コンパス座神話と構成する星の特徴や見つけ方

コンパス座は18世紀にラカイユが制定した南天の小さな星座です。神話を持たない新しい星座ですが、α星やβ星などの構成する星や、X線源や惑星状星雲など興味深い天体が存在します。その特徴や見つけ方を知りたくありませんか?

コンパス座神話と構成する星

この記事のポイント
神話を持たない新しい星座

18世紀にフランスの天文学者ラカイユが制定した科学時代の星座で、製図用具のコンパスがモチーフ

α星・β星・γ星で構成

3等星のα星を頂点に、細長いV字型に並ぶ3つの主要な星がコンパスの形を表現

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興味深い天体が多数

惑星状星雲NGC5315やX線源コンパス座X-1など、特徴的な天体を含む南天の星座

コンパス座の神話と歴史的背景

 

コンパス座は、1756年にフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカイユによって設定された比較的新しい星座です。 ラカイユは『Histoire de l'Académie royale des sciences』に掲載した星図の中で、フランス語で「le Compas」という名称を初めて使用しました。 その後1763年に刊行された著書『Coelum australe stelliferum』ではラテン語化された「Circinus」と名称が変更され、現在に至っています。

 

参考)コンパス座ってどんな星座?【神話も紹介】

この星座が制定された18世紀半ばは大航海時代であり、航海に関係する道具をモチーフにした星座が数多く作られた時代でした。 ラカイユは既に設定されていたみなみのさんかく座を測量機器に見立て、じょうぎ座と共に製図用具が並ぶようにコンパス座を星図に描いたとされています。 このコンパスは方位磁針ではなく、円を描くための製図用具である両脚規を表しています。

 

参考)コンパス座 - Wikipedia

古代ギリシャ神話に登場する星座と異なり、コンパス座には伝説や神話が存在しません。 これは科学と探検の時代に誕生した星座であり、「冒険」「発見」「探求心」を象徴する星座として位置づけられています。 ラカイユは全天88星座の中で14もの星座を18世紀に設定しており、その中でコンパス座は最も小さい星座となっています。

 

参考)コンパス座とは?見つけ方や見どころ

1922年5月にローマで開催された国際天文学連合(IAU)の設立総会で、コンパス座は現行の88星座のうちの1つとして正式に選定されました。 星座名は「Circinus」、略称は「Cir」と定められ、現代の天文学において公式な星座としての地位を確立しています。

コンパス座を構成する主要な星の特徴

コンパス座は3等星から5等星で構成された暗い星座ですが、その主要な星は特徴的なV字型の配列を形成しています。 2022年4月現在、国際天文学連合が認証した固有名を持つ恒星は1つもありませんが、α星、β星、γ星がこの星座の骨格を形作っています。

α星(アルファ星) はコンパス座で最も明るい恒星で、見かけの等級は3.19等です。 この星はりょうけん座α²型変光星に分類され、高速で自転しているroAp星として知られています。 スペクトル型はA7VpSrCrEuで、地球からの距離は約54光年です。 星座絵では、コンパスの頭の中心部に位置しており、望遠鏡(口径6cm程度)があれば8.6等級の伴星を分離して観察できます。
参考)コンパス座アルファ星 - Wikipedia

β星(ベータ星) は見かけの明るさが4.057等の4等星で、コンパス座で2番目に明るい恒星です。 この星は2015年に、0.56太陽質量の褐色矮星の伴星を発見したとする研究結果が発表されており、連星系である可能性が示されています。 β星はコンパスの針の部分に該当する位置にあります。​
γ星(ガンマ星) は、見かけの明るさ4.96等のB型主系列星のA星と5.59等でF型主系列星のB星からなる連星系です。 γ星はコンパスの鉛筆の部分に位置し、β星とともにV字の開いた部分を形成しています。
参考)コンパス (星座)について詳しく解説 - サイエンス・ハブ

これら3つの星が描く配列は単純でありながら、まさに本物のコンパスの形を的確に表現しており、製図用具としてのコンパスをイメージさせる形状となっています。

コンパス座の見つけ方と観測条件

コンパス座は南天の星座であり、日本の多くの地域では観察することができません。 日本国内でこの星座を見るためには、沖縄県の宮古島や石垣島まで行く必要がありますが、沖縄県であっても地平線ギリギリの低いところに現れるのみです。 20時南中は6月30日で、観測に適した時期は夏季の6月下旬となっています。

コンパス座をじっくりと観察するのであれば、オーストラリアやニュージーランドのような南半球の国がおすすめです。 この星座の面積は93平方度で、全天88星座の中で85位、4番目に小さな星座に分類されています。

コンパス座を見つけるには、ケンタウルス座の1等星やみなみのさんかく座を目印にすると良いでしょう。 ケンタウルス座の足先で輝く1等星「リゲル・ケンタウルス(リギル・ケンタウルス/アルファ・ケンタウリ)」と「ハダル」、そしてみなみのさんかく座に囲まれたエリアに、コンパス座は位置しています。 特に、全天でも3番目の明るさを誇るリゲル・ケンタウルスは簡単に見つけられるため、その傍に細いV字形に並ぶ3つの星を探すことでコンパス座を発見できます。

 

参考)https://seiza.imagestyle.biz/minami/konpasu.shtml

コンパス座は天の川の中に位置しており、他の星々に紛れてしまっているため、発見するには注意深く探す必要があります。 できるだけ灯りの少ない場所で観測することが推奨され、目を暗闇に慣らす時間(15分程度)を確保することも重要です。 観測には星図またはスマートフォンの星座アプリ、双眼鏡(10×50程度推奨)、赤色ライト、メモ帳と筆記用具、防寒具などの装備があると便利です。

