準巨星と恒星進化の光度階級分類

準巨星は恒星がたどる進化段階の一つで、主系列星と巨星の中間に位置します。太陽もいずれこの段階を迎えるのでしょうか?

準巨星と光度階級

準巨星の基本的な特徴
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光度階級IV

恒星分類における準巨星の位置づけで、主系列星と巨星の中間段階

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HR図上の位置

主系列から巨星への移行期に位置し、進化の途上にある恒星

物理的特性

主系列星より大きな半径と低い温度を持ち、光度はほぼ変わらない

準巨星は、恒星の進化段階を示す光度階級において「IV」に分類される天体です。ヤーキスのスペクトル分類では、極超巨星(0またはIa+)、超巨星(I)、輝巨星(II)、巨星(III)に続く階級として位置づけられており、主系列星(V)と巨星の中間的な性質を持っています。

 

参考)スペクトル型(星の)

光度階級は恒星の絶対等級の違いによって定義されており、準巨星は主系列星よりも明るく、巨星よりも暗い特徴があります。この分類は、恒星大気の密度の違いによるスペクトル線の幅の違い(絶対等級効果)によって見分けることができます。超巨星は恒星大気の密度が低いためスペクトル線が細く、主系列星では密度が高く線幅が広がるという特性があります。

 

参考)恒星進化についての概説 -HR図-

準巨星という用語は、主系列星と巨星の中間に位置する恒星を指し、主系列の同じスペクトル型の星よりも明るいものの、巨星ほどは明るくない星を表します。HR図上では、主系列と巨星の中間位置に分布しており、恒星進化の一時的な段階を示しています。

 

参考)http://www.oao.nao.ac.jp/stockroom/extra_content/story/ippan/kouza/kouza4.htm

準巨星の定義と光度階級IV

 

準巨星は光度階級IVに該当し、恒星分類における重要な区分の一つです。MK分類(モーガン・ケーナン分類)では、恒星は温度(スペクトル型)と絶対等級(光度階級)の二つの指標で分類されており、準巨星はこの体系において明確な位置を占めています。

 

参考)準巨星

光度階級の体系は以下のように構成されています。

 

光度階級 星の種類
0またはIa+ 極超巨星
I 超巨星
II 明るい巨星
III 普通の巨星
IV 準巨星
V 主系列星(矮星)
VI 準矮星
VII 白色矮星


準巨星は巨星と主系列星の中間の星として定義されており、星の大きさは上から下に向かって小さくなっていきます。この階級は恒星が主系列段階を終え、巨星への進化を開始した時期に対応しています。

光度階級の判別には、スペクトル線の特徴が重要な役割を果たします。恒星大気の密度の違いによってスペクトル線の幅が変化するため、同じ温度の星でも光度階級によって異なるスペクトルパターンを示します。

 

参考)光度階級

準巨星の恒星進化における位置

準巨星は、恒星が主系列星から巨星へと進化する過程における重要な移行段階を表しています。太陽程度の小質量星は、中心部の水素が枯渇すると赤色巨星へと進化しますが、その過程でHR図上では進化の途上で主系列段階よりもやや高い位置に移動します。

恒星の核における核融合に使用可能な水素が枯渇した後、恒星はHR図上で主系列から離れ、超巨星や赤色巨星へ、あるいは直接白色矮星へと進化します。主系列から外れているこれらの恒星は準巨星分枝(subgiant branch)として知られており、この段階は比較的短いため観測される恒星数が少なく、進化トラック上でヘルツシュプルングの間隙と呼ばれるギャップを作ります。

準巨星段階の恒星は、主系列星と比べて全体的な光度はほとんど変わりませんが、巨星に近い後期の段階では主系列の同じような質量の恒星と比べて半径が大きく、温度は低くなります。この段階は恒星進化の中で比較的短い期間であり、準巨星以後は進化速度が大きいため、観測されるHR図上の分布は進化路そのものと考えてよいとされています。

 

参考)https://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/1962/pdf/196212.pdf

太陽のような星の場合、約50億年後に中心核の水素が使い果たされると、太陽はその後準巨星段階を経て赤色巨星に進化することになります。この過程で太陽は膨張し、最終的には水星軌道くらいまで膨れ上がると考えられています。

 

