プレアデス星団は、天球上で赤経3時間47分、赤緯+24度07分の位置に存在する散開星団です。この座標は2000年分点での値であり、天文観測において標準的な基準として使用されています。赤緯が+24度という北天の位置にあるため、人が住むほとんどすべての緯度から観測可能で、南緯66度以南を除けば地平線上に昇ります。
参考)https://starwalk.space/ja/news/m45-pleiades-star-cluster
星団の視直径は約100分角(1度40分)で、これは満月の直径の約4倍に相当する大きさです。肉眼で見ると、まるで小さな北斗七星のような形状に見えるのが特徴です。天の川銀河の中でも黄道の近くに位置しているため、季節によって観測に適した時期が変わります。
参考)プレアデス星団(M45,Mel22)|やさしい88星座図鑑
おうし座の中では、1等星アルデバランの北西、ウシの肩のあたりに位置しています。この配置により、オリオン座を目印にして容易に見つけることができる天体となっています。
参考)「おうし座」の見つけ方や誰かに教えたくなる星の話 - 星座図…
プレアデス星団までの距離は、長年にわたって天文学者たちの間で論争の的となってきました。位置観測衛星ヒッパルコスによる測定では約390光年という結果が出ましたが、これは他の観測手法による430光年前後という値と大きく異なっていました。
参考)https://www.astroarts.co.jp/news/2014/09/01m45/index-j.shtml
この「プレアデス距離論争」は、超長基線電波干渉計(VLBI)という最新技術によって決着しました。地球上の遠く離れた電波望遠鏡を組み合わせた精密観測により、プレアデス星団までの距離は440~448光年と求められ、これが現在もっとも信頼のおける数値とされています。一部の資料では約410光年という値も使用されていますが、最新の研究では440光年前後が正確な距離として認識されています。
参考)【12月の天体ドーム】プレアデス星団(すばる)を追うオリオン…
この距離測定の正確性は、恒星の進化モデルを検証する上で極めて重要な意味を持ちます。プレアデス星団は若い星々の集団であり、その物理的性質を正確に理解することは、星の誕生と進化を研究する上での基準点となるためです。
参考)http://arxiv.org/pdf/1408.6544.pdf
プレアデス星団の観測に最適な時期は、北半球では晩秋から冬にかけての10月から2月です。この期間は星団が夜空高く昇り、観測条件が良好になります。南半球では11月から3月にかけてが観測に適しており、わずかに時期がずれます。
1月上旬には20時頃に南中し、最も観測しやすい位置に来ます。南中とは、天体が真南の方角で最も高い位置に達することを指します。時期をさかのぼると、9月初旬の二百十日頃には午前4時に南中するため、明け方の観測が可能になります。
参考)http://www.bao.city.ibara.okayama.jp/stardb/sky/data/sky0025.html
2月下旬から3月上旬にかけては、夕方から深夜にかけて西南西の空で観測できます。この時期は火星との接近が見られることもあり、天体観測の愛好家にとって注目のシーズンとなります。冬季の澄んだ空気の中で観測すると、星団の青白い輝きが一層美しく見えるでしょう。
参考)「プレアデス星団」をめぐる物語。和名は「すばる」。2月下旬か…
プレアデス星団を見つけるには、まず冬の代表的な星座であるオリオン座を目印にするのが最も簡単な方法です。オリオン座の中央に並ぶ3つの明るい星(三つ星)を見つけ、その直線を右上方向、つまりオリオンの弓の方向へ延長していきます。
参考)プレアデス星団ってどこにある?プレアデス星団の見つけ方|Si…
延長線上で最初に出会うのが、おうし座の1等星アルデバランです。この明るいオレンジ色の星を通り過ぎ、さらに同じ方向へ視線を移動させると、青白い小さな星の集まりが見えてきます。これがプレアデス星団です。
参考)気軽に楽しむ星空観察 1
肉眼では通常6個ほどの星が確認できますが、視力が良く空が十分に暗い場所では最大14個の星を数えることができます。位置を正確に知りたい場合は、天体アプリ「Sky Tonight」などのスマートフォンアプリを使用すると便利です。アプリの検索機能で「プレアデス星団」と入力し、ターゲットアイコンをタップすれば、現在の空のどの位置にあるか簡単に確認できます。
プレアデス星団は、観測機器によって異なる魅力を見せる天体です。肉眼での観測も可能ですが、双眼鏡や望遠鏡を使用することで、より豊かな観測体験が得られます。
