はちぶんぎ座の神話と構成する星:天の南極と航海の歴史

天の南極に位置するはちぶんぎ座は、航海時代の測定器具をモチーフにした新しい星座です。構成する星や八分儀の歴史、天文学的な特徴について詳しく解説します。日本から見えない南天の星座には、どんな秘密が隠されているのでしょうか?

はちぶんぎ座の神話と構成する星

この記事でわかること
はちぶんぎ座の特徴

天の南極を含む南天の星座で、4等星以下の暗い星で構成されています

🔭
八分儀の歴史

18世紀の航海用測定器具がモチーフとなった新しい星座の由来

構成する主な星

ν星とσ星(ポラリス・アウストラリス)など天文学的に重要な恒星

はちぶんぎ座に神話が存在しない理由

 

はちぶんぎ座は18世紀にフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによって設定された比較的新しい星座のため、古代ギリシア神話や伝説は一切存在しません。ラカーユは1752年に南アフリカのケープタウンで天体観測を行い、南天の星々を整理する過程でこの星座を創設しました。それまでこの領域は16世紀末にペーテル・ケイセルらが考案した「みずへび座」の一部とされていましたが、ラカーユは天の南極の部分を切り取って独立した星座としました。

 

参考)はちぶんぎ座ってどんな星座?【神話も紹介】

星座のモチーフとなったのは、1730年にイギリスのジョン・ハドリーが発明した「八分儀」という航海用測定器具です。八分儀は天体の水平線からの高度や離角を観測するために用いられ、弧の大きさが45度(360度の8分の1)であることからこの名が付けられました。初出は1756年に刊行された星図で、当初はフランス語で「反射式八分儀(l'Octans de Reflexion)」と呼ばれていましたが、1763年の著書ではラテン語で「Octans」に変更されました。

 

参考)はちぶんぎ座 - Wikipedia

Wikipedia - はちぶんぎ座
※はちぶんぎ座の詳細な歴史と由来について、ラカーユによる設定の経緯や星座名の変遷が解説されています。

 

はちぶんぎ座を構成する主要な星の特徴

はちぶんぎ座は南半球の星座の中でも特に目立たない星座で、4等星以下の暗い恒星から構成されています。星座全体で肉眼で見える星は約17個(5.5等級まで)とされ、明るい星が少ないため南半球でも見つけるのは容易ではありません

 

参考)南半球の星座「はちぶんぎ座」を紹介します。

最も明るい恒星はν(ニュー)星で、見かけの明るさは3.76等星です。この星は赤経-77度23分という天の南極に非常に近い位置にあり、分光連星であることが知られています。周囲には未確認の太陽系外惑星が一つ発見されているものの、固有名は付けられていません。

もう一つの重要な恒星はσ(シグマ)星で、5.42等星と暗い星ですが、バイエル符号の付いた恒星の中で最も天の南極に近い位置にあります。そのため南半球では赤道儀の極軸合わせに使用される重要な基準星となっています。2017年9月5日にはラテン語で「南極星」を意味する「ポラリス・アウストラリス(Polaris Australis)」という固有名が正式に承認され、はちぶんぎ座で唯一の固有名を持つ星となりました。

 

参考)https://ryutao.main.jp/tips_howto25.html

注目すべき点として、α星は見かけの明るさが5.13等星で、ギリシア文字の「α」が付けられた星としては全天で最も暗い星という特徴があります。

恒星名 等級 特徴
ν(ニュー)星 3.76等 はちぶんぎ座で最も明るい星、天の南極に近い
σ(シグマ)星 5.42等 ポラリス・アウストラリス、天の南極に最も近い
α(アルファ)星 5.13等 α星としては全天で最も暗い
δ(デルタ)星 橙色巨星、土星の南極星

はちぶんぎ座と天の南極の天文学的重要性

はちぶんぎ座の最大の特徴は、星座の領域内に「天の南極」が存在することです。天の南極は南半球における星空の回転の中心点であり、地球の自転軸の延長線が天球と交わる南側の点を指します。しかし北半球の天の北極には明るい北極星が輝いているのに対し、天の南極付近には明るい星がないため、南半球での天体観測における方向確認はより困難です。

 

参考)https://seiza.imagestyle.biz/minami/hatibungi.shtml

天の南極の位置を知るための最も一般的な方法は、みなみじゅうじ座(南十字星)を利用することです。みなみじゅうじ座は明るい星で構成されているため夜空の明るい場所でも簡単に見つけられ、その十字の長い方の軸を南方向に約4.5倍伸ばしたところに天の南極があります。天の南極の周辺には、細長い三角形で構成されるはちぶんぎ座の4等星クラスの星々が散在しています。

