かみのけ座神話と構成する星の見つけ方

かみのけ座神話と構成する星

かみのけ座神話：ベレニケ王妃の美しい髪

 

かみのけ座の神話は、古代エジプトのプトレマイオス朝に遡ります。 プトレマイオス3世が紀元前243年頃にセレウコス朝シリアへ遠征した際、王妃ベレニケ2世は夫の無事な帰還を祈り、自分の美しく有名な髪を女神アプロディーテに捧げることを誓いました。 夫が無事に帰還すると、ベレニケ2世は誓い通りに髪を切って神殿に供えましたが、翌朝にはその髪が消えていました。

 

参考）かみのけ座 - Wikipedia
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王と王妃は激怒し、神官たちが死刑を覚悟する事態となりました。 このとき、天文学者コノンは機転を利かせて「神は王妃の行いと髪の美しさに感動し、空に上げて星座にした」と告げ、しし座の尾の部分を指し示したのです。 この物語は、プトレマイオス3世に仕えたヘレニズム期の宮廷詩人カリマコスによって詩「Lock of Berenice」として神話化され、後にラテン語に翻訳されて広まりました。

 

参考）「かみのけ座」になったベレニケ２世の美髪
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ベレニケ2世は単なる伝説上の人物ではなく、実在した王妃です。 彼女はキュレネ王女として生まれ、プトレマイオス3世の唯一の妃として、優れた統治能力を発揮しました。 夫の不在中は統治者として5年もの間エジプトを治め、プトレマイオス朝の全盛期を築いた有能な女性でした。
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かみのけ座構成する星：散開星団メロッテ111

かみのけ座の最大の特徴は、その大部分が散開星団メロッテ111（Mel. 111）によって構成されている点です。 これは星を結んで形を作る一般的な星座とは異なる、極めて珍しい星座です。 メロッテ111は約40個の星から成る散開星団で、地球から288光年という比較的近い距離にあるため、夜空に大きく広がって見えます。

 

参考）かみのけ座｜やさしい88星座図鑑
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この星団は1915年にイギリスの天文学者メロッテが星団のカタログに載せるまで、星団としては認識されていませんでした。 それまでは単なる暗い星の集まりと考えられていたのです。 プトレマイオスはこれらの星を髪の房や三つ編みを意味する「プロカモス」と呼び、「ツタの葉のような形」と表現していました。

 

参考）かみのけ座とは？見つけ方や見どころ
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散開星団とは、同じガスや塵の雲から生まれた数十個から数百個の若い星の集団を指します。おうし座のヒアデス星団に次いで、メロッテ111は私たちに近い大きな星団として知られています。 肉眼でも約70個の星を確認できるとされていますが、多くは4等星以下の暗い星です。

 

参考）http://www5a.biglobe.ne.jp/~m-hokuto/coma.html
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かみのけ座α星ディアデムと主要な星

かみのけ座の主要な星には、α星ディアデム、β星、γ星があります。興味深いことに、バイエル符号のα（アルファ）は通常その星座で最も明るい星に付けられますが、かみのけ座ではα星は4.32等級でβ星よりも暗いという逆転現象が起きています。

 

参考）かみのけ座アルファ星 - Wikipedia
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α星ディアデム（Diadem）は、太陽系から約58.1光年の距離にある連星系で、見かけの明るさ4.80等のA星と5.48等のB星から構成されています。 「ディアデム」という固有名は冠の一種を意味し、ベレニケ2世の冠を表していると言われています。 2017年2月1日に国際天文学連合によって正式に承認された固有名です。

 

参考）かみのけ座アルファ星とは - わかりやすく解説 Weblio…
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β星は実際にはかみのけ座で最も明るい恒星で、約4.26等級です。 通常β（ベータ）は2番目に明るい星に与えられるため、これも命名の逆転例となっています。γ星は太陽系から約164光年の距離にある赤色巨星で、見かけの明るさ4.34等、かみのけ座で2番目に明るい恒星です。 γ星は散開星団メロッテ111の中にあるように見えますが、実際には星団より100光年以上太陽系に近い位置にあり、星団には属していません。

 

参考）かみのけ座ベータ星とは - わかりやすく解説 Weblio辞…
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かみのけ座見つけ方と観測時期

かみのけ座は春の星座で、5月28日頃に20時に南中します。 探し方にはいくつかの方法があります。まず、春の夜空でうしかい座のアークトゥルス、おとめ座のスピカ、しし座のデネボラを結んだ「春の大三角」を見つけます。 この大三角と北斗七星の間を探すと、大三角に近いところに星が集まっているのが分かります。

