おひつじ座神話と構成する星、黄金の羊の物語と主要な恒星

おひつじ座は黄金の羊の神話で知られる黄道十二星座の一つです。主要な星ハマル、シェラタン、メサルティムの特徴や、プリクソス王子を救った神話の物語とは何でしょうか?

おひつじ座の神話と構成する星

📌 おひつじ座の3つの魅力
黄金の羊の神話

空を飛び人の言葉を話す金色の羊が、王子と王女を救う壮大な物語

主要な3つの星

ハマル、シェラタン、メサルティムが構成する羊の頭部

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春分点の星座

約2000年前に春分点があり、黄道十二星座の先頭を飾る

おひつじ座の黄金の羊の神話と物語

 

おひつじ座のモデルとなったのは、ギリシャ神話に登場する黄金の毛を持つ空飛ぶ羊です。この羊はヘルメスが大神ゼウスから預けられていた特別な存在で、金色の毛だけでなく、空を飛び、人の言葉を話すことができたと伝えられています。

 

参考)https://seiza.imagestyle.biz/sinwa/ohituji.shtml

テッサリア国の王アタマスには、前妻ネペレーとの間にプリクソス王子とヘレー王女という二人の子供がいました。しかし継母となったイーノは、自分の子を王位継承者にするため、二人を亡き者にしようと陰謀を企てます。イーノは農民にわざと炒った麦を配って畑にまかせ、国中を大凶作にした上で、神官に「プリクソスを生贄に捧げよ」と偽の神託を告げさせたのです。

 

参考)おひつじ座

実の母ネペレーはこの陰謀を知り、子供たちの無事をゼウスに祈ります。するとヘルメスが預かっていた黄金の羊が天から舞い降り、二人を背中に乗せて東の彼方にあるコルキス国へ飛び立ちました。しかし途中、あまりの速さと高さに目がくらんだヘレー王女は海に落ちて命を落としてしまいます。このヘレーが落ちた場所は、後にダルダネルス海峡と呼ばれ、かつては「ヘレの海」を意味するヘレスポントス海峡と呼ばれていました。

 

参考)http://www.astromuseum.jp/seiza/seiza01.html

プリクソス王子は無事にコルキス国に辿り着き、王女カルキオペーと結ばれて幸せに暮らしました。羊が亡くなった後、プリクソスはその黄金の毛皮を国の宝として一本の樫の木に吊るし、眠ることのない竜に守らせたと伝えられています。この毛皮を守っていた竜も、りゅう座のモデルになっています。そして、この黄金の羊の毛皮を得るために、ギリシャ神話の中でも有名なアルゴ遠征隊の冒険が始まります。興味深いことに、遠征隊の隊長イアソンはプリクソスの孫にあたる人物でもあり、神話をさらに深い物語にしています。

おひつじ座の神話の詳細や、プリクソスとヘレーの物語の背景について解説されています(星座図鑑)

おひつじ座の主要な恒星ハマルとその特徴

おひつじ座で最も明るい星は、α星のハマル(Hamal)です。ハマルは唯一の2等星で、視等級2.0、地球からの距離は約66光年です。光の速さで66年かかる距離にある、オレンジ色に輝く恒星です。

 

参考)おひつじ座 - Wikipedia

ハマルという名前は、アラビア語で「羊の頭」を意味しており、まさにおひつじ座の頭部を表す位置にあります。スペクトル型はK1IIIの巨星で、表面温度は比較的低く、そのため赤みがかったオレンジ色に見えます。

 

参考)おひつじ座クロニクル

おひつじ座はあまり目立つ星座ではありませんが、ハマルはプレアデス星団(すばる)とさんかく座の間を探すと比較的見つけやすい星です。秋の終わりから冬にかけて、南の空の高いところに昇ってきます。ハマルを含む3つの星が後ろを振り返ったおひつじの頭に相当し、おひつじ座のほとんど主要部分を占めています。

 