 

参考)星座八十八夜 #63 もっとも南にある星座「はちぶんぎ座」 …

地球の歳差運動(約2万6000年周期のみそすり運動)により、天の北極が現在の北極星から離れていくのと同様に、天の南極も将来的にははちぶんぎ座の領域からずれていきます。このような天文学的な変化は、地球の自転軸の傾きが長期的に変動することに起因しています。

天体写真の世界 - 南半球での極軸合わせ方法
※南半球での天の南極の見つけ方と極軸合わせの実践的な方法について、写真付きで詳しく解説されています。

 

はちぶんぎ座の観測方法と見える地域

はちぶんぎ座は南天の星座であり、日本からはまったく見ることができない4つの星座のうちの1つです。この星座は赤緯約-87度という極めて南に位置しており、南緯の高い地域でなければ観測できません。南半球では一年中南の空で観測することが可能で、特に南半球の秋(北半球の春に相当)の季節に見頃を迎えます。

 

参考)https://www.stellatheater.com/j/guide/html/oct.html

はちぶんぎ座を探すには、ケンタウルス座の2つの1等星、リギル・ケンタウルス(α星)とハダル(β星)、そしてエリダヌス座の1等星アケルナルのちょうど中間あたりに位置する細長い三角形を目印にします。しかし構成する星が4等星以下と暗いため、南半球でも市街地など夜空の明るい場所では見つけるのが困難です。

 

参考)はちぶんぎ座とは?見つけ方や見どころ

20時に南中する日は10月2日で、南中高度は約-28度となります。星座の面積は291.05平方度で、全天88星座の中では50番目の大きさです。天の南極を含むため周極星として常に地平線上にありますが、観測には暗い空と慣れた目が必要とされます。

 

参考)https://contest.japias.jp/tqj13/130460/main/minamiseiza/hatibungi.html

📍 観測のポイント

  • 南半球の中でもオーストラリア南部、ニュージーランド、南米南部、南アフリカなどで観測可能
  • 市街地を避けた暗い空での観測が推奨される
  • みなみじゅうじ座を基準にすると位置の特定が容易
  • 天体望遠鏡や双眼鏡を使用すると4等星以下の星も確認しやすい

八分儀という測定器具の歴史と航海への貢献

八分儀は18世紀の大航海時代において、船乗りたちが海上での自分たちの位置を正確に知るために使用された重要な測定器具です。この器具は天体や物標の高度、水平方向の角度を測るために設計され、測量や航海に広く用いられました。

 

参考)八分儀 - Wikipedia

八分儀の構造は、角度45度の扇型の本体に2枚の平面鏡が取り付けられたもので、測定には平面鏡の反射を利用します。45度の弧に90度までの目盛りが書き込まれており、スケールには角度とその3分の1(20分)が彫り込まれ、副尺により分の単位で測定が可能でした。測定精度は当時としては画期的で、航海士が星の高度を測定することで緯度を正確に計算できるようになりました。

 

参考)はちぶんぎ座

1730年にイギリスのジョン・ハドリーがこの機器を開発し、1732年に王立協会へ提出されました。八分儀は木や象牙で作られ、大量に製造されて世界中の船舶で使用されるようになりました。しかし後に月の正確な運行表が作られると、経度を知るために90度を超える月と星の角度を測る必要が生じ、より大きな角度を容易に測定できる六分儀が普及していきました。

 

参考)八分儀 (octant)

ラカーユがこの測定器具を星座のモチーフに選んだ理由は、八分儀が当時の天文学と航海術の発展に大きく貢献した科学器具であったためです。実際にラカーユは、はちぶんぎ座以外にもレチクル座とけい座ぼうえんきょう座など、複数の科学器具をモチーフにした星座を設定しています。これらは18世紀の科学の進歩を天球上に記念する試みであり、古典的な神話星座とは異なる近代的な発想に基づいています。

🔍 八分儀の特徴

  • 弧の角度:45度(360度の8分の1)
  • 測定範囲:90度まで測定可能
  • 材質:主に木材や象牙
  • 測定精度:分単位での角度測定が可能
  • 用途:天体高度測定、緯度計算、物標の角度測定

Wikipedia - 八分儀
※八分儀の構造、発明の歴史、航海への応用について詳細な解説があり、六分儀への発展過程も説明されています。

 

 


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