コップ座は4等星と5等星という暗い星々で構成される小さな星座です。最も明るい恒星はδ星(デルタ星)で、視等級3.56等のK0型巨星となっています。この星座を形作る主要な星々は、杯の形を表現するように配置されていますが、都会の明るい空では全く見えないほど控えめな輝きです。
参考)https://ryutao.main.jp/mythology_39.html
コップ座の主要構成星を明るさ順に並べると以下のようになります。
興味深いことに、通常の星座ではα星が最も明るいことが多いのですが、コップ座ではδ星が最も明るく、α星は3番目の明るさとなっています。α星には「アルケス」という固有名があり、これは「杯」を意味するアラビア語に由来します。
コップ座は古代ギリシアで作られた星座で、その起源はプトレマイオスの48星座の一つに数えられるほど古い歴史を持ちます。この星座のコップは現在使われているような小さなコップではなく、耳飾りの付いた大きな杯の形で描かれています。
参考)https://seiza.imagestyle.biz/sinwa/koppu.shtml
最も有名な神話では、このコップはギリシア神話の酒神ディオニュソス(バッカス)が愛用していた杯だとされています。ディオニュソスは大神ゼウスとテーバイ王の娘セメレとの間に生まれた半神半人の若者で、実際には美しい青年として描かれ、大酒飲みというわけではありませんでした。テーバイ地方はブドウの産地で、当時ワインは薬としても用いられていたため、ディオニュソスは酒の神様として崇められるようになりました。
ディオニュソスにまつわる有名な物語では、海賊に捕らえられた彼が神の力を発揮する場面が語られています。海賊たちがディオニュソスを縛り上げると、縄は自然にほどけてブドウのつるへと変化し、海に逃げようとした海賊たちはイルカへと姿を変えられました。このイルカたちは後に琴の名人アリオンを助けたとされ、いるか座の由来にもなっています。
コップ座にはディオニュソスの杯以外にも、太陽神アポロンが使っていた杯だという説も伝えられています。この神話は隣接するからす座の神話と深く結びついており、アポロンとカラスの関係性を物語る重要な要素となっています。
参考)春の夜空の知られざる名星座。からす座とコップ座の由来とは?(…
アポロンの使いであったカラスは、もともと雪のように白く美しい羽を持ち、人間の言葉を話すこともできる賢い鳥でした。しかし、口数が多く軽率で、話を誇張したり嘘をつく欠点がありました。アポロンはこのカラスをテッサリアの女王コローニスに与えましたが、カラスの誤った報告によって悲劇が起こります。
参考)https://news.livedoor.com/article/detail/23967799/
コローニスが他の男性と親しく話しているところを目撃したカラスは、すぐさまアポロンに密会していると報告しました。激怒したアポロンは矢を放ちますが、それは誤解で、矢を受けたのは恋人のコローニス自身でした。死の直前にコローニスは誤解だと訴え、お腹の子どもを育てて欲しいと託しました。この子どもが後の医術の神アスクレピオスです。
参考)からす座の神話!恋人を引き裂いた鳥の物語!!
