エルナトはおうし座β星として知られる2等星で、牡牛の角の先端に位置する青白い星です。おうし座の中で1等星アルデバランに次いで2番目に明るく、見かけの等級は1.65です。この星は地球から約131~134光年の距離にあり、絶対等級は-1.387とされています。
参考)https://starwalk.space/ja/news/taurus-constellation-guide
おうし座は冬の代表的な星座の一つで、エルナトは牡牛の北側の角を形成しています。アルデバランとヒアデス星団がV字型に牡牛の顔を表す一方、そこから東向きに二本の角が伸びており、その先端にエルナトともう一つの角の星ζ星(天関)が輝いています。このような配置により、エルナトはおうし座の星座線の末端に位置する重要な星となっています。
参考)共有 ~4月3日|つかけん
実は、エルナトはぎょしゃ座との境界線上にあるため、かつてはぎょしゃ座γ星としても扱われていました。ぎょしゃ座を五角形で描く際、その南側の一角を担う星として使われており、二つの星座に共有される珍しい存在でした。しかし2016年、国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループによって、エルナトは正式におうし座β星として承認され、現在はおうし座のみに属する星となっています。
エルナトを含むおうし座は、11月から3月にかけて観測できる冬の星座です。特に12月上旬から2月中旬にかけて、夜8時頃から南の空高く昇り、最も観測しやすい時期となります。1月なかばの21時ごろには天頂付近に見つかり、冬の夜空を代表する星座として多くの天文ファンに親しまれています。
参考)https://www.astroarts.co.jp/special/2006winter/constellation-j.shtml
エルナトを見つけるには、まず北東の空に輝く1等星カペラを目印にすると良いでしょう。カペラはぎょしゃ座の主星で、そこから南へ視線を移すとエルナトが見つかります。また、オリオン座の1等星ベテルギウスから北西方向を探すことでも発見できます。
参考)https://www.astroshop-tomita.com/post/%E5%86%AC%E3%81%AE%E6%98%9F%E5%BA%A7-%E3%81%8A%E3%81%86%E3%81%97%E5%BA%A7
📌 観測のポイント。
おうし座は比較的探しやすい星座で、アルデバランという明るい1等星やプレアデス星団(すばる)といった目立つ天体を含んでいます。エルナトもこれらの目印から辿ることで、初心者でも容易に見つけることができるでしょう。
参考)https://sendaiuchukan.jp/data/gallery/ex/taurus-bep20231207.html
エルナトは青白い色で輝く高温の星です。この青白い色は、星の表面温度が非常に高いことを示しています。一般的に、星の色と表面温度には明確な関係があり、赤い星は約3000度、黄色い星(太陽など)は約6000度、そして青白い星は1万度以上の表面温度を持ちます。
エルナトのスペクトル型はB7IIIまたはB7IIとされており、これはB型の巨星または輝巨星であることを意味します。B型星は表面温度が1万度を超える高温の星で、青色巨星として分類されます。実際、エルナトの明るさは太陽の約700倍にも達し、非常に強力なエネルギーを放出しています。
参考)https://www.chigaku.koukyouken.ibk.ed.jp/wysiwyg/file/download/10/46
⚡ 星の色と温度の関係。
| 色 | 表面温度 | 代表的な星 |
|---|---|---|
| 赤 | 2000~3300度 | アンタレス、ベテルギウス |
| 黄色 | 4700~7200度 | 太陽 |
| 白 | 7200~11000度 | シリウス |
| 青白 | 1万~数万度 | エルナト、リゲル |
星の色が温度を反映するのは、物体が高温になるほど短い波長の光を放出する物理法則によるものです。青色の光は赤色の光よりも波長が短いため、青白く見える星ほど高温であることが分かります。エルナトの青白い輝きは、その星表面が非常に高温であることの証であり、若くエネルギッシュな星の特徴を示しています。
参考)青白い星は2万度超え!?星の表面温度と色の関係 - ウェザー…
エルナト(Elnath)という名前は、アラビア語の「an-naṭḥ(アン=ナトフ)」に由来し、「(角で)突くこと」を意味しています。この名前は牡牛の角の先端という星の位置を完璧に表現しており、古代アラビアの天文学者たちの観察眼の鋭さを物語っています。
参考)https://ameblo.jp/sadaltemis/entry-11443211034.html
興味深いことに、この名前には歴史的な誤伝の経緯があります。元々アラビアでは、この「an-naṭḥ」という名前はおひつじ座のβ星とγ星からなる第1月宿の別名として使われていました。その後、おひつじ座α星の名前とされることもありましたが、時代を経る中で誤って伝えられ、最終的におうし座β星の名前として定着したのです。
参考)おうし座ベータ星とは - わかりやすく解説 Weblio辞書
🌙 アラビア天文学と月宿。
古代アラビアでは、月が天球上を移動する際に通過する28の領域を「月宿」として定めていました。これは中国の二十八宿と類似した概念で、天文観測や暦の作成に重要な役割を果たしていました。エルナトの名前もこのアラビア天文学の伝統の中で生まれ、受け継がれてきたものです。
2016年7月20日、国際天文学連合(IAU)の恒星の命名に関するワーキンググループは、正式に「Elnath」をおうし座β星の固有名として承認しました。これにより、長い歴史を持つこの星の名前が公式に認められることとなり、エルナトは天文学の歴史において重要な位置を占める星として、その地位を確立しています。
エルナトが持つ最もユニークな特徴の一つが、かつて二つの星座に同時に属していたという歴史です。一般的な星図を見ると、エルナトはおうし座の星座線の末端に位置していますが、同時にぎょしゃ座という星座の五角形の一角を担っていることが分かります。
この「共有」の状態は、星座の境界線がどのように定められてきたかという天文学の歴史を物語っています。かつてエルナトはおうし座β星でありながら、同時にぎょしゃ座γ星でもありました。このような二重の所属は珍しく、天文学者たちの間でも議論の対象となっていました。
🔍 境界線の変遷。
この境界の確定により、ぎょしゃ座の五角形を描く際に興味深い問題が生じています。現在の規定では「その星座の星しかつないではいけない」とされているため、厳密に言えばぎょしゃ座の五角形は完全には閉じられないことになります。しかし実際の観測や星図では、視覚的な分かりやすさを優先して、今でもエルナトを含めた五角形で表現されることが多いのです。
この状況は、天文学における科学的な正確性と、伝統的な星座の見方との間のバランスを示す好例と言えるでしょう。エルナトは単なる一つの星ではなく、星座の歴史と天文学の発展を象徴する存在なのです。
参考リンク(星座の境界線の歴史について)。
Wikipedia - おうし座ベータ星
参考リンク(ぎょしゃ座との関係について)。
アストロアーツ - 冬の星座を探そう
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