アルゴス 意味と神話 孔雀の羽 巨人の目の物語

ギリシャ神話の百の目を持つ巨人アルゴスは、監視と忠誠の象徴として知られています。その名前の語源から孔雀の羽との深い関係、さらに星座や都市名としての意味まで、アルゴスにまつわる多彩な伝承を知っていますか?

アルゴス 意味と神話

アルゴスの多彩な意味と神話世界
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百の目を持つ巨人

全身に100個の目を備え、交代で眠るため常に目覚めている監視の化身

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孔雀の羽との神話的結びつき

女神ヘラが巨人の目を孔雀の羽に移したことで生まれた美しい模様

「輝く」「素早い」を意味する名前

古代ギリシャ語で白く輝くものや素晴らしさを表す言葉が語源

アルゴス 巨人の由来と百の目

 

アルゴスは、ギリシャ神話に登場する全身に100個の目を持つ巨人として知られています。彼の父親については諸説あり、アルゴスの王アゲノール、王子アレストル、河神イナコスなど複数の伝承が存在します。アルゴスという名前は「普見者(パノプテース)」とも呼ばれ、その異名の通り彼は万物を見通す能力を持っていました。

 

参考)アルゴス - Wikipedia

この巨人の最大の特徴は、100個もの目が交代で眠るため、アルゴス自身は時間的にも空間的にも完全に死角がないという点です。別の伝承では、背中に第三の目があるとも、後頭部に二つ目があるとも言われています。アルゴスは神々の命を受けて、上半身は人間の女で腰から下は蛇の形をした怪物エキドナや、アルカディア地方を荒らした雄牛の怪物を退治するなど、数多くの手柄を立てた英雄でもありました。

 

参考)アルゴスとは何? わかりやすく解説 Weblio辞書

アルゴスの名前の語源は、古代ギリシャ語の形容詞「ἀργός(argós)」に由来し、「輝ける白」「素晴らしい」という意味や、比喩的には「素早い」という意味を持っています。この言葉は印欧祖語の「白い、輝く」を意味する語根から派生しており、ラテン語の「argentum(銀色)」やヒッタイト語の「白い、明るい」と同根です。

 

参考)アルゴス (犬) - Wikipedia

アルゴス ヘラとイオの神話物語

アルゴスが最も有名な物語は、女神ヘラの命令で牝牛に変身したイオを見張る役目を担った逸話です。主神ゼウスがニュムペーの女性イオと恋の戯れをしていた際、それを察知したゼウスの正妻ヘラがイオを牝牛に変えてしまいました。ヘラはアルゴスにイオの監視を命じ、百の目は昼夜を問わず交代で牝牛の番をし続けました。

 

参考)アルゴスとは? 意味や使い方 - コトバンク

ゼウスはイオを不憫に思い、部下である伝令神ヘルメスにアルゴス退治を命じます。ヘルメスは牧童のふりをしてアルゴスに近づき、巧みに信頼を得ました。そしてヘルメスは相手を眠らせることができる葦笛を発明し、その笛をアルゴスの前で吹いて百個の目を全て眠らせることに成功します。アルゴスが完全に眠ったことを確認したヘルメスは、剣でアルゴスの首を切り落として殺害しました。

 

参考)イオの絵画13点。ゼウスとの情事をヘラに知られ、牝牛となった…

この功績により、ヘルメスには「アルゲイポンテース(Argus-slayer、アルゴスを殺した者)」という異名が与えられています。しかし牝牛に変えられたイオは解放されたものの、ヘラが送り込んだあぶに追われ続け、結局ゼウスの手に戻ることはありませんでした。

 

参考)https://dali.jp/archives/column/8218

アルゴス 孔雀の羽に宿る目

アルゴスが殺された後、女神ヘラは忠実な部下を哀れみ、彼の百個の目を取り出して自分が飼っていた孔雀の羽に取り付けたという伝説があります。これが孔雀の羽に見られる美しい目のような模様の由来とされており、孔雀がヘラの聖なる象徴とされる理由となっています。

 

参考)Let's 怪物退治! ~アルゴス編~ - Εὕρηκα!

