ポンプ座神話と構成する星|特徴・位置・見つけ方・銀河団

南天の暗い星々が織りなすポンプ座は、18世紀に誕生した科学の象徴です。真空ポンプを形どったこの星座には、どのような成り立ちと天体が秘められているのでしょうか?

ポンプ座の神話と構成する星

この記事で分かること
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ポンプ座の由来と歴史

18世紀フランスの天文学者ラカーユが設定した科学実験をモチーフにした新しい星座

構成する主要な恒星

α星を中心に4~5等星で形作られる暗い星々の配置と特徴

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観測できる天体

230個以上の銀河からなるポンプ座銀河団と重星の魅力

ポンプ座に神話は存在しない理由

 

ポンプ座は古代から伝わる星座ではなく、18世紀半ばにフランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカーユによって考案された比較的新しい星座です。そのため、ギリシャ神話やローマ神話のような古代からの神話や伝説は一切存在しません。

 

参考)ポンプ座|やさしい88星座図鑑

ラカーユは1751年から1752年にかけて南アフリカの喜望峰に滞在し、南天の観測を行いました。この観測で約10,000個の恒星を記録し、1756年に1,930個の恒星カタログと星図を出版しました。このとき、南天の空に新たに14個の星座を設定し、ポンプ座もそのひとつとして誕生したのです。

 

参考)ニコラ=ルイ・ド・ラカーユ - Wikipedia

ラカーユが設定した星座の特徴は、神話上の生き物や英雄ではなく、当時の最新科学実験装置や測量器具をモチーフにしている点です。ポンプ座、けんびきょう座ぼうえんきょう座など、科学の発展を讃える意図が込められています。ポンプ座のモチーフとなったのは、水を汲み上げるポンプではなく、科学実験において真空状態を作り出すための真空ポンプでした。

 

参考)ポンプ座 - Wikipedia

ポンプ座の由来と真空ポンプの歴史

ポンプ座の名称は、ラテン語の「Antlia」に由来し、これは「ポンプ」を意味します。当初ラカーユは1756年の星図で「la Machine Pneumatique」というフランス語名を使用しており、ラカーユの死後1763年に刊行された著書では「Antlia Pneumatica」とラテン語化されました。現在使われている短縮形の「Antlia」は、イギリスの天文学者ジョン・ハーシェルが1844年に提案し、1845年のカタログで正式に採用されたものです。

真空ポンプの歴史は17世紀に遡ります。1654年にドイツのオットー・フォン・ゲーリケが世界初の真空ポンプを発明し、有名なマクデブルクの半球の実験を行いました。この実験では内部を真空にした2つの半球を何頭もの馬で引っ張っても外れないことを示し、真空の力を視覚的に証明しました。

 

参考)真空ポンプ - Wikipedia

ラカーユが星座絵に描いたポンプは、フランスの発明家ドニ・パパンが1670年代前半に使用した単気筒式のタイプでした。1801年にドイツの天文学者ヨハン・ボーデが刊行した星図『ウラノグラフィア』では、パパンがロンドンでロバート・ボイルと共同で改良した2気筒式の真空ポンプが描かれています。このように、ポンプ座は実験物理学を象徴する星座として設定されたのです。

ポンプ座を構成する主要な恒星の特徴

ポンプ座は4等星がただ1つで、主に5等星から構成される非常に暗い星座です。最も明るい恒星はポンプ座α星(アルファ・アントリアエ)で、視等級は約4.25等から4.28等とされています。この星は橙色の巨星で、ポンプ座の中心部分に位置しています。

 

参考)ポンプ座ってどんな星座?【神話も紹介】

ポンプ座の形状は、4~5個の暗い星が少し歪んだ「へ」の字に並んで形作られています。γ星(ガンマ・アントリアエ)は4.25等級で2番目に明るい星です。これらの暗い星々により、都会で見つけるのは非常に困難な星座となっています。

 

