うさぎ座神話と構成する星:オリオン座の足元に輝く冬の星座

オリオン座の足元に隠れるうさぎ座は、どんな神話や星々で構成されているのでしょうか?狩人の獲物として夜空に描かれた小さな星座の魅力に迫ります。

うさぎ座神話と構成する星

うさぎ座の魅力
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古代からの星座

プトレマイオス48星座のひとつで、2世紀から認められた歴史ある星座です

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狩人の獲物

オリオン座の足元に位置し、狩人に追われるうさぎの姿が描かれています

冬の観測対象

12月から2月が観測の最適期で、3等星と4等星で構成される四角形が特徴的です

うさぎ座とオリオン座の神話

 

うさぎ座はギリシア神話において、巨人の狩人オリオンに捕えられた獲物として描かれています。オリオン座の足元に位置するこの星座は、狩りを好んだオリオンが最も好んで狩りをした動物がうさぎだったという伝承に基づいています。

 

参考)https://ryutao.main.jp/mythology_07.html

古代ギリシャでは、このうさぎについて二つの異なる解釈がありました。一つはオリオンが好んだ獲物だという考え方、もう一つはオリオンほどの偉大な狩人が小さなうさぎなど狙うはずがないという主張です。しかし、オリオンに踏みつけられている位置に星座が配置されていることから、捕えられた獲物として夜空に描かれたと考えられています。

 

参考)天のうさぎ|三菱電機 DSPACE

別の神話では、シチリア島でうさぎが増えすぎたため、神々が狩人オリオンと猟犬であるおおいぬのそばにうさぎを置くことで、島に住む人々の暮らしを守ったとも伝えられています。この物語は、うさぎ座がオリオン座とおおいぬ座に挟まれた位置に配置されている理由を説明しています。

 

参考)1月の星座 うさぎ座

実はエジプト神話では、この星座は全く異なる解釈をされていました。エジプトではオシリスの船とされ、うさぎは女神のために神聖な卵を守り集める存在として崇められていたのです。この神聖なうさぎは生命そのものを意味する卵を運ぶ使者と考えられ、現代のキリスト教の復活祭のうさぎの起源とも言われています。

 

参考)うさぎ座 について|さくらい

うさぎ座を構成する主な星

うさぎ座は3等星と4等星からなる控えめな明るさの星座ですが、四辺形(台形)の形が特徴的です。この星座を構成する主な星々には、それぞれアラビア語に由来する興味深い名前が付けられています。

 

参考)うさぎ座|やさしい88星座図鑑

**α星アルネブ(Arneb)**は、うさぎ座で最も明るい2.5等星です。アラビア語で「ウサギ」を意味する言葉に由来するこの名前は、2016年に国際天文学連合によって正式に承認されました。地球から約2,218光年の距離にある白色超巨星で、太陽の5倍という高い窒素含有率を持つ特徴的な星です。この窒素の多さはCNOサイクルによる水素核融合の副産物であり、将来はネオンと酸素からなる白色矮星になると予想されています。

 

参考)うさぎ座アルファ星 - Wikipedia

**β星ニハル(Nihal)**は、うさぎ座で2番目に明るい2.8等星で、黄色の輝巨星です。「のどの渇きを癒し始めたラクダたち」という意味を持つアラビア語al-nihālに由来し、元々はα星、β星、γ星、δ星からなるアラビアのアステリズムの名前でした。地球から約160光年の距離にあり、多重星として知られています。伴星は連星系を成しており、7等から11等まで変光する食変光星である可能性も示唆されています。

 

参考)うさぎ座ベータ星 - Wikipedia

アラビアの伝承では、うさぎ座の四辺形を構成する星々は「渇きラクダの群」として捉えられていました。各星がそれぞれラクダ一頭を表し、水場に向かう群れの姿が夜空に描かれていたのです。

 

参考)https://ameblo.jp/mimba0621hori/entry-12383592277.html

その他の構成星として、γ星は太陽系から約29光年の距離にある3.60等星のF型主系列星で、二重星として知られています。ε星は約209光年の距離にある3.18等星のK型巨星です。

 

参考)うさぎ座 - Wikipedia

うさぎ座の見つけ方と観測時期

うさぎ座は冬の星座で、観測のベストシーズンは12月から2月です。この時期は夜空が最も澄んでおり、午後8時から深夜にかけてが見やすい時間帯となります。

 