孔雀はギリシャ神話において女神ヘラに捧げられた鳥であり、その華麗さと権威を象徴する存在として描かれてきました。孔雀の羽に散りばめられた目は、ヘラがあらゆる方向に目を光らせ、ゼウスを含むすべてを見張る存在であることを示しているのです。

 

参考)ギリシャ神話における「孔雀」の伝説

ギリシャ神話における「孔雀」の伝説(孔雀とヘラ、アルゴスとの関係について詳しく解説)
興味深いことに、孔雀の尾羽が一年で生え変わることから、ヨーロッパでは不死と再生の象徴ともされました。また、インドでは毒蛇を平気で食べる孔雀が、仏教における三毒を浄化してくれる存在として孔雀明王(マハーマーユーリー)という女神になっています。孔雀の羽の目は、アルゴスの神話を通じて監視や忠誠心を象徴するだけでなく、破邪性や不死性といった多様な意味を持つようになりました。

 

参考)富と繁栄の象徴で神聖な存在とされる「孔雀」のモチーフと意味

アルゴス 星座と船大工の伝承

アルゴスという名前は巨人だけでなく、ギリシャ神話に登場する大帆船「アルゴー号」にも関連しています。この船は、金羊毛を求める冒険に出た英雄イアソンのために、船大工のアルゴスが女神アテナの指導のもと建造した巨大な船です。船の名前は建造者アルゴスの名を取って「アルゴー」(「快速」の意)と名付けられ、神聖な樫の木でつくられた船首は人語を発することができたと伝えられています。

 

参考)アルゴ座|やさしい88星座図鑑

この船に乗り込んだ50人の英雄たちは「アルゴナウタイ」と呼ばれ、ヘーラクレース、双子のカストルポルックス、オルペウス、リュンケウスなど、ギリシャ神話で活躍する錚々たる面々が含まれていました。アルゴー号の物語は、南天の星座「アルゴ座」として天空にも刻まれています。

 

参考)アルゴー船 - Wikipedia

アルゴ座|やさしい88星座図鑑(アルゴー号の神話と星座の由来)
アルゴ座は2世紀にプトレマイオスによりまとめられた「トレミーの48星座」の1つですが、あまりに大きかったため、現在はりゅうこつ座とも座ほ座らしんばん座の4つに分割されています。このように、アルゴスという名前は巨人から船大工、そして星座へと、ギリシャ神話の中で多様な役割を担ってきました。

アルゴス 都市国家と現代での意味

アルゴスはギリシャ神話の登場人物だけでなく、古代ギリシャに実在した重要な都市国家の名前でもあります。古代ギリシアのアルゴリス地方に位置したこの都市は、神話伝説の世界で重要な位置を占め、ミケーネ時代にアカイア人の手でアクロポリスに城砦が築かれました。

 

参考)アルゴス (ギリシャ) - Wikipedia

アルゴスは前700年頃に全盛期を迎え、ペロポネソス半島東部のドーリア人支配の牙城となりましたが、前6世紀以降はスパルタと対立しながら次第に衰退していきました。現代のアルゴスはギリシャ共和国ペロポネソス地方東北部にある人口約2万5000人の都市として存続しており、アルゴリコス湾の奥から約6km離れた内陸に位置しています。

 

参考)https://www.rome2rio.com/ja/s/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%82%B9

現代において「アルゴス」という言葉は、英語では「argus」として「厳重な見張り人」という意味で使われています。これは百の目を持つ巨人アルゴスの神話に由来しており、常に警戒を怠らない監視者のイメージが現代まで受け継がれています。また、データ収集衛星システムにも「アルゴス」という名前が付けられており、地上を動く物体につけた発信器からの電波を人工衛星が受信し、その位置を追跡する機能は、まさに百の目を持つ巨人の監視能力を彷彿とさせます。

 

参考)アルゴス - シナリオの書き方まとめwiki - atwik…

アルゴスの意味 由来・説明 文化的背景
百の目の巨人 全身に100個の目を持ち、交代で眠るため常に目覚めている ギリシャ神話における監視と忠誠の象徴
孔雀の羽の模様 ヘラがアルゴスの目を孔雀の羽に移した 女神ヘラの権威と監視力の表現
船大工と船の名前 アルゴー号を建造した船大工の名前に由来 「快速」を意味し、冒険の象徴
古代都市国家 ペロポネソス地方の重要な都市 前700年頃に全盛期を迎えた
名前の語源 「輝ける白」「素晴らしい」「素早い」の意味 印欧祖語の「白い、輝く」に由来

このように、アルゴスという名前は古代から現代まで、神話、地理、言語、技術の各分野で多彩な意味を持ち続けています。百の目を持つ巨人の物語は、監視や警戒といった概念を象徴的に表現し、孔雀の美しい羽の模様を通じて視覚的なイメージとしても私たちの文化に深く根付いているのです。

 

 


アルゴスの戦士