参考)星座八十八夜 #78 ラカイユの科学実験シリーズ「ポンプ座」…

  • ポンプ座α星:4.25~4.28等、橙色巨星、ポンプ座で最も明るい
  • ポンプ座γ星:4.25等、2番目に明るい恒星
  • ポンプ座δ星:5.57等、重星として知られる
  • ポンプ座ε星:4.51等、比較的明るい星
  • ポンプ座ζ星:重星、6.2~7.0等星

ポンプ座δ星とζ星は重星として観測の対象となっています。δ星は5.6~9.6等星の組み合わせ、ζ星は6.2~7.0等星の組み合わせで構成されています。これらの重星は、望遠鏡での観測に適した天体です。

 

参考)春の星座「ポンプ座」の見つけ方を紹介します

ポンプ座の位置と春の星空での見つけ方

ポンプ座は南天に位置し、春の星座として観測されます。20時の南中時刻は4月16日から4月17日ごろで、正中高度は約19度から23度と非常に低い位置にあります。面積は238.90平方度で、88星座中62番目の大きさです。

具体的な見つけ方として、冬の大三角を作るおおいぬ座の1等星シリウスと春の大三角を作るおとめ座の1等星スピカのちょうど真ん中あたりに位置します。また、南西から南東にかけて天の川に添うように横たわる巨大なうみへび座に対して、コップ座のちょうど反対側にあります。

 

参考)https://seiza.imagestyle.biz/haru/ponpumain.shtml

より詳しい探し方は以下の通りです。しし座の1等星レグルスから南へ下がり、うみへび座の2等星アルファルドを通過して、ほ座の2等星λ星にたどり着きます。ほ座の2等星のすぐ上にポンプ座の5等星ε星があり、うみへび座との間に4等星のα星が見つかります。

項目 詳細
赤経 10h14m
赤緯 -32°
観測時期 春(3~4月頃)
正中高度 約19~23°
肉眼星数 約9~40個

南半球では秋から冬(3月~6月頃)に観測しやすく、北半球では春の夜空(3月~4月頃)に低い位置で観測できます。ただし、南の空での高度が低く、暗い星ばかりのため、都会で見つけるのは極めて困難です。

 

参考)ポンプ座 - 春の星座 - 星空 - Yahoo!きっず図鑑

ポンプ座銀河団と観測できる深宇宙天体

ポンプ座の領域には、ポンプ座銀河団という重要な銀河団が存在します。この銀河団には、2つの巨大な楕円銀河NGC 3268(中央)とNGC 3258(右下)を含め、230個以上の銀河が存在することが知られています。

 

参考)ダークエネルギーカメラがとらえたポンプ座銀河団

NGC 3268とNGC 3258は合体過程にあると考えられており、銀河団の中心部に位置しています。この銀河団は、ダークエネルギーカメラによる観測でその詳細な構造が明らかにされており、無数の大小の銀河がきらめく様子が撮影されています。ポンプ座銀河団の観測は、銀河の進化や銀河団の形成過程を理解する上で重要な研究対象となっています。

 

参考)きらめく大小の銀河たち ダークエネルギーカメラが撮影した“ポ…

  • NGC 3268:ポンプ座銀河団の中心に位置する巨大楕円銀河
  • NGC 3258:NGC 3268と合体しつつある楕円銀河
  • 230個以上の銀河が集まる銀河団

ポンプ座の重星も観測対象として興味深い天体です。δ星は5.6~9.6等星の組み合わせ、ζ星は6.2~7.0等星の組み合わせで、中小口径の望遠鏡でも分離して観測できる可能性があります。これらの重星は、アマチュア天文家にとって観測技術を磨く良い対象となります。

ダークエネルギーカメラがとらえたポンプ座銀河団 - アストロピクス
ポンプ座銀河団の詳細な画像と解説が掲載されています。NGC 3268とNGC 3258を中心とした銀河団の美しい姿を確認できます。

 

ポンプ座 - Wikipedia
ポンプ座の由来と歴史について、ラカーユの観測から現在の学名が確立するまでの詳細な経緯が記載されています。真空ポンプの種類の変遷も確認できる参考資料です。

 

 


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