参考)うさぎ座

見つけ方のポイントは、まず冬の夜空で最も目立つオリオン座を探すことです。オリオン座の三ツ星は非常に明るく特徴的なので、すぐに見つけられるでしょう。オリオン座の左上に赤く輝く1等星ベテルギウス、右下に青白く輝く1等星リゲルを確認したら、そのリゲルのすぐ南側、オリオンの足元あたりを探してください。

 

参考)冬の星座「うさぎ座」の見つけ方を紹介します

うさぎ座の東側には全天で最も明るい恒星であるおおいぬ座のシリウスが輝いています。このシリウスを目印にすることで、うさぎ座の位置をより正確に特定できます。うさぎ座はオリオン座とおおいぬ座に挟まれた位置にあるため、これら二つの明るい星座を見つければ、その間の暗い領域がうさぎ座です。

 

参考)https://seiza.imagestyle.biz/huyu/usagimain.shtml

実際の星の配置は、α星アルネブを頂点とした四角形(β星を除くと三角形)の形をしています。ブーツのような星の並びが体の部分に相当し、明るい4つの星で作られる四角形がうさぎの胴体部分を表現しています。

アストロアーツの星座解説ページでは、うさぎ座の詳しい見つけ方や観測情報を紹介しています

うさぎ座の位置関係と周辺星座

うさぎ座の位置を理解するには、周辺の星座との関係を知ることが重要です。オリオン座の足元に位置するうさぎ座は、南側にエリダヌス座、東側におおいぬ座、そして北側にはオリオン座という配置になっています。

エリダヌス座は、オリオン座の1等星リゲルの付近にあるβ星に端を発し、くじら座付近まで西に流れる大きな川の星座です。この星座はプトレマイオスの48星座のひとつで、全天で6番目に大きい星座ですが、3等星以下の暗い星で構成されているため、見つけるのはやや困難です。エリダヌス座は伝説の川・エリダヌス川を表し、イタリア北部を流れるポー川がモデルだと言われています。

うさぎ座とエリダヌス座は隣り合う星座として、オリオン座の足元で共存しています。エリダヌス座のα星アケルナルは「河の果て」という意味のアラビア語に由来し、星座が終わる南端に輝く1等星です。日本の多くの地域では南の空の低いところにあるため全体の姿を見ることはできませんが、沖縄地方などからは全景を観測できます。

三菱電機DSPACEのうさぎ座コラムでは、星座の位置関係について詳しく解説しています
この配置により、オリオン座を中心とした冬の星空には、狩人オリオン、その獲物であるうさぎ、そしてオリオンの猟犬であるおおいぬ、さらに足元を流れる川という一つの物語が描かれているのです。

 

参考)https://www.sendai-astro.jp/nishikouen/photo/con_album/con_win/Lep.html

うさぎ座とプトレマイオス48星座

うさぎ座は2世紀にプトレマイオスによってまとめられた「トレミーの48星座」のひとつです。この48星座は古代ギリシャの天文学者プトレマイオスが著書『アルマゲスト』で体系化したもので、現代の88星座の基礎となっています。

うさぎ座の歴史は非常に古く、ギリシャ時代にはすでに星座として設定されていました。プトレマイオス以前から存在していたこの星座は、様々な文化で異なる解釈をされてきました。アラビアでは「のどの乾いたらくだが河の水を飲もうとしている」姿と見られ、中国では「小屋」と呼ばれていました。現在の「うさぎ」という名前が定着したのは、プトレマイオス以降のことです。

プトレマイオスはうさぎ座のα星アルネブについて、土星と火星のような性質を持つと言及しています。占星術師ロブソンによれば、この星は頭の回転の速さを与えるとされています。

興味深いことに、うさぎ座はキリスト教の復活祭の時期を表すアクロニカルライジング(日没時に上昇すること)の星座でもあります。復活祭のモチーフであるうさぎと卵は、エジプトの神聖なうさぎの伝承から受け継がれたものと考えられており、生命、春の訪れ、再生を象徴しています。

プトレマイオス48星座の一部として、うさぎ座は古代から現代まで受け継がれてきた天文学の歴史的遺産なのです。この小さな星座は、オリオン座の足元で控えめに輝きながらも、豊かな神話と文化的背景を持つ魅力的な存在として、冬の夜空を彩り続けています。

 

参考)うさぎ座 - 新興出版社啓林館・文研出版 万博プロジェクト

 

 


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