かじき座神話と構成する星の由来や観測方法を解説

かじき座神話と構成する星

かじき座の由来と歴史的背景

 

かじき座は、1595年から1597年にかけての東インド航海において、オランダの航海士ペーテル・ケイセルとフレデリック・デ・ハウトマンが南天の星々を観測した記録に基づいて設定されました。その後、1598年にフランドル生まれのオランダの天文学者ペトルス・プランシウスが、航海者たちの観測記録を元にヨドクス・ホンディウスと協力して天球儀を製作し、翼のある魚を追うDoradoという魚の姿を描きました。

 

参考）かじき座 - Wikipedia
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この星座は1603年にドイツの法律家ヨハン・バイエルが出版した星図『ウラノメトリア』で世に知られるようになりましたが、実際の考案者はケイセルとデ・ハウトマンとされています。バイエルが新たに設定した星座と誤解されることがありますが、彼は既存の観測記録を星図にまとめて広めた功績者といえるでしょう。

 

参考）かじき座ってどんな星座？【神話も紹介】
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かじき座が設定された16世紀末は、大航海時代の真っ只中で、ヨーロッパの航海者たちが南半球の未知の海域を探検していた時期にあたります。彼らは航海中に南天の星々を観測し、それまでヨーロッパでは知られていなかった新しい星座を次々と考案しました。

 

参考）http://gvo.gamedb.info/wiki/?Discovery%2FAstronomy
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かじき座に神話が存在しない理由

かじき座には古代ギリシャ神話や他の伝統的な神話が存在しません。これは、かじき座が16世紀末という比較的新しい時代に設定された星座だからです。

 

参考）かじき座｜やさしい88星座図鑑
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古代から知られていた北天の星座の多くは、ギリシャ神話や他の古代文明の物語と結びついています。これらの星座は数千年にわたって人々の想像力を刺激し、神話や伝説が語り継がれてきました。一方、かじき座をはじめとする南天の星座は、大航海時代以降に設定されたため、古代の神話体系に組み込まれることはありませんでした。

 

参考）https://dic.pixiv.net/a/%E3%81%8B%E3%81%98%E3%81%8D%E5%BA%A7
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しかし、神話がないことは決して魅力に欠けることを意味しません。かじき座は大航海時代という歴史的背景を持ち、人類の探検精神と天文学の発展を象徴する星座として独自の価値を持っています。また、かじき座には大マゼラン雲やタランチュラ星雲といった天文学的に重要な天体が含まれており、現代の天文学研究において重要な役割を果たしています。

 

参考）かじき座とは何？ わかりやすく解説 Weblio辞書
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かじき座を構成する主な星の特徴

かじき座は3等星や4等星の暗い星々から構成される控えめな星座です。平仮名の「へ」の字を平べったくしたような、あるいは細長い菱形のような形で星図に描かれています。

 

参考）かじき座とは？見つけ方や見どころ
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かじき座α(アルファ)星は、かじき座で最も明るい恒星で、見かけの明るさは3.28等星です。この星は実際には2つの恒星からなる連星系で、視等級は3.26等から3.30等まで変化します。青白色のB型巨星に分類され、地球からおよそ170光年の距離にあります。固有名などの別名は付けられていませんが、かじき座を見つける際の重要な目印となる星です。
参考）かじき座
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かじき座β(ベータ)星は見かけの明るさが3.76等の超巨星で、実際には連星系を成しています。この星は変光星として知られており、3.8等から5.8等まで明るさが変化し、その周期は9.84日です。主星は青白色の巨星で、かじき座で2番目に明るい星として観測されています。
参考）南半球の星座「かじき座」を紹介します。
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かじき座γ(ガンマ)星は見かけの明るさが4.20等のF型主系列星です。比較的若い恒星で、青白色に輝いており、視等級は4.25等とされることもあります。この星もかじき座の菱形の形を作る重要な構成要素の一つです。​
その他にも、かじき座δ(デルタ)星は視等級4.35等の複数の星からなる多重星系として知られています。また、かじき座R星やかじき座S星、かじき座AB星なども観測されており、特にかじき座AB星は太陽系から約49光年離れた四重連星系として注目されています。

 

参考）かじき座AB星 - Wikipedia
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かじき座の大マゼラン雲とタランチュラ星雲

かじき座の領域内には、肉眼でも白い雲のように見える大マゼラン雲があります。大マゼラン雲は地球からおよそ16万光年の距離にある銀河系の伴銀河(衛星銀河)で、天の川銀河の質量の10～20％程度の大きさを持っています。双眼鏡や小型の望遠鏡で眺めると、その美しさに時間が経つのも忘れてしまうほどです。

 

参考）まるで天界の光景？　ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したタランチュラ…
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大マゼラン雲は、かじき座とテーブルさん座にまたがって存在していますが、ほとんどはかじき座の領域内にあります。この伴銀河には新たな星を生み出す星形成領域が幾つも存在しており、現代天文学の重要な観測対象となっています。