 

参考）星座八十八夜 #83 きらりと輝く散開星団が目印「かみのけ座…
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より詳細には、りょうけん座のコル・カロリ、うしかい座のアークトゥルス、しし座のデネボラでつくった三角形の中に輝く星の群れがかみのけ座です。 また、アークトゥルス、スピカ、デネボラ、コル・カロリの4星を繋いだ四辺形「春のダイヤモンド」に囲まれるように位置しています。
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かみのけ座を構成する個々の星を見つけるには、まず散開星団の中心付近にあるγ星を探し、そこから東にげんこつ1つ分の所に4等星のβ星が見つかります。 さらにβ星から南にげんこつ1つ分の所に、4等星のα星ディアデムが見つかります。 正中高度は約77度と高い位置にあるため、春の夜空で観測しやすい星座です。

 

参考）http://www.ksky.ne.jp/~tatsuo/siki/5gatu/003.htm
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かみのけ座と銀河北極：天文学的な重要性

かみのけ座は天文学的に極めて重要な位置にあります。この星座の方向は、天の川銀河の「銀河北極」にあたり、銀緯90度に位置しています。 銀河北極とは、天の川銀河の公転面に対して垂直な方向を指します。銀河系を構成する物質は公転面に集まっているため、かみのけ座の方向は天の川銀河内の星が最も少なく見える方向なのです。

 

参考）https://star-party.jp/wp/2013/05/18/%E6%98%A5%E3%81%AE%E6%98%9F%E5%BA%A7%E3%80%80%EF%BC%8D%E3%81%9D%E3%81%AE10%EF%BC%8D%E3%80%80%E3%81%8B%E3%81%BF%E3%81%AE%E3%81%91%E5%BA%A7/
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この特性により、かみのけ座は銀河面から離れた位置にあるため明るい星は少ないものの、星間物質も少ないため天の川銀河外の遠方銀河の観測には最適な領域となっています。 実際、かみのけ座の方向には「かみのけ座銀河団」という巨大な銀河の集団が観測されています。

 

参考）かみのけ座銀河団 - Wikipedia
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かみのけ座銀河団は、地球から平均3.21億光年の距離にある銀河団で、中央の領域は2つの巨大楕円銀河NGC 4874とNGC 4889により支配されています。 この銀河団では、2015年に800個以上もの超暗黒銀河が発見され、天文学界で大きな注目を集めました。 かみのけ座は、神話的なロマンスだけでなく、現代天文学においても重要な観測窓となっているのです。

 

参考）https://www.semanticscholar.org/paper/175230ee8bba41b6e6f0594693382b50f2b11d4c
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かみのけ座に関する意外な歴史的事実

かみのけ座には一般にはあまり知られていない興味深い歴史があります。古代ギリシャの天文学者エラトステネスは、この星々について2つの異なる説を記録していました。 1つは現在知られているベレニケ2世の髪束であるとする説で、しし座の節で「ライオンの上方（北）に見える7つの暗い星は、ベレニケの髪束である」としました。
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もう1つの説は、クレーテーの王女アリアドネーの髪束であるとする説で、かんむり座の節の中で「ライオンの尾の下にある髪の束もまたアリアドネーのものである」と記述しています。 つまり、同じ星の集まりが、ベレニケとアリアドネという2人の異なる女性の髪として語られていた時代があったのです。
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さらに、1世紀初頭の古代ローマの著作家ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスは、著書「天文詩」のしし座の節の中で、しし座そのものについてよりも多くの紙幅を割いてこの星々がベレニケの髪束であることを説明しています。 これは当時、かみのけ座の物語がいかに有名で重要視されていたかを示す興味深い記録です。
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古代中国の天文学では、かみのけ座の星々は「太微垣」という星官に配されていました。 α星は「太微左垣」の東上将に、γ星を含む複数の星が天子側近の護衛官を表す「郎位」に配されるなど、宮廷の官職を表す星として扱われていました。 東洋と西洋で全く異なる解釈がなされていた点も、文化の多様性を感じさせる要素です。
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かみのけ座の詳細な特徴と歴史について - Wikipedia
かみのけ座の神話と見つけ方の基本情報 - スタディスタイル
かみのけ座の散開星団と見どころの詳しい解説 - アストロアーツ

 

 

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