テーブルさん座神話と構成する星の魅力を探る

南天に輝くテーブルさん座は、全88星座の中で最も暗い星座として知られています。神話を持たない新しい星座ですが、ラカイユ天文学者による命名の背景や、構成する星々には興味深い特徴が隠されています。この星座の魅力について、あなたはどれだけ知っていますか?

テーブルさん座神話と構成する星

テーブルさん座の特徴
全天で最も暗い星座

最輝星のα星でも5.09等級という、88星座中最も暗い星座です

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実在する山が由来

南アフリカのテーブルマウンテンをモチーフにした唯一の星座

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大マゼラン雲が目印

かじき座との境界にある大マゼラン雲を目印に探すことができます

テーブルさん座に神話が存在しない理由

 

テーブルさん座は、古代から伝わる伝統的な星座ではなく、1756年にフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカイユによって新しく設定された近代の星座です。そのため、ギリシャ神話や古代文明の伝説といった神話は一切存在しません。

 

参考)テーブルさん座ってどんな星座?【神話も紹介】

ラカイユは1750年から1754年にかけて、南アフリカ共和国のケープタウンにあるテーブルマウンテンのふもとで約3年間滞在し、南天の星々の観測と研究を行いました。この期間中、彼は毎日この特徴的な山を眺めながら天体観測を続けました。

 

参考)【星座夜話 53/88 テーブルさん座】|ほーんら

テーブルマウンテンは、約3kmにわたって山頂がほぼ平坦な、標高1,087mの岩山です。垂直に切り立った崖が特徴で、まさにテーブルのような形状をしています。この山にしばしば白い雲がかかる様子を見たラカイユは、星座にかかる大マゼラン雲と重ね合わせ、観測地への思い入れから星座に山の名前をつけたと伝えられています。

 

参考)テーブルさん座とは?見つけ方や見どころ

実在する地名が星座の名前になっているのは、全88星座の中でテーブルさん座ただひとつという非常に珍しい例です。このように、テーブルさん座には古代の神話こそありませんが、18世紀の天文学者の情熱と観測への献身という、現実の歴史が刻まれた星座なのです。

 

参考)https://seiza.imagestyle.biz/minami/table.shtml

テーブルさん座を構成する主要な星の特徴

テーブルさん座は、全88星座の中で最も暗い星座として知られており、構成する星々はすべて5等星以下の暗い星ばかりです。肉眼で確認できる星は約20個程度とされています。

 

参考)テーブルさん座|やさしい88星座図鑑

α星(アルファ・メンサエ)の特徴
テーブルさん座で最も明るい星であるα星は、見かけの等級が5.09という暗さで、全星座の最輝星の中でも最も暗い記録を持っています。この星は黄色のG型主系列星(G7V)で、太陽よりもやや小さく表面温度は5,587Kと太陽よりも低めです。

 

参考)テーブルさん座アルファ星 - Wikipedia

α星は地球から約33.26光年(10.2パーセク)の距離にあり、半径は太陽の0.91倍、質量は1.103倍とほぼ太陽に近い大きさです。年齢は約54億年と推定され、太陽よりもやや年老いた恒星です。この星は比較的大きな固有運動を持ち、赤経方向に年間121.80ミリ秒、赤緯方向に-212.34ミリ秒移動しています。

 

参考)テーブルさん座アルファ星とは - わかりやすく解説 Webl…

興味深いことに、α星から約3.05秒角(約30天文単位)離れた位置には赤色矮星が伴星として存在していますが、周囲を公転する惑星はこれまで発見されていません。

その他の構成星
α星以外にもγ星(ガンマ・メンサエ)などが知られていますが、いずれも5~6等星程度の暗い星々で構成されており、固有名を持つ星は一つも存在しません。この暗さゆえに、テーブルさん座の形を肉眼で確認することは非常に困難とされています。

 

参考)テーブルさん座

テーブルさん座α星の詳細データ(Wikipedia)- α星の物理的性質や観測データについて詳しく解説されています

テーブルさん座の観測方法と見える場所

テーブルさん座は天の南極近くに位置する南天の星座で、赤経5h40m、赤緯-77°付近にあります。日本からは全く見ることができない星座の一つで、観測するには南半球の緯度が高い地域へ行く必要があります。

観測可能な地域と時期
南半球でも特にオーストラリア南部、ニュージーランド、南アメリカ南部、そして設定の由来となった南アフリカのケープタウンなどで観測することができます。20時に南中するのは2月10日頃で、南半球では夏の終わりから秋にかけての季節に観測しやすくなります。

探し方のポイント
テーブルさん座を探す最大の目印は、隣接するかじき座との境界にある「大マゼラン雲」です。大マゼラン雲は肉眼でもはっきり確認できる明るい銀河で、この銀河から少し南へ視線を移すと、「く」の字のような星の並びが見つかります。これがテーブルさん座です。

 

参考)大マゼラン雲 - Wikipedia

大マゼラン雲は地球から約16万光年離れた不規則銀河で、かじき座からテーブルさん座にかけて広がっています。この銀河の一部がテーブルさん座の領域にかかっており、ラカイユはこれをテーブル山にかかる白い雲に見立てたと言われています。

しかし、テーブルさん座自体が5等星以下の暗い星々で構成されているため、大マゼラン雲を目印にしても、実際に星座の形を確認するのは極めて困難です。真っ暗な場所で、星座図を参考にしながらじっくりと観察する必要があります。

テーブルさん座の名称変遷と日本での呼び方

テーブルさん座の正式な学名は「Mensa(メンサ)」で、ラテン語で「テーブル」を意味する言葉です。国際天文学連合(IAU)が定める公式の略符は「Men」となっています。