 

参考）https://seiza.imagestyle.biz/minami/kajiki.shtml
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大マゼラン雲の中でも特に注目されるのが、タランチュラ星雲(別名かじき座30、NGC2070)です。この散光星雲は全天でも一番美しいといわれる天体で、HII領域の輝線星雲として知られています。タランチュラ星雲の中心には太陽の150倍以上、場合によっては200倍以上にもなる大質量星が複数存在しており、星形成の過程を研究するのに最適な場所とされています。

 

参考）タランチュラ星雲 - Wikipedia
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欧州宇宙機関(ESA)の研究者グイド・デ・マルチは、タランチュラ星雲が多くの星々が誕生した100億年前の宇宙の特性を備えていると述べており、イリノイ大学の教授トニー・ウォンは、タランチュラ星雲が今日においても星形成活動を行えているのは天文学における大きな謎のひとつとしています。これまでタランチュラ星雲では80万個以上の星の形成があったと試算されています。
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かじき座の名前に隠された意外な真実

かじき座の学名「Dorado」は、実はラテン語で「シイラ」を意味しています。シイラはカジキとは全く異なる魚で、この不一致には興味深い歴史的経緯があります。
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元々この星座は「シイラ座」として設定されていました。シイラが陸揚げされるときに金色に輝くことから、ラテン語で「金」を意味する言葉に由来して「Dorado」という名前が付けられたのです。しかし、1627年にケイセルの観測を元にヤコブス・バルチウスが作成した南天星表では、「カジキ」を意味する「Xiphias」と表記されていました。
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さらに、ヨハン・ボーデが1801年に作成した星図「ウラノグラフィア」でも「Xiphias」の名前で、口吻の長いカジキの姿が描かれていました。このように、名前と実際に描かれている魚の姿が食い違う状況が続いていたのです。
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国際天文学連合が星座の名称を統一する際、最初に名づけられた「Dorado」(シイラ)を正式な学名として採用しましたが、星図にはカジキの姿がそのまま描かれることになりました。この結果、「シイラ」という名前を持ちながら「カジキ」の姿で表現されるという、やや矛盾した状況が現在も続いています。
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この混乱は、翻訳の不正確さや当時の魚類分類の曖昧さに起因していると考えられています。元々は「金魚」を指していたなどとも言われており、明確な語源や成り立ちは不明となっています。しかし、この名前をめぐる混乱も、かじき座の独特な魅力の一つといえるでしょう。

 

参考）星座八十八夜 #55 実は違う魚！？「かじき座」 - アスト…
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かじき座の観測方法と見つけ方

かじき座は南天の星座であるため、日本のほとんどの地域では観察することができません。沖縄県の石垣島よりも南の地域、つまり南端の沖ノ鳥島であれば星座全体がギリギリで見える程度で、日本から観測するのは非常に困難です。

 

参考）https://ryutao.main.jp/mythology_20.html
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かじき座をしっかりと観測するためには、オーストラリアやニュージーランドなど南半球の国々を訪ねる必要があります。南半球では1月の21時頃、あるいは1月下旬の20時頃が見ごろの時期となります。より正確には、11月上旬21時頃、9月中旬0時頃、8月上旬3時頃がシドニー近郊での観測に適した時間帯です。
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かじき座を見つける際の目印は、全天で2番目に明るい1等星であるりゅうこつ座のα星カノープスと、白い雲のように見える大マゼラン雲です。この2つの天体の中間、つまりカノープスと大マゼラン雲の間に、かじき座は位置しています。
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カノープスは非常に明るい1等星なので、すぐに目に留まるでしょう。また、大マゼラン雲は肉眼でもぼんやりした雲のように見えるため、比較的容易に見つけることができます。この2つを確認したら、その中間にある平仮名の「へ」の字を平べったくしたような、淡い光の星の並びを探してください。
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かじき座は3等星以下の星からできている暗い星座なので、見つけにくい星座のひとつです。大マゼラン雲のすぐそばにある菱形をとらえるようにすると、見つけやすくなります。この菱形がカジキの体になっていて、ここからとびうお座の方向に向かって、口にあたる部分が描かれています。
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かじき座の周りには、北にとけい座やエリダヌス座、西にはレチクル座やみずへび座が見え、その向こうに小マゼラン雲が見えます。また、大マゼラン雲の向こうにはテーブルさん座やとびうお座があり、東にはがか座やりゅうこつ座、はと座などを観察することができます。
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<参考リンク>
タランチュラ星雲の詳細な情報と星形成のメカニズムについて
タランチュラ星雲 - Wikipedia
かじき座の星々の詳しいデータと観測情報
かじき座ってどんな星座？【神話も紹介】 - トロモロ
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したタランチュラ星雲の最新画像
まるで天界の光景？ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「かじき座30」 - sorae

 

 

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