みなみのかんむり座の神話と構成する星の魅力を徹底解説

南の空で輝くみなみのかんむり座には、賢者ケイロンの冠という興味深い伝説があります。暗い星々で形成されるこの星座は、どのような物語と構造を持つのでしょうか?

みなみのかんむり座の神話と構成する星

みなみのかんむり座の魅力ポイント
👑
半円形の美しい形状

4等星が半円を描く小さな星座で、地平線近くに冠の形を浮かべます

📜
賢者ケイロンの伝説

ギリシャ神話に登場するケンタウロス族の賢者が身に付けた冠との言い伝え

古代からの星座

紀元前から知られるトレミーの48星座の一つで、歴史ある天体です

みなみのかんむり座の神話とケイロンの冠

 

みなみのかんむり座には、ギリシャ神話に登場する賢者ケイロンの冠という伝説が伝わっています。ケイロンは上半身が人間、下半身が馬というケンタウロス族の一人でしたが、他の乱暴な仲間たちとは異なり、非常に賢明で芸術や医学に精通していました。太陽神アポロンや月の女神アルテミスから医学や音楽を学び、古代ギリシャにその知識を広めた功績で知られています。

 

参考)みなみのかんむり座|星や月|大日本図書

この星座の冠は、ケイロンの功績を称えて贈られたものとする説があります。一方で、いて座になったとされるケイロンの頭上に輝いていた冠だという伝承も存在します。ケイロンはヘラクレスが放った毒矢に偶然当たり、不老不死の身でありながら永遠の苦しみを受けることになり、最終的に不老不死を解かれて天に昇っていて座となったと伝えられています。

 

参考)みなみのかんむり座とは何? わかりやすく解説 Weblio辞…

🌟 別の伝説の可能性
また、みなみのかんむり座は、いて座のモデルとなったケンタウロスが競技中に脱ぎ落とした花環であるという説も存在します。紀元前1世紀頃の古代ローマのガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスは、著書『Poeticon astronomicon』の中で「脚の先には輪をなすいくつかの星があり、これはいて座の花環で、遊んでいる最中に脱げ落ちたものだと言う者もいる」と記述しています。さらに、酒神ディオニュソスが母セメレのために飾った冠であるという伝承もあり、複数の解釈が並存しています。

 

参考)みなみのかんむり座 - Wikipedia

古代ギリシャ時代には、この星座は草花を束ねて作った輪にたとえて「南のリース」と呼ばれていたそうです。紀元前3世紀頃の古代ギリシャの詩人アラトスがうたった星座詩の中にもこの星座が登場しており、非常に古い歴史を持つ星座であることがわかります。

 

参考)https://seiza.imagestyle.biz/natu/minaminokanmurimain.shtml

みなみのかんむり座を構成する主な恒星

みなみのかんむり座は4等星以下の暗い星々で構成される小さな星座ですが、美しい半円形の並びが特徴的です。星座全体の面積は127.696平方度で、全天88星座のうち80番目の大きさとなっています。以下、この星座を構成する主要な恒星を紹介します。

 

参考)みなみのかんむり座|やさしい88星座図鑑

主な構成星の一覧

  • α星(アルファ星)メリディアナ - 4.11等星で、この星座で最も明るい恒星です。太陽系から約120光年の距離にあるA型主系列星で、スペクトル型はA2Vaです。かんむり座α星のアルフェッカにちなんで「南のアルフェッカ」を意味する「アルフェッカ・メリディアナ(Alphekka Meridiana)」という名称で知られていました。この名称は「南の欠け皿」という意味も持っています。

    参考)みなみのかんむり座アルファ星 - Wikipedia

  • β星(ベータ星) - 2番目に明るい星で、太陽系から約438光年の距離にあります。

    参考)みなみのかんむり座

  • γ星(ガンマ星) - 3番目の明るさを誇る星で、実は二重星です。それぞれの星の明るさは4.5等級と6.5等級で、口径15cm程度の望遠鏡があれば2つに分けて観測することができます。

    参考)みなみのかんむり座とは?見つけ方や見どころ

  • κ星(カッパ星) - 5.9等星と6.6等星の二つの星が21.6秒角の間隔で並んだ二重星で、口径5cmの望遠鏡で分離して観測できます。

    参考)夏の星座「みなみのかんむり座」の見つけ方を紹介します

これらの星々は全て4等星から6等星という暗さですが、緩やかな半円を描くように配置されているため、星のよく見える暗い場所であれば、冠の形を思わせる美しい星の並びを見つけることができます。

 

参考)星座八十八夜 #14 小さな月桂樹の冠「みなみのかんむり座」…

みなみのかんむり座の見つけ方と観測のコツ

みなみのかんむり座は南天の星座で、日本からは地平線近くの低い位置に見える星座です。観測には少しコツが必要ですが、いて座を目印にすると見つけやすくなります。

 

参考)Corona Australis(みなみのかんむり座)につい…

🔭 具体的な探し方
まず、夏の夜空で目立ついて座を探しましょう。いて座の上半身と弓の一部分を表す「南斗六星」という有名な星の並びを見つけます。この南斗六星よりも下(南側)、ちょうどいて座の前足あたりを探すと、半円形に輝く小さな星たちが見えてきます。高さは隣にあるさそり座のS字型の尻尾の先とほぼ同じ位置です。