参考)http://www.geo.titech.ac.jp/lab/ida/taku/lecture/ocha14/lecture5.pdf

準巨星と主系列星・巨星の違い

準巨星は主系列星と巨星の中間的な性質を持つ恒星であり、それぞれとの明確な違いがあります。主系列星は核で水素の核融合を行っている恒星で、HR図上では左上から右下に延びる主系列に位置しています。

 

参考)HR図(エッチアールズ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

主系列星と準巨星の主な違いは以下の通りです。

 

  • エネルギー源: 主系列星は中心核で水素燃焼を行っていますが、準巨星では中心部の水素が枯渇し始めています​
  • 半径: 準巨星は主系列星よりも半径が大きくなっています

    参考)準巨星 - Wikipedia

  • 温度: 準巨星は主系列星よりも表面温度が低い傾向があります​
  • 光度: 準巨星の光度は主系列段階とほぼ変わりませんが、HR図上の位置は異なります​

一方、巨星との違いも重要です。巨星はHR図の右上領域に位置し、主系列の上のほぼ水平な領域に分布しています。準巨星は主系列星と巨星の中間位置に分布しており、進化段階としても中間的な状態にあります。

最も重い部類の恒星は赤色巨星にならず、核が急速にヘリウムやその他の重元素の核融合を起こす温度へと到達して超巨星へと進化し、HR図の上部で主系列からほぼ水平な進化トラックを進みます。このように、恒星の質量によって進化経路は大きく異なります。

準巨星のHR図における分布と特徴

ヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)は、恒星の進化を論じる上で欠かせないツールであり、縦軸に恒星の固有の明るさ(絶対等級)、横軸にスペクトル型(温度)を配置した図です。準巨星はこのHR図上で、主系列と巨星の中間領域に位置しています。

HR図上での準巨星の位置は、恒星進化の理解において重要な意味を持ちます。主系列を離れた後、恒星は低温で光度の高い領域に移動し、赤色巨星分枝が現れます。この移行過程において、準巨星は一時的な段階として観測されます。

HR図上では以下のような構造が見られます。

 

  • 主系列: 左上から右下に斜めに延びる領域で、多くの恒星が分布​
  • 準巨星分枝: 主系列から巨星への移行領域​
  • 赤色巨星分枝: 低温で高光度の領域​
  • 水平分枝: 金属量の低い星団などに見られる特徴​

近距離星のHR図を作成すると、ほとんどの星が主系列星で、白色矮星もいくつか散らばっていますが、巨星は1個も見られないという特徴があります。これは準巨星や巨星の段階が恒星の一生において比較的短い期間であることを示しています。

準巨星分枝は進化トラック上でヘルツシュプルングの間隙と呼ばれるギャップを作ります。これは準巨星段階が比較的短く、この段階にある恒星の数が少ないためです。

準巨星の具体例と観測可能な天体

準巨星の代表的な例として、カシオペヤ座γ星(ツィー)が知られています。この星はスペクトル型B0.5IVpeの化学特異星で、見かけの明るさ2.39等の2等星です。太陽系から約382光年の距離にあり、強力なX線を放出しています。

 

参考)カシオペヤ座 - Wikipedia

カシオペヤ座γ星の主星A星は「カシオペヤ座γ型変光星」のプロトタイプとされる爆発型変光星で、その明るさを1.60等から3.00等まで大きく変化させます。この星はBe星の主星Aと白色矮星の伴星BからなるX線連星であると考えられています。

その他の準巨星の例として以下があります。

 

  • カシオペヤ座δ星: スペクトル型A5IVの準巨星で、見かけの明るさ2.680等の3等星です。太陽系から約102光年の距離にあり、おうし座のヒアデス星団と同じ分子雲で生まれたヒアデス運動星団の一員と考えられています​
  • カシオペヤ座ζ星: スペクトル型B2IVの準巨星で、見かけの明るさ3.66等の4等星です。太陽系から約355光年の距離にあります​
  • プロキオンA: F型準巨星として分類されることもある明るい恒星です

    参考)F型主系列星 - Wikipedia

これらの準巨星は、恒星が主系列段階を終え、巨星への進化を開始した段階にある天体として観測されています。準巨星の観測は、恒星進化のメカニズムを理解する上で重要な手がかりを提供しています。

天文学辞典 - 準巨星
準巨星の定義と光度階級について詳しく解説されています。

 

アストロアーツ - 50億年後、太陽が死ぬと何が起こるのか
太陽が準巨星を経て赤色巨星へ進化する過程について説明されています。

 

 


最終巨星を継ぐもの 秋山準 サイン本