 

参考)コンパス座

コンパス座の隣り合った星座には、おおかみ座、ケンタウルス座、じょうぎ座、はえ座、ふうちょう座、みなみのさんかく座があります。

コンパス座に存在する天体の見どころ

コンパス座には明るい星は少ないものの、興味深い天体がいくつか存在しています。代表的な天体として、惑星状星雲NGC5315が挙げられます。 NGC5315は比較的若い惑星状星雲で、中心部は緑色、周囲は赤色に光る幻想的な姿をしています。 中心星はコンパス座α星の西南西5.2度に位置し、等級14.2で輝いており、取り巻く星雲は見かけの等級9.8です。

 

参考)NGC 5315とは - わかりやすく解説 Weblio辞書

この惑星状星雲は1883年に天文学者ラルフ・コープランドによって発見され、「首かざり星雲」とも呼ばれています。 中央星のスペクトル分類はWC4で、水素が欠乏し有効温度は76-79 kKと推定されています。 口径15cm前後の望遠鏡で覗くと、惑星状星雲の特徴であるディスクのような形を確認することができます。 地球からの距離は正確にはわかっていませんが、約2キロパーセク(6.5千光年)と推定されています。

コンパス座X線源(Circinus X-1) も注目すべき天体です。 この天体は中性子星と大質量星の連星系で、強力なX線を放出することで知られています。 2013年の終わりには、この中性子星で巨大なバーストが2か月にわたって起こり、非常に明るいX線源となりました。 その後の観測では、コンパス座X-1の周囲にX線で輝く4つの明るいリングが発見されました。
参考)コンパス座X-1を取り巻くX線リング - アストロアーツ

この4重リングは、X線バーストからのエコー(こだま)によるもので、星間に漂う塵の雲により反響したX線光エコーがリング状に見えています。 電波観測で判明している星間塵と雲の詳細と、エコーによる距離の分析によって、コンパス座X-1が地球から3万700光年の距離に位置していることが明らかになりました。

 

参考)X線バーストが作り出す奇妙な4重のリング

コンパス座銀河(Circinus Galaxy) は、セイファート銀河に分類される活動銀河核を持つ渦巻銀河です。 地球からの距離は約1400万光年で、最も近くにある活動銀河核の1つとして知られています。 天の川銀河から最も近いセイファート2型銀河(距離:1300万光年)であり、特に水素柱密度が大きな隠されたAGNとして研究されています。
参考)https://www.asj.or.jp/jp/activities/geppou/item/114-8_514.pdf

コンパス座と周辺星座の関係性

コンパス座の周辺には、同じくラカイユによって制定された文房具や測量機器をモチーフとした星座が集まっています。ラカイユが文房具に見立てた星座は、コンパス座だけではありません。 コンパス座のすぐ近くには「じょうぎ座」が設定されており、製図用具が並ぶように配置されています。

また、コンパス座を見つける目印となる「みなみのさんかく座」は、三角定規を表していたのではないかとも考えられています。 みなみのさんかく座は1597年に既に設定されていた星座で、ラカイユはこれを測量機器に見立てて星図を描きました。 このように、コンパス座の周辺はラカイユが夜空に描いたお道具箱のような領域となっています。

 

参考)http://azfa2.jp/tenmondai/hosinoshasin/seiza/haru/circinus.html

大航海時代に制定された航海に関係する道具をモチーフにした星座も周辺に多く存在します。 ぼうえんきょう座はちぶんぎ座けんびきょう座、らしんばん座、りゅうこつ座、とも座、ほ座などがその例です。 これらの星座は、18世紀の科学的探求心と航海技術の発展を反映したものとなっています。

コンパス座の天球上での位置は、ケンタウルス座α星のそばで、実際にコンパス座との境界に近い場所には、記録上最古と言われる超新星SN 185の残骸があります。 SN 185は、ケンタウルス座で185年12月7日に観測された超新星で、超新星残骸はHII領域RCW 86およびX線天体ケンタウルス座X-1(Cen X-1)として知られています。 中国の天文学者が客星として観測した記録が歴史書『後漢書』に残っており、記録が見つかっている最古の超新星として天文学史上重要な位置を占めています。

 

参考)SN 185 - Wikipedia

コンパス座は全天88星座の中で73番目に大きい星座で、決して目立つ星座とはいえませんが、周囲の明るい1等星や特徴的な星座を目印にすることで、その小さな姿を夜空に見つけ出すことができます。 南天の「航海用具三星座」の一つとしても位置づけられており、歴史的・文化的な背景を持つ興味深い星座となっています。

コンパス座の詳しい情報や星図 - ステラルーム
コンパス座の基礎情報、特徴、見つけ方、主な天体について詳しく解説されています。実際の観測に役立つ星図も掲載されています。

 

コンパス座X-1を取り巻くX線リングの観測結果 - アストロアーツ
チャンドラX線天文衛星が捉えたコンパス座X-1の詳細な観測データと、X線光エコーによる4重リングの形成メカニズムについて解説されています。

 

コンパス座の由来と歴史 - Wikipedia
18世紀にラカイユが考案した経緯や、国際天文学連合による正式な認定の歴史、主な天体のカタログ情報が網羅されています。

 

 


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