アケルナルは、エリダヌス座で最も明るく輝く一等星です。全天21個ある一等星の中でも9番目の明るさを誇り、視等級は0.46等とされています。この星の名前は、アラビア語で「川の果て」を意味する「ākhir an-nahr(アーヒル・アン=ナハル)」に由来しており、エリダヌス座が表す天の川の最南端に位置することからこの名が付けられました。
参考)アケルナル - Wikipedia
この星の正式なバイエル符号はエリダヌス座α星(α Eridani)で、2016年に国際天文学連合によってAchernarという固有名が正式に承認されています。アケルナルは、古代ギリシア人に知られていなかった唯一の一等星であり、西洋の観測記録に最後に登場した一等星という歴史的な特徴も持っています。
スペクトル型はB6Vpe型に分類され、表面温度は約14000度という高温の星です。直径は太陽の約9倍から12倍とされ、太陽よりも約3150倍、あるいは約1300倍明るいと推定されています。地球からの距離は約139光年から145光年の間とされ、ヒッパルコス衛星による年周視差の測定値から算出されています。
参考)http://www.sci-museum.kita.osaka.jp/~kato/8mus_pla/brights.html
アケルナルは二つの恒星から成る連星系で、主星はエリダヌス座α星A、伴星はエリダヌス座α星B(非公式にアケルナルBとも呼ばれる)と名付けられています。この連星系は、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTによる観測で発見されました。
参考)エリダヌス座の探索1(他天体へのポータル、わたしはわたしでは…
主星アケルナルAは質量が太陽の約7倍もある青く輝く恒星で、スペクトル型はB6Vpe型です。一方、伴星アケルナルBはスペクトル型がA0V-A3VのA型主系列星とされ、質量は太陽の約2倍、主星よりも小さく低温の星です。伴星は主星から約12.3天文単位(12au)離れた位置を公転しており、公転周期は少なくとも14~15年と推定されています。
国際天文学連合による恒星命名の詳細 - Wikipedia アケルナルの項目
連星系であるアケルナルは、国際天文学連合によってワシントン重星カタログ(WMC)に登録されています。国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループは、連星系の場合、最も明るい恒星にその名称を付与することを定めており、2016年6月30日にAchernarがエリダヌス座α星Aの固有名として正式に承認されました。
アケルナルの最も興味深い特徴の一つは、その極めて扁平な楕円形の形状です。2003年にヨーロッパ南天天文台のVLT干渉計による観測により、アケルナルAが赤道方向に極めてつぶれた形をしていることが判明しました。
参考)https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/3886
具体的には、赤道方向の直径は太陽の約12倍、極方向は約7.7倍であり、赤道直径の方が極直径よりも56%も長くなっています。この扁平な形状は、アケルナルが秒速約250kmという猛スピードで自転しているためと考えられています。これは太陽の自転速度(秒速約1.8km)と比較すると、実に約139倍もの速さです。
自転軸は地球に対して約65度傾いており、この高速自転が遠心力によって星を楕円形に変形させているのです。同じような形状の恒星としては、しし座のレグルスが知られています。ただし、アケルナルは連星系であるため、伴星アケルナルBの重力的影響も無視できないとされています。
アケルナルは天球の南の方に位置しているため、カノープス以上に日本からは見えにくい星です。アケルナルの赤緯は-57°14′(2000年)であり、北緯約33度より北では地平線より上に昇って来ません。そのため、日本では鹿児島・宮崎・高知南部・熊本中部・長崎南部・大分南部・愛媛南部・伊豆諸島南部以南の地域でしか見る事ができません。
参考)https://turupura.com/guide/star/akerunaru.html
