効率は銀河の形態に依っておらず、ほぼ一定の効率を持っていることが分かりました。これは「銀河は見かけによらない」という、銀河進化の定説をくつがえす重要な発見です。

 

参考）銀河は「見かけ」によらない？ 銀河進化の定説くつがえす発見
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渦巻銀河とハッブル分類の観測方法

銀河の形態を分類するハッブル分類は、現在でも銀河研究の基本となっています。この分類法では、銀河は楕円銀河（E）と渦巻銀河（S）に大別され、さらに渦巻銀河は通常の渦巻銀河（S）と棒渦巻銀河（SB）の2つの系列に分類されます。

 

参考）http://galaxy.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/guide/hubble.htm
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天体望遠鏡で銀河を観測する際、口径が大きくF値の小さい望遠鏡が適しています。特にニュートン式反射望遠鏡でF5くらいの望遠鏡が向いており、口径12センチ以上あれば銀河、星雲、星団の観測に有利です。

 

参考）天体望遠鏡でDSO(銀河・星雲・星団)を見る方法【天体観測の…
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渦巻銀河の詳細な分類では、渦巻腕の形状（腕の顕著さ、本数、巻き込み具合など）が重要な指標となります。最近の統計分析では、5093個の青い渦巻銀河を形態分類した結果、フロキュレント型（綿毛状）が38±1%、多腕型が59±1%、グランドデザイン型（明確な腕）が3±1%であることが判明しました。

 

参考）A New Statistical Analysis of …
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ハッブル分類の詳細と銀河の種類について - 天文学辞典
銀河の形態分類の基本となるハッブル分類について、楕円銀河、レンズ状銀河、渦巻銀河、棒渦巻銀河、不規則銀河の詳細な解説が掲載されています。

 

うお座で共演する楕円銀河と渦巻銀河の実際の観測画像 - sorae
楕円銀河NGC 474と渦巻銀河が隣り合って見える観測画像と、それぞれの特徴的な構造について詳しく解説されています。

 

 

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