別の目印として、南斗六星の一番南にある3等星ζ星アスケラから、いて座の前足に当たる4等星α星とβ星のある南側へ目を向けると、その右側に冠を思わせる半円形の星の並びが見つかります。いて座のティーポットの形を目印にして、ティーポットの注ぎ口のすぐ下あたりに弧を描くような星の並びを探すという方法もあります。

📅 最適な観測時期と条件
みなみのかんむり座は7月から10月頃にかけて観測できますが、特に8月が最もおすすめの時期です。20時頃の正中は8月24日ごろで、正中高度は約13度という低さです。日本の空でみなみのかんむり座を見ようと思ったら、高層ビルが乱立している都会の空は避け、視界を遮る高い建物のない開けた場所での観察が適しています。星座を構成する星々は明るくないため、街灯などの少ない暗い環境を選ぶことも大切です。

空がじゅうぶんに暗ければ、いて座の目印「南斗六星」の下の方を眺めていると、自然に半円形に星が並んでいるのが見えてきます。みなみのかんむり座は夏の星座で、一方のかんむり座(北のかんむり)は春の星座ですが、夏の間は二つの冠が同時に見えるので、ぜひ両方を探して見比べてみることをおすすめします。

みなみのかんむり座の深宇宙天体と球状星団

みなみのかんむり座は小さくて暗い星座ですが、興味深い深宇宙天体をいくつか含んでいます。肉眼では見えませんが、望遠鏡を使うことで観察できる天体が存在し、天文学者にとって重要な研究対象となっています。

🌌 主な深宇宙天体
NGC6541(球状星団) - この星座の中で最も明るい深宇宙天体で、7等級の明るさを持つ球状星団です。NGC6541の姿を堪能するのであれば、口径25cm前後の望遠鏡を用意しておくことをおすすめします。可能であれば日本よりも、ニュージーランドなどの南半球の国々まで足を延ばした方が、NGC6541の美しさをより楽しめるでしょう。​
NGC6726-6727(反射星雲) - 近くの明るい星の光を反射している反射星雲で、青色が印象的な天体です。北側(上側)がNGC6727、南側がNGC6726で、2重星雲を形成しています。みなみのかんむり座といて座の境界付近に位置し、この辺りの領域は銀河でも最も近い星形成領域の一つと考えられています。
参考)https://starandgarden.com/sub1-n6726.htm

NGC6729(反射星雲) - もう一つの反射星雲で、NGC6729として知られています。​
NGC6723(球状星団) - もう一つの球状星団で、小さな望遠鏡でも観察可能です。​
コロナ・アウストラリス星形成領域 - 若い星が生まれている領域で、天文学者にとって重要な研究対象となっています。みなみのかんむり座の最北端に位置する反射星雲IC4812およびNGC6726は、近傍の恒星の光により周辺の暗黒星雲が反射または電離して発光しているものです。
参考)https://stellarscenes.net/object/cra_molecular.html

みなみのかんむり座R星 - 太陽系から約408光年の距離にある12等星で、前主系列星です。中心核での核融合で生じるエネルギーで輝き始める主系列星の前段階にある「ハービッグAe/Be型星」と考えられており、2019年にはこの星の周囲を公転する赤色矮星を検出したとする研究結果が発表されています。​

みなみのかんむり座とトレミーの48星座の歴史的位置づけ

みなみのかんむり座は、2世紀にプトレマイオス(トレミー)によってまとめられた「トレミーの48星座」の一つです。トレミーの48星座とは、古代ギリシャの天文学者クラウディオス・プトレマイオスが著書『アルマゲスト』の中で体系化した星座群で、現代の88星座の基礎となった重要な星座リストです。

📚 古代からの記録
みなみのかんむり座はギリシャ時代には既に知られていた星座で、紀元前3世紀頃の古代ギリシャの詩人アラトスがうたった星座詩の中にも登場しています。これは星座としての歴史が非常に古いことを示しています。小さくて目立たない星座ですが、形も整っていて、プトレマイオスの48星座のひとつとして重要な位置を占めています。

紀元前1世紀頃の古代ローマのガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスも著書『Poeticon astronomicon』でこの星座について触れており、「ケンタウルスの花環は7つの星で構成される」と述べています。このように、みなみのかんむり座は古代から多くの天文学者や詩人によって記録され、語り継がれてきた星座なのです。

🌟 北のかんむり座との関係
春の星座であるかんむり座(北のかんむり)は、酒神ディオニュソスがクレタ島の王女アリアドネに贈った冠だと伝えられていますが、みなみのかんむり座については詳しい神話が少ないのが特徴です。そのため、「南のかんむり」として北のかんむり座と対をなす存在として認識されており、みなみのかんむり座はより平らな半円を描いています。春のかんむり座は「きたのかんむり」と呼ばれることもあって、みなみのかんむり座と混同するのを避けています。

みなみのかんむり座の詳細な星座データと観測情報 - スタディスタイル 自然学習館
この参考リンクでは、みなみのかんむり座の基本データや見え方、観測に適した時期などの詳細情報が紹介されています。

 

みなみのかんむり座 - Wikipedia
みなみのかんむり座の構成星や歴史的背景について、より詳しい情報が記載されています。

 

星座八十八夜シリーズ - AstroArts
全88星座の解説シリーズで、みなみのかんむり座を含む様々な星座の見どころや神話について詳しく学ぶことができます。

 

 


南鎌倉高校女子自転車部