参考)三菱電機:DSPACE おひつじ座を眺めよう
youtube​
明るい恒星ランキングでは、ハマルは全天で47番目の明るさを持つ恒星として記録されています。約2000年前には春分点がおひつじ座にあったため、この星座は古くから重要視されてきました。現在の春分点は隣のうお座に移動していますが、おひつじ座は依然として黄道十二星座の伝統的な先頭に位置しています。

 

参考)http://www.ne.jp/asahi/komi/shiro/magnitude_star.pdf

おひつじ座のシェラタンとメサルティムの構成

おひつじ座で2番目に明るい星は、β星のシェラタン(Sheratan)です。シェラタンは3等星で、ハマルよりもやや暗いものの、よく目立つ白い星です。地球からの距離は約60光年で、ハマルよりも少し近い位置にあります。

 

参考)おひつじ座 Ari Aries

シェラタンという名前は、アラビアの28月宿の第1宿である「al-sharaṯān」に由来しており、これは元々β星とγ星の2つの星から成り、アラビア語で「2つ」を表していたとされています。この星は牡羊座に生まれた人の「即断即行」の性質を象徴すると言われ、常に動き、変化し、燃え続ける特性を持つとされています。

 

参考)【衝撃】牡羊座の人は全員見て!99%が知らない“本当の運命”…

γ星のメサルティム(Mesarthim)は、シェラタンのすぐそば、やや木星寄りの場所にある4等星です。都会では見つけにくい明るさですが、双眼鏡があれば観測可能です。メサルティムは実は連星系で、B型のγ1星とA型のγ2星という2つの準巨星によって構成されています。

 

参考)おひつじ座ガンマ星 - Wikipedia

この2つの星は500au以上離れた距離を互いに5000年以上かけて周回しています。γ2星はりょうけん座α2型変光星で、その恒星大気はケイ素に富んでいるという特徴があります。メサルティムという固有名は、2016年9月12日に国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループによって、おひつじ座γ2星の正式な固有名として承認されました。

 

参考)おひつじ座ガンマ星とは - わかりやすく解説 Weblio辞…

ハマル、シェラタン、メサルティムの3つの星が、おひつじ座の主要な構成要素であり、これらが後ろを振り返った羊の頭部を形作っています。

おひつじ座の3つの主要な星の見つけ方や観測方法について詳しく解説されています(三菱電機DSPACE)

おひつじ座と黄道十二星座における春分点の歴史

おひつじ座が小さくてあまり目立たない星座にもかかわらず古くから重要視されたのは、約2000年前にこの星座に春分点があったからです。春分点とは、天球上での太陽の通り道である「黄道」と、「天の赤道」との交点の一つであり、春分の時に太陽がある位置を指します。

 

参考)天文コラム「星空のかなたに」vol.14

紀元前150年頃に活躍したギリシャの天文学者ヒッパルコスは、春分点を起点として黄道を12等分し、黄道十二宮を設定しました。このため、おひつじ座は黄道十二星座の第1星座として重要な位置を占めることになったのです。星占いで「何座生まれ」というのは、この太陽の動きを使って、誕生日に太陽が何宮にあるかを示しています。

 

参考)おひつじ座|星や月|大日本図書

しかし現在は、地球の歳差運動(首振り運動)のため、春分点が隣のうお座に移動してしまいました。そのため、星占いの星座誕生日区分と実際の太陽の位置とが、約1ヶ月ほどずれてしまっています。うお座は現在、事実上の黄道十二星座の第1番目となっているのです。

 

参考)https://www.astroarts.co.jp/special/2006autumn/various-j.shtml

この歳差運動は約26000年周期で起こる現象で、地球の自転軸がゆっくりと円を描くように移動することによって生じます。おひつじ座に春分点があったことは、古代バビロニアやギリシャ時代の天文学においても記録されており、当時の暦や占星術の基礎となっていました。

 

黄道十二星座は、太陽が1年かけて通過する天球上の12の星座で構成されています。おひつじ座は伝統的にその先頭に位置し、春の訪れを告げる象徴的な星座として扱われてきました。現代でも占星術では、おひつじ座を3月21日から4月20日の期間に対応させており、春分の時期を象徴する星座としての役割を保っています。