 

参考)謎の星座、テーブルさん座 |ブログ|京都・滋賀・のシステム開…

日本での名称の変遷
興味深いことに、日本では当初「テーブルさん座」という名称は使われていませんでした。最初は学名をそのまま日本語読みにした「メンサ座」と呼ばれていました。さらに、戦時中の1940年代には、日本の天文学者である平山清次と平山信の両名を記念する意味も込めて「ひらやま座(平山座)」という名称も提唱されたことがありました。

しかし、1944年に学術研究会議(現在の日本学術会議)の天文学述語委員会によって天文述語集が刊行された際、「テーブルさん座」という名称が正式に採用され、以降この呼び名が定着していきました。この「さん」は「~さん」という敬称ではなく、「山」を意味しており、正確には「テーブル山座」となります。

星座名の意味
星座図では、山の頂上がテーブルのように平らな形で描かれており、この特徴的な形状がそのまま星座の姿となっています。テーブルマウンテンの実際の景観を知ると、星座の形状の意味がより理解できるでしょう。

 

参考)テーブルマウンテン (南アフリカ) - Wikipedia

テーブルさん座と周辺星座の位置関係

テーブルさん座は、南天の複数の星座に囲まれた小さな星座で、概略面積は153平方度と全天88星座中75位の大きさです。天の南極とかじき座の大マゼラン雲との間という、南天観測において重要な位置を占めています。

隣接する星座
テーブルさん座に隣接する星座は、かじき座、カメレオン座みずへび座とびうお座はちぶんぎ座の5つです。これらはすべて南天の星座で、日本からは見ることができない星座ばかりです。

特に重要な隣接星座は、大マゼラン雲を含むかじき座です。大マゼラン雲はかじき座とテーブルさん座の境界に位置しており、マゼラン銀河の大部分はかじき座の領域に入っていますが、一部がテーブルさん座にもかかっています。

天の南極との関係
テーブルさん座は天の南極の近くに位置しているため、南半球の高緯度地域では周極星座として一年中観測することが可能です。南中高度は約-22°とされており、南半球でもかなり南に位置する星座であることがわかります。

この位置関係により、テーブルさん座は南天観測の基準点の一つとして、天文学的に重要な役割を持っています。ラカイユがケープタウンで南天観測を行った際も、この星座の位置は重要な観測ポイントとなっていたと考えられます。

 

参考)https://mirahouse.jp/station/pic-men.pdf

観測上の意義
テーブルさん座自体は暗い星座ですが、大マゼラン雲という明るい銀河が近くにあることで、南天観測における重要な目印として機能しています。大マゼラン雲は地球に最も近い銀河の一つで、様々な天体現象の観測対象として現代天文学においても重要な天体です。

 

参考)南半球の星座「テーブルさん座」を紹介します。

テーブルさん座観測の現代的価値と天文学への貢献

テーブルさん座は暗く目立たない星座ですが、現代の天文観測においても重要な意義を持っています。特にケープタウンは「天体観測の聖地」とも呼ばれ、多くの天文ファンが憧れる観測地となっています。

南天観測の歴史的重要性
ラカイユが1750年代にケープタウンで行った観測は、南天の星々の詳細な記録を残した画期的な研究でした。彼はテーブルマウンテンのふもとに約3年間滞在し、それまでヨーロッパからは観測できなかった南天の天体を系統的に調査しました。この観測によって、南天に多くの新しい星座が設定されることになりました。

ラカイユが制定した星座は、テーブルさん座を含めて14個にのぼります。これらの星座は、当時の科学技術や測量機器をモチーフにしたものが多く、「がか座」「ほうおうぎ座」「けんびきょう座」などがあります。テーブルさん座は、その中でも唯一、実在する地形をモチーフにした特別な存在です。

現代における観測環境
現代では、南半球の各地に大型望遠鏡が設置され、南天の天体観測が盛んに行われています。テーブルさん座の領域は、大マゼラン雲に近いことから、銀河系外の天体研究においても重要な観測エリアとなっています。

また、アマチュア天文家にとっても、南半球への天体観測旅行は憧れの対象です。オーストラリアの暗い空の下や、南アフリカのケープタウンで、ラカイユが見たのと同じ星空を眺めることは、天文ファンにとって特別な体験となるでしょう。

観測の難しさとやりがい
テーブルさん座は全天で最も暗い星座であるがゆえに、その形を確認できた時の達成感は格別です。真っ暗な牧場や砂漠で撮影した南天の写真をじっくりと眺め、ようやくテーブルさん座の星の並びを見つけ出すというプロセスは、天体観測の醍醐味の一つと言えます。

📊 テーブルさん座の基本データまとめ

項目 内容
学名 Mensa
略符 Men
設定者 ニコラ・ルイ・ド・ラカイユ(1756年)
概略位置 赤経5h40m/赤緯-77°
面積 153平方度(全天75位)
最輝星 α星(5.09等級)
肉眼星数 約20個
20時南中 2月10日頃
観測可能地域 南半球のみ
隣接星座 かじき座、カメレオン座、みずへび座、とびうお座、はちぶんぎ座


このように、テーブルさん座は神話を持たない新しい星座でありながら、天文学の歴史と南天観測の発展において重要な役割を果たしてきました。暗く目立たない星座ではありますが、その背景には18世紀の天文学者の情熱と、現代まで続く天体観測への探求心が刻まれています。南半球を訪れる機会があれば、ぜひ大マゼラン雲を目印にして、この控えめながらも意義深い星座を探してみてください。

 

 


テーブルさん座