秋の夜空、アンドロメダ座の足元で輝く2等星「アルマク」。 一見すると一つの星のように見えますが、実は驚くべき秘密が隠されています。 アラビア語で「大地の子」を意味する名前を持つこの星は、天体望遠鏡を通して見ると、その真の姿を現します。
望遠鏡のレンズが捉えるのは、オレンジ色に輝く主星と、それに寄り添うように青白く輝く伴星の姿。 この息をのむほど美しい色の対比から、「北天のアルビレオ」と並び称される、二重星の至宝です。 二重星とは、地球から見て二つの星が非常に近い位置にあるように見える星々のことですが、アルマクの場合は「連星」と呼ばれ、二つの星が実際に重力で結びつき、お互いの周りを公転しています。
参考)http://www.starclick.ne.jp/backnumber/1999Aut/andromeda/doublestar.html
地球からの距離は約350光年から393光年とされており、私たちが今見ている光は、江戸時代初期に放たれたものかもしれません。 そう考えると、夜空の輝きがより一層、時空を超えた壮大な物語のように感じられませんか?
参考)https://www.tsm.toyama.toyama.jp/?tid=101888
アルマクの基本情報
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 星座 | アンドロメダ座(γ星) | |
| 見かけの等級 | 2.10等 | |
| 分類 | 恒星(連星、二重星) | |
| 主星(γ¹星) | 2.3等のオレンジ色の星 | |
| 伴星(γ²星) | 5.0等の青色の星 | |
| 地球からの距離 | 約350〜400光年 | |
| 名前の由来 | アラビア語で「大地の子」 |
このように、アルマクは単なる夜空の一点ではなく、複数の恒星が織りなす複雑で美しい天体システムなのです。
アルマクが「最も美しい二重星」の一つと称される最大の理由は、その鮮やかな色の対比にあります。 望遠鏡を覗くと、まるで宝石箱をひっくり返したかのように、オレンジ色の主星と青白い伴星が隣り合って輝く光景は、一度見たら忘れられないほどの感動を与えてくれます。 では、なぜこのように美しい色の違いが生まれるのでしょうか?
星の色は、その星の「表面温度」によって決まります。これは、鉄を熱したときの色が温度によって赤→オレンジ→黄色→白と変化していくのと同じ原理です。
アルマクの主星であるγ¹星(ガンマ・ワン星)は、表面温度が比較的低いK型巨星と呼ばれるタイプの星で、そのために美しいオレンジ色に輝いています。 一方、伴星のγ²星(ガンマ・ツー星)は、主星よりもずっと表面温度が高いB型主系列星です。 この温度の違いが、まるで芸術家が意図的に配置したかのような、見事な色彩のコントラストを生み出しているのです。
この色の組み合わせは、はくちょう座のくちばしに位置する有名な二重星「アルビレオ」としばしば比較されます。 アルビレオもオレンジ色と青色の美しい二重星ですが、アルマクの方が星同士の間隔(離角)が狭く、より寄り添って見えるため、色の対比がより濃く、情緒的に感じられるというファンも少なくありません。
参考)http://kuiperbelt.la.coocan.jp/stargazing/Binaries/Andromeda/gamAnd.html
この天体が織りなす色のハーモニーは、まさに宇宙の芸術作品と言えるでしょう。性能の良い望遠鏡を使えば、それぞれの色の違いがより鮮明にわかり、その美しさに心を奪われること間違いありません。
美しいアルマクですが、いざ夜空から探し出すとなると、どうすれば良いのでしょうか? 心配ありません。アルマクは2等星と比較的明るい星なので、いくつかの目印さえ知っていれば、都会の明るい夜空でも見つけることが可能です。 ここでは、初心者でも迷わないように、代表的な探し方を2つ紹介します。
⭐ 方法1:カシオペヤ座の「W」の形から探す
秋の北の空で最も見つけやすい星座の一つが、特徴的な「W」の形をしたカシオペヤ座です。
⭐ 方法2:秋の四辺形(ペガススの四辺形)から探す
秋の星座探しの基本となるのが、「秋の四辺形」です。 これはペガスス座の胴体部分を形作る4つの2等星で構成されています。
アルマクは肉眼では一つの星にしか見えませんが、ぜひ天体観望会などで望遠鏡を覗く機会があれば、その美しい二重星の姿を確かめてみてください。 少し倍率を上げて観察すると、オレンジと青の星が見事に分離して見える様に、きっと感動するはずです。
アルマクが所属するアンドロメダ座には、古代エチオピアの王家を舞台にした、壮大で少しもの悲しいギリシャ神話が残されています。 この物語を知ると、秋の夜空に輝く星座たちが、より一層ドラマチックに見えてくるでしょう。
【登場人物】
【神話のあらすじ】
物語は、アンドロメダ姫の母であるカシオペヤ王妃が「自分の娘アンドロメダの美しさは、海の妖精ネレイドたちにも勝る」と自慢してしまったことから始まります。 これに激怒した海神ポセイドンは、国に津波と海の怪物ケートスを送り込み、エチオピアは滅亡の危機に瀕します。
困り果てたケフェウス王が神にお伺いを立てると、「娘アンドロメダを、ケートスの生贄として捧げれば、災いは収まるだろう」とのお告げを受けます。 王と王妃は嘆き悲しみましたが、国を救うため、愛する娘を海岸の岩に鎖で縛り付けてしまいました。
参考)https://ryutao.main.jp/mythology_01.html
まさにアンドロメダが怪物に飲み込まれそうになったその時、空から英雄ペルセウスが現れます。ペルセウスは怪物ケートスを退治し、アンドロメダ姫を救い出しました。その後、二人は結ばれ、幸せに暮らしたとされています。この一連の物語の登場人物(カシオペヤ、ケフェウス、アンドロメダ、ペルセウス、ケートス)は、 모두秋の星座として夜空に刻まれています。
参考)星空観望会で曇ったら(星座神話・秋)|さんたさん@北の大地の…
アルマク自体が神話の中心的な役割を果たすわけではありませんが、悲劇のヒロイン、アンドロメダ姫の足元を飾る星として、この壮大な物語の一部を担っているのです。神話を知りながらアルマクを眺めると、鎖に繋がれた姫の悲しみや、ペルセウスに救われた時の喜びが、星の輝きを通して伝わってくるような気がしませんか?
参考)おおぐま座のお話
アルマクがオレンジと青の美しい二重星であることは、アマチュア天文家の間でも広く知られています。 しかし、近年の観測技術の進歩は、この星が私たちの想像をはるかに超える、さらに複雑で驚くべき構造を持っていることを明らかにしました。なんと、アルマクは2つの星ではなく、少なくとも4つの星からなる「四重連星」である可能性が極めて高いのです。
この驚きの事実を理解するために、アルマクの構造を詳しく見ていきましょう。
つまり、伴星γ²星はそれだけで「三重連星」を形成しているのです。
このように、私たちが何気なく見ている一つの星の輝きの中に、複数の恒星が互いに重力の影響を及ぼし合いながら、複雑なダンスを繰り広げているのです。この事実は、宇宙の深遠さと、科学の探求がもたらす驚きを私たちに教えてくれます。
以下の参考リンクは、アストロアーツの天体写真ギャラリーで、アルマクが三重星である可能性について言及されています。
#89631: 2重星 Almach アンドロメダ座 by hltanaka - アストロアーツ