みなみじゅうじ座の神話と構成する星々の秘密

南半球の夜空を彩る十字架の星座には、航海時代から受け継がれる特別な意味と、複数の輝く星々による美しい構成があります。あなたは南十字星の本当の姿を知っていますか?

みなみじゅうじ座の神話と構成する星

みなみじゅうじ座の特徴
全天最小の星座

88星座の中で最も面積が小さいものの、2つの1等星を含む明るい星で構成される美しい星座

十字架の形

4つの明るい星が作る十字形は「南十字星」「サザンクロス」として世界中で親しまれている

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南の道しるべ

大航海時代から航海者たちの方位確認に使われ、天の南極を見つける重要な目印となっている

みなみじゅうじ座を構成する主な星々

 

みなみじゅうじ座は、4つの明るい星が十字架の形を作り出す美しい星座です。この十字を形作る星々には、それぞれ特徴的な性質と名前があります。

 

参考)みなみじゅうじ座 - Wikipedia

最も明るい星は、十字の最南端に位置する**アクルックス(α星)**で、見かけの明るさは約1.3等級です。この名前は「Alpha」の「A」と「Crux(十字)」を組み合わせたもので、実際には3つの星からなる多重星系となっています。地球から約321光年の距離にあり、青白色の巨星として輝いています。

 

参考)みなみじゅうじ座

十字の左側(東側)に輝くのがベクルックス(β星)で、別名ミモザとも呼ばれます。マグニチュード1.3の青白色巨星で、アクルックスと並ぶ1等星です。この星のすぐ隣には「宝石箱」と呼ばれる美しい散開星団NGC4755が位置しており、双眼鏡や天体望遠鏡で観察すると宝石のように輝く小さな星々の集まりを見ることができます。

 

参考)Crux(みなみじゅうじ座)について知ろう!【南天に輝く十字…

十字の上部(最北端)に位置するのが**ガクルックス(γ星)**で、約1.6等級の赤色巨星です。他の星々が青白く輝くのに対して、この星はオレンジがかった赤い色を放っており、十字架の配色にアクセントを添えています。日本の鹿児島県からでも地平線すれすれに観測できる位置にあります。

 

参考)https://ryutao.main.jp/southernsky_southerncross.html

十字の右側に位置する**δ星(デルタ・クルシス)**は、約2.8等級とやや暗めの青白色の星です。他の3つの星と比べると明るさが控えめですが、十字架の形を完成させる重要な星となっています。

 

参考)https://ryutao.main.jp/mythology_46.html

これらの星の名前は、みなみじゅうじ座の学名「Crux(クルックス)」に、明るさの順番を示すギリシャ文字α・β・γを組み合わせて省略したものです。つまり「α+Crux」が「アクルックス」、「β+Crux」が「ベクルックス」、「γ+Crux」が「ガクルックス」となっているのです。

 

参考)星座解説第2回 みなみじゅうじ座編|宇宙冒険隊

実際に夜空でこれらの星を見ると、3つの星は1等級と明るく輝いていますが、右側のδ星だけがやや暗く見えるため、十字架の形が少し歪んで見えることが肉眼でもわかります。

みなみじゅうじ座の詳しい星図と構成星の情報(AstroArts)

みなみじゅうじ座の神話と歴史的背景

みなみじゅうじ座は、北半球から見えない南天の星座であるため、古代ギリシャ神話には登場しません。しかし、この星座には興味深い歴史的な変遷があります。

古代ローマ時代には、この星々は「カエサルの玉座」と呼ばれていました。また、紀元前500年頃にはヨーロッパからも観測可能で、2世紀頃の学者クラウディオス・プトレマイオスが著した『アルマゲスト』には、ケンタウルス座の後ろ脚の一部として記録されています。しかし地球の歳差運動の影響により、地中海沿岸からこれらの星々を見ることができなくなると、大航海時代に「再発見」されるまで忘れられた存在となっていました。

 

参考)https://contest.japias.jp/tqj13/130460/main/minamiseiza/minamijyuuzi.html

南十字の星が欧州圏の人々に再発見されたのは16世紀を迎える直前の1500年でした。ペドロ・アルヴァレス・カブラルのインド遠征に参加したジョアン・ファラスが、ブラジルで観測した南天の星図をポルトガル王に報告し、「南十字の再発見者」とされています。

 

参考)みなみじゅうじ座 - Wikiwand

独立した星座として初めてみなみじゅうじ座を設定したのは、オランダの天文学者ペトルス・プランシウスです。彼は南半球を航海する者に観測を依頼し、1613年にみなみじゅうじ座を含む8星座をアムステルダムで発表しました。その後、ドイツの天文学者ヨハン・バイヤーが星表『ウラノメトリア』に掲載したことで、世間に広く知られるようになりました。

 

参考)みなみじゅうじ座とは (ミナミジュウジザとは) [単語記事]…

大航海時代のキリスト教徒である船乗りたちにとって、十字架の形に並ぶ星は特別な意味を持っていました。北半球には方角を示す北極星がありますが、南半球には南極星がないため、みなみじゅうじ座が南を示す重要な役割を担ったのです。α星とγ星を結んだ線を約4.5倍延長すると天の南極の位置にあたるため、方位を知るための航海術として広く利用されました。

 

参考)南十字星

荒波を行く航海者たちにとって、南十字星が作り出す十字架は神の加護のように見え、航海の無事を祈る際の象徴となっていたと考えられています。

 

参考)星座八十八夜 #88 南天で人気ナンバーワン「みなみじゅうじ…

みなみじゅうじ座の神話と歴史(天体写真の世界)