双眼鏡での観測には、口径4~5cm、倍率7~10倍程度のものが最適です。7×50(倍率7倍、対物レンズ直径50mm)程度の双眼鏡を使用すると、数十個もの星が視野に広がり、たいへん美しく素晴らしい眺めを楽しめます。双眼鏡は両目で観察できるため、小学校低学年の子どもでも扱いやすいという利点があります。
天体望遠鏡で観察する場合は、低倍率での観測が推奨されます。高倍率の望遠鏡では視野が狭くなってしまい、星団全体の美しさが損なわれてしまうためです。望遠鏡を使用すると、より暗い星まで観測でき、星団を包み込むような星雲状の輝きも確認できます。
参考)プレアデス星団の星々の変光 - アストロアーツ
撮影を行う際は、明るい星(アルキオーネなど)にピントを慎重に合わせ、その後オートフォーカスを切ってピントリングを固定することが重要です。プレアデスは明るく観測しやすいため、アマチュアの深宇宙観測に最適な対象となっています。
プレアデス星団の詳しい観測方法と撮影テクニックについて - Star Walk
プレアデス星団には合計で約1,000個の星が含まれていますが、肉眼で確認できるのは通常6~7個程度です。この数は観測者の視力や空の暗さによって変わり、条件が良ければ最大14個まで見ることができます。星団全体の星数は約130個とする資料もあり、これは望遠鏡で観測可能な明るめの星の数を指しています。
参考)国立科学博物館-宇宙の質問箱-星雲・星団編
星団の中で最も明るい星々には、ギリシャ神話に登場する人物の名前が付けられています。主要な星は、七姉妹のアルキオネ、エレクトラ、マイア、メローペ、タイゲタ、ケラエノ、アステローペと、その両親であるアトラスとプレイオネです。最も明るいアルキオネは2.87等級で、以下アトラス(3.63等)、エレクトラ(3.70等)、マイア(3.87等)と続きます。
ギリシャ神話によれば、プレイアデス(プレアデス)七姉妹は巨人アトラスの娘たちで、狩人オリオンに追われた際にゼウスの計らいで星となりました。興味深いことに、多くの文化で「7姉妹」として扱われているにもかかわらず、肉眼では通常6つの星しか見えません。伝承では「姉妹のうち1人が人間と恋に落ちて隠れるようになったから」などの理由で1つ少ないとされています。
参考)プレイアデス - Wikipedia
天文学的研究によれば、実際に10万年前にはプレアデス星団はもう1つ明るい星を持っていた可能性が指摘されています。これは古代の伝承が実際の天文学的変化を反映している可能性を示唆する、非常に興味深い発見です。
参考)すばるの「六連星」は10万年前は「七連星」だったかもしれない…
プレアデス星団の「失われた7番目の星」についての研究 - GIGAZINE
プレアデス星団は散開星団に分類される天体で、天の川銀河の中でも特に有名な存在です。散開星団とは、比較的若い星々が重力的に緩く結びついた集団のことで、天の川のそばに多く見られるのが特徴であり、銀河星団とも呼ばれています。
参考)hscMap
この星団の年齢は約6,000万年と推定されており、宇宙の尺度では非常に若い星々の集まりです。星団を構成する星々の多くは青白い色をしており、これは高温の若い恒星であることを示しています。双眼鏡や望遠鏡で観測すると、この青白い輝きがより鮮明に確認できます。
プレアデス星団の物理的な大きさは約27光年で、空間的に比較的コンパクトな集団です。星団は固有の運動を持ち、赤経方向に年間約19.71ミリ秒、赤緯方向に年間約-44.82ミリ秒の速度で移動しています。この共通の運動は、星団のメンバーが共通の起源を持つことを示す重要な証拠となっています。
参考)プレアデス星団 - Wikipedia
近年の研究では、現在の星団メンバーに加えて、かつて星団に所属していた星々も特定されています。過去1億年の間に、星団は質量の約20パーセントを失ったと推定されており、2つの巨大な白色矮星や変光星41 Tauなどが含まれます。これらの元メンバーの中には、現在の視点からは星団の前方や後方に位置しているものもあり、星団の動的な進化を示しています。
参考)http://arxiv.org/pdf/2110.03837.pdf
日本では「すばる」という名前で古くから親しまれており、ハワイにある大型光学赤外線望遠鏡「すばる望遠鏡」もこの星団から命名されました。冬の夜空で最も美しい天体の一つとして、天文ファンにとって人気の観測対象となっています。
国立天文台によるプレアデス星団.jp/study/pleiades.html">国立天文台によるプレアデス星団の解説