本州では地平線の下にいて観測できませんが、沖縄のように緯度が低い地域(北緯32°以南)ではアケルナルがかろうじて地平線上に顔を出し、条件が整えば観察可能です。大分県では、佐伯市の最南端・深島、別府市の鶴見岳山頂、くじゅう牧ノ戸峠の三か所で観測記録があり、標高1000m以上の場所では大気差の効果により地平線下のアケルナルが浮き上がって見えることがあります。
参考)秋の一等星はフォーマルハウトだけ?寂しい秋の星空や星座の楽し…
観測時期としては、アケルナルは秋の星として分類され、初冬の頃の夜に南の空低くに見ることができます。2000年3月までは、アケルナルとフォーマルハウトが共に他の一等星から天球上で最も離れた位置にあったため、秋の夜空では周囲に明るい星が少ない孤立した印象を受けます。
エリダヌス座は、ギリシャ神話の「パエトーンの墜落伝説」に由来する星座です。太陽神ヘリオスの息子パエトーンが、父の太陽の馬車を操ろうとして失敗し、ゼウスの雷によって川へと墜落したとされています。その川が、エリダヌス座として夜空に描かれたのです。
参考)Eridanus(エリダヌス座)について知ろう!【天を流れる…
神話上のエーリダノス川は、紀元前700年頃のヘーシオドスの時代からギリシア文学で語られてきましたが、それがどこの川を指すのかについては諸説あり、意見の一致が見られませんでした。ギリシャ神話においては、世界の果てをぐるりと取り巻く大河オーケアノスとも関連づけられ、天の川の流れを表現する星座として認識されていました。
参考)エリダヌス座 - Wikipedia
エリダヌス座の神話とアケルナルの詳細解説
アケルナルという名称の歴史には興味深い変遷があります。中世までエリダヌス座の本来の南の端はθ星(アカマル)であり、「アカマル」(Acamar)という呼称自体がアラビア語で「川の果て」を意味する「ākhir al-nahr(アーヒル・アン=ナフル)」に由来していました。ルネサンス期にエリダヌス座が南に拡張された時に、「川の果て」も南へ移動し、現在のα星が新たに「川の果て」となり、アカマル(Acamar)と同じ音に由来する「アケルナル」(Achernar)と呼ばれるようになったのです。
中国では、アケルナルはζ星とη星と共に「水委」と呼ばれるアステリズムをなしており、その中でアケルナルは1番目の恒星とされているため「水委一」と呼ばれています。
アケルナルは全天21個ある一等星の中で、いくつかの点で特異な存在です。まず、アケルナルは古代ギリシア人に知られていなかった唯一の一等星であり、西洋の観測記録に最後に登場した一等星という歴史的な特徴があります。これは、アケルナルの赤緯が非常に南にあるため、地中海地方の古代文明からは観測できなかったことが理由です。
明るさの面では、視等級0.46等のアケルナルは秋の一等星フォーマルハウト(視等級1.16等)よりもさらに明るい星です。しかし、本州では地平線の下にいて見ることができないため、日本では秋の一等星といえばフォーマルハウトのみと認識されています。
| 星名 | 視等級 | 星座 | 色 | 日本での観測 |
|---|---|---|---|---|
| アケルナル | 0.46等 | エリダヌス座 | 青白 | 鹿児島以南のみ |
| フォーマルハウト | 1.16等 | みなみのうお座 | 白 | 全国で観測可能 |
| カノープス | −0.72等 | りゅうこつ座 | 白 | 本州南部以南 |
2000年3月までは、アケルナルとフォーマルハウトが共に他の一等星から天球上で最も離れた位置にありました。それ以降は、さそり座のアンタレスが他の一等星から最も離れた位置にありますが、アンタレスを含むさそり座には多くの2等星があるのに対し、アケルナルとフォーマルハウトの周囲には明るく見える恒星がないという特徴があります。
アケルナルはBe星の一種でもあり、イオン化されているガス円盤が存在しているのがこの種の星の共通の特徴です。円盤は安定しておらず、定期的に恒星に落下していきます。アケルナルAの円盤の最大偏光が2014年9月に観測され、その後は減少していることが確認されています。

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