みなみじゅうじ座周辺の魅力的な天体

みなみじゅうじ座は小さな星座ながら、周辺に見どころの多い天体が集まっています。天の川銀河の中で輝いているため、星座の周りには無数の微恒星が見えます。

最も有名な天体の一つがコールサック(石炭袋)です。十字架のすぐ左下の部分だけが暗くなっており、まるで天の川にポッカリと穴が空いたように見えます。その正体は暗黒星雲で、塵を多く含む密度の高い星雲が可視光線を遮ってしまうため、真っ暗に見えるのです。

オーストラリア大陸の先住民アボリジニは、このコールサックをエミューの頭と見なしていました。また、宮沢賢治の童話『銀河鉄道の夜』にも「石炭袋」として登場することで、日本でも知られています。コールドウェルカタログの99番に選ばれており、天体観測の対象としても人気があります。

 

参考)みなみじゅうじ座とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書

ベクルックス(β星)のすぐ隣に位置するNGC4755は、「宝石箱」という美しい通称で知られる散開星団です。肉眼では一つの恒星のように見えますが、双眼鏡や天体望遠鏡で観察すると、宝石のように輝く小さな星々の集まりであることがわかります。さまざまな色の星が密集して輝く様子は、まさに宝石箱を開けたような美しさです。

これらの天体は、みなみじゅうじ座が単なる星座の形だけでなく、深宇宙の構造を観察できる絶好のエリアであることを示しています。天の川の中心方向に近い位置にあるため、星雲や星団が豊富に存在しているのです。

 

みなみじゅうじ座の観測時期と見え方

みなみじゅうじ座は南天の星座であるため、日本の大部分からは観測できませんが、沖縄県の石垣島などでは年間の一定期間に観測が可能です。

 

参考)南十字星モニター href="https://murikabushi.jp/?page_id=24" target="_blank">https://murikabushi.jp/?page_id=24amp;#8211; 石垣島天文台

石垣島で南十字星が見える時期は、12月頃から6月頃までの約半年間です。観測に適した時間帯は、南中時刻の前後1時間程度とされています。南中時刻とは、天体が真南の方向に来る時刻のことで、この時に最も高い位置に見えるため観測しやすくなります。

日本で最も観測しやすいのは、北緯24度付近に位置する石垣島や宮古島などの南西諸島です。鹿児島県からでもガクルックス(γ星)が地平線すれすれに見えることがありますが、条件が良くないと観測は困難です。

みなみじゅうじ座の観測に最適な時期は**春から初夏(5月下旬)**とされています。この時期に南天で20時頃に南中し、最も見やすい位置に来ます。南半球、特にオーストラリアやニュージーランド、南米などでは、一年を通じて観測可能で、国旗のデザインにも採用されています。

 

参考)【校長ブログ】南十字星2

実際に観測する際は、α星とγ星を結んだ長い方の辺を約4.5倍延長することで、天の南極の位置を見つけることができます。この方法は、北極星のない南半球で方位を知るための伝統的な技術として現代でも活用されています。

観測する際の注意点として、街明かりの少ない場所を選ぶことが重要です。特にコールサックや宝石箱などの淡い天体を観察する場合は、光害の影響を受けにくい暗い場所での観測が推奨されます。

 

石垣島天文台の南十字星モニター(観測時刻の詳細情報)

みなみじゅうじ座に込められた文化的意味

みなみじゅうじ座は、世界各地の文化で異なる意味を持ち、特別な役割を果たしてきました。

キリスト教文化では、イエス・キリストが処刑された十字架を表すとされ、神の導きを象徴する星座として考えられてきました。大航海時代の船乗りたちにとって、南の空に燦然と輝く十字架の形は、まさに「守護星」として信仰の対象となっていました。荒波を越えて未開の大海へ旅立つ際、十字架の形をした星々は神の加護を感じさせる存在だったのです。

 

参考)https://ameblo.jp/area0627/entry-10951146679.html

オーストラリアの先住民アボリジニには、みなみじゅうじ座にまつわる独自の神話が伝わっています。ある伝承では、**ヤラアーンドゥー(白いユーカリの木のある所)**として南十字星を呼んでいました。

 

参考)ヤラアーンドゥー - Wikipedia

この神話によると、原初の頃に天空の王バイアメが2人の男と1人の女を創造しました。旱魃が発生した際、1人の男は肉を食べることを拒否し、飢えて白いユーカリの木の下で倒れました。死の精霊ヨウィーが彼の死体を木の洞に落とし入れると、木は天空へと飛び上がり、2羽のバタンインコがそれを追って行ったという物語です。このようにアボリジニは、南十字星を「空に咲く花」や「神聖な木」として伝えてきました。

部族によって異なる物語が存在し、コールサック(暗黒星雲)をエミューの頭と見なす伝承もあります。これらの物語は、星座が単なる星の配置ではなく、文化や信仰と深く結びついた存在であることを示しています。

現代では、みなみじゅうじ座は複数の国の国旗にデザインされています。ニュージーランドの国旗には4つの主要な星(α・β・γ・δ)が描かれており、オーストラリアやブラジルなどの国旗には5つの星(4つの主要な星にε星を加えたもの)が描かれています。これは南半球の国々にとって、みなみじゅうじ座が地理的アイデンティティの象徴となっていることを表しています。

航海の歴史においても、大航海時代から南半球での重要な航海の目印として使われ、多くの航海者の命を救ってきました。天然のコンパスとしての役割は、GPS技術が発達した現代でも、伝統的な航海術として受け継がれています。

このように、みなみじゅうじ座は科学的な天体としてだけでなく、宗教、神話、航海術、国家の象徴など、多様な文化的意味を持つ特別な星座として、世界中の人々に親しまれ続けているのです。

 

 


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