夜空を見上げると、私たちの目を楽しませてくれる無数の星々が輝いています 。その中でも特に明るく、形を作りやすい星の並びは、古くから人々の道しるべや季節の指標とされてきました 。その代表格が「大三角形」と呼ばれるアステリズム(星座ではありませんが、星々が作る特定の形)です 。大三角形は、主に「夏の大三角」「冬の大三角」「春の大三角」の3つが知られており、それぞれ季節を代表する星座の一等星を結んで作られます 。
これらの大三角形を見つけるには、まず光の少ない、空がよく見える場所を選ぶことが大切です 。都市部では街明かりで暗い星が見えにくいため、郊外や山の上などが理想的です 。そして、観察する季節と時間、方角を事前に把握しておくことが、スムーズな星空観察への第一歩となります 。
星座や星を見つけるのが難しいと感じる方は、スマートフォンアプリや星座早見盤を活用するのがおすすめです 。これらのツールは、今いる場所から見える星座や星の名前、位置を正確に教えてくれるため、初心者でも簡単に目的の星を見つけ出すことができます 。例えば、アプリを空にかざすだけで、AR(拡張現実)技術によって現実の夜空に星座絵や星の名前を重ねて表示してくれるものもあります 。大三角形は、その名の通り非常に大きな三角形なので、最初は全体像を捉えにくいかもしれません 。まずは一つの明るい星を見つけ、そこから他の二つの星を探していくと、巨大な三角形が夜空に浮かび上がってくるでしょう 。
以下の参考リンクは、姫路科学館が提供する、子供向けの自由研究にも役立つ夏の三角形の探し方のページです。短い時間で理解できるようまとめられています。
https://www.city.himeji.lg.jp/atom/research/triangle.html
夏の夜空で最も有名なアステリズムといえば、やはり「夏の大三角」でしょう 。7月頃であれば夜9時頃に東の空に、8月から9月にかけては頭の真上あたりに見ることができます 。この雄大な三角形は、こと座の「ベガ」、わし座の「アルタイル」、はくちょう座の「デネブ」という3つの一等星を結んで作られます 。
夏の大三角の時期、空の条件が良い場所では、ベガとアルタイルの間を流れるように広がる「天の川」を観測することができます 。天の川の正体は、私たちが住む天の川銀河(銀河系)の星々の集まりです 。夏は、地球から見て天の川銀河の中心方向を向いているため、一年で最も濃く、はっきりと天の川を見ることができるのです 。
そして、このベガ(織姫)とアルタイル(彦星)を隔てるように流れる天の川こそ、有名な七夕伝説の舞台です 。神様である天帝の娘で機織りの名手だった織姫と、働き者の牛飼いである彦星は、恋に落ちて結婚しました 。しかし、二人は仲睦まじくするあまりに仕事をしなくなってしまいます 。怒った天帝は、二人を天の川の両岸に引き離してしまいました 。しかし、あまりに悲しむ二人を哀れに思い、年に一度、7月7日の夜だけカササギが橋を架けて会うことを許した、というロマンチックな物語です 。夏の大三角を見つけた際には、ぜひこの壮大な恋物語にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
空気が澄みわたり、一年で最も星が美しく見える冬の季節 。南東の空を見上げると、ひときわ明るく輝く3つの星が作る「冬の大三角」を見つけることができます 。12月から2月頃の19時以降が見頃です 。この三角形は、オリオン座の「ベテルギウス」、おおいぬ座の「シリウス」、こいぬ座の「プロキオン」という、いずれも非常に明るい一等星で構成されています 。
冬の大三角を見つけるコツは、まず特徴的な形をしたオリオン座を探すことです 。その左上で赤っぽく輝く星がベテルギウスです 。次に、オリオン座の三つ星を結んだ線を左下に伸ばしていくと、全天で最も明るい恒星シリウスが見つかります 。そして、ベテルギウスとシリウスから東側に目を移し、正三角形を描くように探すとプロキオンが見つかるでしょう 。
冬の大三角を構成するこれらの星々は、ただ明るいだけでなく、恒星の進化の多様なステージ(終末期の赤色超巨星、主系列星、白色矮星)を示しており、天文学的に見ても非常に興味深い対象なのです 。
厳しい寒さが和らぎ、だんだんと夜が過ごしやすくなる春 。東の空には、春の星座たちを見つけるための便利な目印となる「春の大三角」と「春の大曲線」が現れます 。春の大三角は、うしかい座の「アークトゥルス」、おとめ座の「スピカ」、そしてしし座の「デネボラ」を結んでできる、ややいびつな三角形です 。
春の星座探しは、まず北の空高くに輝く「北斗七星」を見つけることから始めるのが定番です 。ひしゃくの形をしたこの星の並びを見つけたら、その柄の部分のカーブをそのまま南の方へ伸ばしていきましょう 。そうすると、オレンジ色に輝く明るい星、アークトゥルスに行き当たります 。このカーブをさらに伸ばしていくと、青白く輝くスピカを見つけることができます 。この北斗七星からアークトゥルス、スピカへと続く大きなカーブが「春の大曲線」です 。
春の大曲線を見つけたら、三角形の最後の頂点であるデネボラを探します 。アークトゥルスとスピカを結んだ線を一辺とし、ほぼ正三角形になる位置に見えるのがデネボラです 。
さらに、春の大三角を構成するアークトゥルスとスピカ、デネボラに、りょうけん座のコル・カロリを加えると、「春のダイヤモンド」または「乙女のダイヤモンド」と呼ばれるさらに大きな菱形が浮かび上がります 。このように、一つのアステリズムから次々と別の星座や星を見つけていくことができるのが、星空観察の醍醐味と言えるでしょう。
夏、冬、春の大三角形を注意深く観察すると、それぞれの星の色が微妙に異なっていることに気づくでしょう 。例えば、冬のベテルギウスは赤っぽく、夏のベガや春のスピカは青白く見えます 。この星の色の違いは、実は星の表面温度と密接な関係があります。
天文学では、恒星をその光のスペクトルによって分類する「スペクトル型」という指標が用いられます。これは表面温度の高い順にO、B、A、F、G、K、Mという記号で表され、「Oh, Be A Fine Girl/Guy, Kiss Me!」という覚え方で知られています。星の色と表面温度の関係は以下のようになっています。
一見すると、「赤い星は熱く、青い星は冷たい」というイメージがあるかもしれませんが、星の世界ではこれが逆になります。これは「黒体放射」という物理法則によるもので、物が高温になるほど、より波長の短い光、つまり青い光を強く放射するようになるためです。ガスコンロの火が、温度の低い部分は赤く、最も熱い中心部が青く見えるのと同じ原理です。
大三角形を構成する星々の色に注目してみることで、私たちは夜空に浮かぶそれらの星が、どれほど高温で、どのような一生を送っているのかを垣間見ることができるのです 。例えば、赤く輝くベテルギウスは年老いた星であり、青白く輝くスピカは若々しく活動的な星である、といった具合です。単に星の光として捉えるだけでなく、その色の裏にある物理的な性質に思いを巡らせることで、星空観察はより深く、知的な探求へと変わっていくでしょう。

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