ろくぶんぎ座は17世紀末にポーランドの天文学者ヨハネス・ヘベリウスによって設定された比較的新しい星座であり、古代ギリシャ神話のような伝説は存在しません。この星座が生まれた背景には、天文学の歴史における痛ましい出来事が関わっています。
参考)ろくぶんぎ座とは?見つけ方や見どころ
1697年、ヘベリウスの自宅が火災で焼失した際、彼が長年愛用していた六分儀も灰燼に帰してしまいました。六分儀は天体観測や航海術において、星の高度を測定するための重要な観測機器であり、ヘベリウスにとっても研究に欠かせない大切な道具でした。
参考)ろくぶんぎ座|やさしい88星座図鑑
天文学者としての情熱と失われた観測機器への深い愛着から、ヘベリウスは「大切な六分儀を二度と失わないように」という願いを込めて、夜空にろくぶんぎ座を設定しました。星座と星座の隙間を埋める形で配置されたこの星座は、科学の進歩と探求心を象徴する存在となっています。
参考)星座八十八夜 #77 星座になった天体観測機器「ろくぶんぎ座…
ろくぶんぎ座を構成する主な星は、α星(アルファ星)、β星(ベータ星)、γ星(ガンマ星)の3つで、これらが「へ」の字のような形を描いています。この配置は実際の六分儀の形状に似ており、星座の名前の由来を視覚的に表現しています。
ろくぶんぎ座α星は、この星座で最も明るい恒星ですが、その等級は4.5等級程度と決して明るくはありません。この星は白色の巨星で、天の赤道付近に位置しています。ろくぶんぎ座β星は見かけの等級が5.08等と、肉眼で見える限界に近い淡い輝きを持つ恒星です。
参考)ろくぶんぎ座
星座全体としては5等級より明るい星が1つしかなく、88星座の中でも特に目立たない存在です。そのため、空の暗い場所でないと観測するのに苦労する星座として知られています。しかし、この控えめな輝きこそが、ろくぶんぎ座の特徴的な魅力となっています。
参考)ろくぶんぎ座|星や月|大日本図書
ろくぶんぎ座は、北をしし座、南をうみへび座、南東をコップ座に囲まれた位置にあり、春の夜空に観測できます。具体的には、しし座の1等星レグルスとうみへび座の2等星アルファルドの間に位置しています。
参考)ろくぶんぎ座 - Wikipedia
見つけ方のコツは、まずこの2つの明るい星を目印にすることです。レグルスとアルファルドを結んだ線を東へ平行移動するようにたどると、「へ」の字型に3つの星が並んでいるのがろくぶんぎ座です。日本では2月から6月頃にかけて観測でき、特に4月中旬から下旬が観測に適した時期となります。
参考)春の星座「ろくぶんぎ座」の見つけ方を紹介します
ろくぶんぎ座は天の赤道上に位置し、面積は313.5平方度で全天88星座中47位の大きさです。冬の大三角を作るこいぬ座の1等星プロキオンの東側にも位置しており、この明るい星を手がかりにすることもできます。ただし、暗い星で構成されているため、都市部の光害がある場所では観測が困難です。
ろくぶんぎ座には目立った星雲・星団は少ないものの、NGC3115という特徴的な銀河が存在します。この銀河は「スピンドル銀河」という愛称で呼ばれ、紡錘(スピンドル)のような独特な形状から名付けられました。
参考)ろくぶんぎ座
NGC3115は1787年2月22日にウィリアム・ハーシェルによって発見されたレンズ状銀河で、渦巻銀河を真横(エッジオン)から見た姿をしています。等級は約9等級で、メシエ天体以外の観測しやすい天体を集めたカルドウェルカタログにC53として収録されています。
参考)NGC 3115 - Wikipedia
この銀河は中型以上の望遠鏡で観測可能で、ろくぶんぎ座の南端に位置しています。うみへび座のα星アルファルドを手がかりに探すことができ、天体写真の撮影対象としても人気があります。通常のエッジオン銀河と異なり、独特の形状を持つため天文ファンの間で注目される天体となっています。
参考)スピンドル銀河(NGC3115)
六分儀は天体観測や航海術において極めて重要な角度測定器具で、天体と地平線との間の角度を精密に測定することができます。この測定により、船舶は大海原で自らの位置を特定することが可能になりました。
参考)六分儀 - Wikipedia
六分儀という名称は、円周の六分の一(60度)の形状に由来し、鏡の反射原理を利用することで最大120度までの角度測定が可能です。片手で保持できる設計により、船上のような不安定な場所でも正確な測定ができるのが大きな特徴です。天測航法では、南中時の太陽や北極星の高度を測定することで緯度を推定し、複数の天体観測から経度を計算していました。
参考)アポロ航海の道しるべ!「六分儀」の技術発達の歴史と今
興味深いことに、六分儀は宇宙時代にも活躍しています。アポロ計画では宇宙飛行士が六分儀を使った航法を行い、特にアポロ13号の事故時には、太陽と地球の明暗境界線に照準を合わせて地球帰還の航法に使用されました。現代でも、国際宇宙ステーションで六分儀を使った実験が行われており、緊急時のバックアップ航法として研究が続けられています。
ヨハネス・ヘベリウスは17世紀ポーランドの著名な天文学者で、ろくぶんぎ座を含む7つの星座を設定した人物です。彼は精密な天体観測を行い、当時の天文学の発展に大きく貢献しました。
参考)ろくぶんぎ座|星や月|大日本図書
ヘベリウスが設定した星座には、星座と星座の隙間を埋めるという実用的な目的がありました。ろくぶんぎ座の場合、しし座とうみへび座という2頭の怪物の間に配置されており、これらの強力な星座に守られているように見えます。しし座は「狂暴な人喰いライオン」、うみへび座は「9つの頭を持つ怪物」を表しており、どちらもヘルクレスに退治された神話上の存在です。
ヘベリウスは文芸を司る女神ムーサの一柱で天文を司るウーラニアーへの敬意も込めてこの星座を設定したとされています。災難から大切な観測機器を守るため、勇敢な2つの星座の間に六分儀を置くという発想は、天文学者としての彼の深い愛情と創造性を物語っています。
参考)ろくぶんぎ座の探索1(占星術と天文を司る女神、6角形と9角形…
ろくぶんぎ座は春の星座として分類され、日本では観測に適した時期が限られています。最も観測しやすいのは4月中旬から下旬で、4月20日頃に20時南中(真南の最も高い位置に来る)します。この時期、南中高度は約53度となり、観測に適した高さになります。
2月から6月頃にかけてがろくぶんぎ座の観測期間となりますが、季節によって見え方が変化します。春先の2月から3月にかけては東の空に現れ始め、4月には南の空で最も見やすくなります。5月から6月になると徐々に西の空へ移動し、夏が近づくと観測が難しくなっていきます。
観測の際には、周囲の明るい星を目印にすることが重要です。春の夜空では、しし座のレグルス(1等星)、うみへび座のアルファルド(2等星)、こいぬ座のプロキオン(1等星)といった明るい星が目印となります。これらの星は季節を通じて位置関係が変わらないため、ろくぶんぎ座を探す際の確実な手がかりとなります。星空が暗い郊外や山間部での観測が推奨され、都市部の光害がある場所では4等級から5等級の暗い星を見つけるのは困難です。
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