アポロンは誇張した報告をしたカラスに激怒し、白く輝く羽を醜い黒に染め、人間の言葉を奪い、天に上げて星座としました。さらに、からす座の右側にコップ座を配置しましたが、鳥のくちばしではコップの中の水に届かないため、カラスは一生喉の渇きを潤すことができないという罰を受けたとも伝えられています。
コップ座の起源には、アルゴー船の冒険で知られる王女メディアの杯だという別の説も存在します。メディアはコルキス王の娘で、魔物の血を引き、魔術を操る知識を持っていました。彼女はアルゴー船の冒険で英雄イアソンと出会い、魔術で調合した薬などを使って冒険の勝利に貢献しました。
参考)コップ座の神話を紹介します
メディアの物語では、彼女が薬草などを煮るために使った鍋や杯がコップ座になったとされています。この神話はアルゴー船座の伝説と深く関連しており、古代の航海物語と星座の結びつきを示す興味深い例となっています。
参考)http://azfa2.jp/tenmondai/hosinoshasin/seiza/haru/cup.html
さらに別の伝承では、酒造りの名人であったイカリオス王に関する物語も伝えられています。ディオニュソス神から酒造りの技術を授かったイカリオス王は、自らの作った酒を国民に振る舞いました。しかし、酔った人々が毒を盛られたと誤解して王を殺害してしまい、悲しんだディオニュソス神が王の思い出に贈った杯を星座にしたという説もあります。この物語は、こいぬ座の由来ともつながっています。
コップ座は春の星座として、3月から5月頃の夜空に見ることができます。この星座は、うみへび座の背中に乗るように描かれており、からす座の隣に位置しています。4等星以下の暗い星で構成されているため、都会の明るい空では観測が困難ですが、うみへび座の尻尾あたりを頼りにすれば比較的簡単に見つけることができます。
参考)コップ座|やさしい88星座図鑑
具体的な見つけ方としては、おとめ座の1等星スピカと、うみへび座の2等星アルファルドを線で結んだ真ん中あたりに注目します。あるいは、春の大三角形を形成するアークトゥルス、デネボラ、スピカの配置を基準にすると探しやすくなります。コップ座は六角形と四角形を組み合わせたような形をしており、うみへび座の背に乗っているイメージで探すとよいでしょう。
参考)コップ座とは?見つけ方や見どころ
コップ座の観測に適した条件は以下の通りです。
暗い星座ではありますが、からす座の四つ星とセットで覚えることで、春の夜空の楽しみが広がります。からす座は日本でも古くから注目されてきた星座であり、冬の三つ星オリオンに対比する春の四つ星として知られています。
コップ座は小さく目立たない星座ですが、天文学的には興味深い天体を含んでいます。コップ座領域にはNGC 3511とNGC 3513というペアで観測できる銀河があり、望遠鏡を使えば観測を楽しむことができます。これらの銀河は、アマチュア天文家にとって春の観測対象として人気があります。
参考)Crater(コップ座)について知ろう!【神々の盃が輝く春の…
コップ座に含まれる恒星の中には、太陽系外惑星を持つ星も発見されています。HD 96167という8等級の恒星は、G5型の主系列星で、地球から273光年の距離にあり、惑星系を持つことが確認されています。このような発見は、かつては目立たないとされていた星座領域にも、現代天文学の研究対象となる重要な天体が存在することを示しています。
コップ座β星は、かつて分光標準星として利用されていた重要な恒星です。スペクトル型A1 IIIに分類されるA型巨星で、視等級4.46等の明るさを持ちます。固有名の「アル・シャラシフ」はアラビア語に由来しており、古代から天文観測の基準として用いられてきた歴史を物語っています。
参考)コップ座ベータ星とは - わかりやすく解説 Weblio辞書
中国の星官においても、コップ座の星々は「翼宿(よくしゅく)」という星官を構成する一部として認識されてきました。これは、星座の文化的解釈が地域によって異なることを示す興味深い例です。西洋ではディオニュソスやアポロンの杯として神話化されたこの星々が、東洋では翼という全く異なるイメージで捉えられていたのです。
参考)コップ座ベータ星 - Wikipedia
アストロアーツのコップ座解説記事では、観測方法や見どころについて詳しく紹介されています
現代の光害が進んだ環境では、コップ座のような暗い星座を観測することは困難になっていますが、だからこそ暗い空の下で星座を探す喜びは格別です。プトレマイオスの48星座の一つとして2000年以上の歴史を持つこの星座は、古代の人々が夜空に描いた物語を現代に伝える貴重な文化遺産といえるでしょう。春の夜、うみへび座の背中に乗る小さな杯を探してみることで、古代ギリシアの神話世界と星空のつながりを感じることができます。

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