 

参考)おひつじ座クロニクル

黄道十二星座と春分点の移動について、天文学的な背景が詳しく解説されています(アストロアーツ)

おひつじ座の恒星一覧とアラビア由来の固有名

おひつじ座には、α星ハマル、β星シェラタン以外に特に目立つ天体はありませんが、アラビアの月宿やヒンドゥーの星宿が置かれていたことに由来する固有名を持つ恒星が複数存在します。

おひつじ座の主要な恒星は以下のように分類されています:
主要恒星の特徴

  • α星ハマル:2等星、視等級2.0、距離66光年、K1III型の巨星​
  • β星シェラタン:3等星、距離60光年、白い星​
  • γ星メサルティム:4等星、連星系、B型とA型の準巨星で構成​
  • δ星:4等星クラスの恒星
  • λ星:9番目の恒星として記録

    参考)おひつじ座の恒星の一覧 - Wikipedia

  • ρ²星:M6III型の変光星、45番星として分類​
  • ο星:37番星、B9V型の恒星​

おひつじ座の恒星一覧を見ると、56番星、47番星、40番星など、バイエル符号以外にフラムスティード番号で呼ばれる恒星も多数含まれています。これらの多くは5等星から6等星クラスの暗い星ですが、詳細な星図を作成する上で重要な役割を果たしています。

興味深いことに、17世紀の天文学者ユリウス・シラーは、黄道十二星座を新約聖書の十二使徒に置き換える試みを行い、使徒の頭であるペトロをおひつじ座に充てました。またシラーは、バイエルがどこの星座にも属さない星とした4つの星を、ペトロの持つ天国の鍵としておひつじ座に組み込んだという記録もあります。

アラビア天文学における月宿(マンジル)の概念では、おひつじ座の星々は重要な位置を占めていました。特にシェラタンとメサルティムは、アラビアの28月宿の第1宿「al-sharaṯān」を構成し、「2つ」という意味を持っていました。この伝統は中世ヨーロッパにも受け継がれ、ラテン語化された際に「Sartai」という名前に変化しました。

おひつじ座観測における季節と見つけ方のコツ

おひつじ座は秋の終わりから冬にかけて、南の空の高いところに昇ってきます。全体像を捉えるには空がかなり暗くないと難しいのですが、主要な3つの星を目印にすることで比較的容易に見つけることができます。
youtube​
観測のポイント

  • 🌟 目印となる星座:プレアデス星団(すばる)とさんかく座の間を探すのが効果的

    参考)おひつじ座|星や月|大日本図書

  • 🔭 主要な星の配置:ハマルを含む3つの星が目につく​
  • 🌙 最適な観測時期:秋から冬にかけての夜
  • 観測の難易度:都会では4等星のメサルティムは双眼鏡が必要​

木星が近くにある場合は、木星から少し左上に注目すると、やや離れて並ぶ2つの星が見つかります。左側がおひつじ座で最も明るいα星のハマル、右上の星がβ星のシェラタンです。ハマルは2等星、シェラタンは3等星ですが、このふたつはよく目立ちます。

シェラタンのすぐそば、やや木星寄りの場所に、いささか暗めの4等星が輝いているのがγ星メサルティムです。都会だとこのレベルの明るさでは見つけられないかもしれませんが、双眼鏡があれば観測可能です。この3つの星が、後ろを振り返ったおひつじの頭に相当します。

おひつじ座は黄道十二星座の1つで、トレミーの48星座の1つでもあります。古代から知られる星座ですが、目立つ星が少ないため、星座絵を想像するのは難しいかもしれません。しかし、ギリシャ神話では毛が金色に輝く空飛ぶ羊として描かれており、その物語を知ることで、星座への興味が深まるでしょう。

現在の春分点はうお座にありますが、かつておひつじ座に春分点があった歴史を思い浮かべながら観測すると、古代の人々が見上げた同じ星空を体験することができます。秋の夜空で、この控えめながらも重要な星座を探してみてはいかがでしょうか。

 

 


3年の星占い 牡羊座 2024年‐2026年