や座神話と構成する星【全天第3位の小星座】

や座は全天で3番目に小さいながら、古代から知られる星座です。愛の神エロスや英雄ヘラクレスの矢という神話を持ち、α星シャムやγ星、球状星団M71などで構成されています。この小さな矢の星座にはどんな秘密が隠されているのでしょうか?

や座の神話と構成する星

や座の特徴
全天で3番目に小さい星座

4等星と5等星で構成される小さな星座ですが、Y字の形が見つけやすく紀元前1200年頃から知られています

💘
エロスの愛の矢

愛の神エロスが放つ矢がモデルという説が最も有名で、恋に落とす黄金の矢と鉛の矢の伝説があります

🏹
ヘラクレスが放った矢

英雄ヘラクレスがプロメテウスを苦しめる鷲に向けて放った矢という別の神話も存在します

や座を構成する主な星の特徴

 

や座は4等星と5等星のみで構成される暗い星座ですが、小さくまとまったY字形が特徴的です。全天88星座の中で3番目に小さいながら、紀元前1200年頃にはすでに知られていた古い歴史を持つ星座です。

 

参考)https://seiza.imagestyle.biz/sinwa/ya.shtml

や座の中で最も明るいのはγ(ガンマ)星で、3.47等級の赤色巨星です。この星は干渉計による研究で大きさが0.00618秒角、実際には0.26天文単位であることがわかっています。当初はスペクトル型B9であったと推測されていますが、水素核融合とヘリウム核融合を経て進化し、炭素と酸素からなるコアを持つようになりました。遠くない未来にミラ型変光星になると考えられており、最終的には地球サイズの白色矮星になると推測されています。

 

参考)や座ってどんな星座?【神話も紹介】

α(アルファ)星は4.39等級で、や座の中では3番目に明るい星です。この星には**シャム(Sham)**という固有名がつけられており、アラビア語で「矢」を意味する「sahm(サフム)」に由来しています。2016年9月12日に国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループによって正式に承認されました。シャムは太陽系から約380光年の位置にある黄色輝巨星で、その光度と表面温度から既にケフェイド型変光星となる段階にあるはずですが、未だそうなっていない理由は解明されていません。
参考)や座アルファ星 - Wikipedia

や座に存在する球状星団M71

や座には球状星団M71(NGC 6838)が存在します。この天体は地球から約13000光年の距離にあり、球状星団としては星がまばらで集中度が非常に低いという特徴があります。シャプレー・ソーヤー集中度でクラスX~XIに分類され、球状にまとまっていないため、20世紀半ばまでM71が球状星団か散開星団かという点で意見が分かれていました。

 

参考)M71 (天体) - Wikipedia

ハーロー・シャプレーは「最も密集した散開星団」として分類していました。ジェームズ・カフィーは1943年にはM68のような集中度の低い球状星団としていましたが、1959年にはこの星団の色-等級図が散開星団に似ていることを発見しています。通常の球状星団と異なり、星団を構成する星の成分に金属が多いこと、多くの球状星団に共通すること座RR型変光星が見当たらないことなどから、散開星団ではないかという疑念が拭いきれませんでした。

 

参考)M71(球状星団、や座)

しかし21世紀現在では、スペクトルの詳細な比較などから、M71は非常に緩い集中度の球状星団であると考えられています。双眼鏡では、やや広がった丸い星雲状に見え、口径8cmの望遠鏡では微星が見え始めてきます。口径20cmの望遠鏡では中心部が球状になっている様子がわかり、口径30cmでは周辺部が完全に分離でき見事な眺めになります。

や座にまつわる神話:愛の神エロスの矢

や座の神話には複数の説がありますが、最も有名なのは愛の神エロス(キューピッド)が放つ矢だというものです。エロスはローマ神話ではキューピッドと呼ばれ、美と愛の女神アフロディーテ(ビーナス)の息子とされています。古い時代においては凛々しい青年の姿とされていましたが、後世になって子どもの姿で描かれるようになりました。

 

参考)https://ryutao.main.jp/mythology_60.html

エロスが持つ矢には不思議な力がありました。彼はいつも2本の矢を持っており、1本が黄金の矢、もう1本が鉛の矢です。黄金の矢で射られると、その時見た人を愛さずにはいられなくなり、鉛の矢で射られると、反対にその時見た人から逃げ回るようになるという力を持っていました。

 

参考)夜空に放たれた一本の小さな矢「や座」〜エロースとプシュケーの…

イアソンアルゴ遠征隊の物語では、このエロスの矢が重要な役割を果たします。イアソンがコルキスの国で黄金の毛を持つヒツジを手に入れようとした時、三人の女神ヘラ、アテナ、アフロディーテが影ながらイアソンを援助しようとしました。アフロディーテの考えでエロスはアイアーテス王の娘メディアに向けて愛の矢を放ち、メディアはたちまちイアソンを恋い慕うようになりました。その結果、メディアはイアソンに黄金の毛を持つヒツジを渡し、イアソンは目的を達することができたのです。

や座の別の神話:ヘラクレスとプロメテウス

や座にはもう一つの神話があり、英雄ヘラクレスがプロメテウスを救うために放った矢だという説です。プロメテウスは人間に火を与えたことで大神ゼウスの怒りを買い、岩山に鎖で縛られ、毎日大鷲に肝臓をついばまれる罰を受けていました。

 

参考)や座(Sagitta)/星座の基本を学ぼう② » 趣味は天体…

プロメテウスは不死身であったため、昼間に啄まれた肝臓は夜のうちに再生し、この苦痛は連日続きました。そのプロメテウスを助けようとして、ヘラクレスが鷲に向かって放った矢がや座のモデルになったとされています。星座絵を見ると、ヘルクレス座が鷲に向かって矢を射たように見える配置になっています。

 

参考)https://mirahouse.jp/begin/constellation/Sagitta.html

この大鷲は後に「わし座」になったと言われており、や座はわし座の隣に位置しています。このように星座の配置自体が神話の物語を表現しているという興味深い関係があります。また、別の伝承では、ゼウスに使いとして付き添っていた黒鷲が携えていた雷電の矢だという説も存在します。

 

参考)夏の星座~わし座

や座の見つけ方と観測のポイント

や座は夏の大三角の中に位置しており、わし座とはくちょう座の間にあります。8月下旬の夜8時頃には南の空高くに見ることができます。具体的には、わし座のα星アルタイル(彦星)とはくちょう座のくちばしの星アルビレオのちょうど中間あたりに位置しています。

 

参考)や座|やさしい88星座図鑑

4つの星が小さな細長いY字の形に並んでおり、横倒しのYの形をした星の列として見つけることができます。全天で3番目に小さい星座ですが、星が小さくまとまった形をしているので、空が暗ければ意外に目につきやすく覚えやすい星座です。

市街地などの空が明るい場所では肉眼で見つけるのは難しいですが、双眼鏡を使うと視野の中にちょうど収まる大きさで観察しやすくなります。や座は天の川の中に位置しているため、双眼鏡で覗くと肉眼では見えていない細かい星が見えてくる可能性があります。7月の夜9時頃なら東の空、8月から9月なら頭の真上から南西の空に見えるため、季節によって観察する方角を変える必要があります。

 

参考)夏の大三角・天の川・さそり座の見つけ方!方角や星座の神話も紹…

 

 


アルファックス クッション 低反発 円形 ドーナツ型 産後 痔 お医者さんの円座クッション ブルーグレー