ハダルは、ケンタウルス座で2番目に明るい恒星で、全天でも11番目の明るさを誇る1等星です 。肉眼では青白く美しい輝きを放つ一つの星に見えますが、その正体は非常に興味深いものです 。
ハダルは、地球から約392光年という遠い宇宙に位置しています 。その明るさの源は、星が持つ高い表面温度にあります。ハダルの星々は、表面温度が約27,000Kから30,000Kにも達する高温のB型星に分類されます 。太陽の表面温度が約6,000Kなので、その何倍も高温であることがわかります。この高温のために、星は青白い光を放つのです。
参考)https://x.com/tenmonguide/status/1800452915976691940
この星の特筆すべき点は、単独の星ではなく「連星系」であることです 。具体的には、非常に近い距離を公転しあう2つの星(連星A)と、その周りをさらに公転するもう1つの星(伴星B)からなる「三重連星」であると考えられています 。つまり、私たちは3つの星が織りなす光を、あたかも一つの星からの輝きであるかのように見ているのです。
参考)ケンタウルス座の探索2(ケンタウルス座α星、ハダル、牛頭天王…
表:ハダルの基本情報まとめ
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 星座 | ケンタウルス座(β星) |
参考)https://www.ncsm.city.nagoya.jp/study/astro/major_stars_data.pdf |
| 実視等級 | 0.6等 | |
| 絶対等級 | -4.2等 | |
| 地球からの距離 | 約392光年 | |
| スペクトル型 | B0 + B1型 | |
| 表面温度 | 約27,000K ~ 30,000K | |
| 特徴 | 青白く輝く三重連星 |
ハダルのような高温で巨大な星は、その寿命が比較的短いと考えられています。質量が大きい星ほど、核融合反応が激しく進み、エネルギーを大量に消費するためです。将来的には、ハダルの星々も超新星爆発を起こし、その一生を終える可能性があります。夜空で静かに輝くその姿の裏には、ダイナミックな星々の営みが隠されているのです。
星の名前には、その星が持つ物語や、名付けた人々の文化が反映されています。「ハダル」という名前もまた、深い意味と歴史を持っています。
この固有名は、アラビア語の「Ḥaḍār(ハダール)」に由来します 。その意味については諸説ありますが、一般的には「地面」や「定住地」を指す言葉だと考えられています 。なぜ空に輝く星に「地面」という名前が付けられたのか、はっきりとした理由はわかっていませんが、一説には、この星が地平線近くに見えることが多かったためではないかと言われています。古代のアラブの遊牧民(ベドウィン)が、定住地(ハダル)から見ていた星だったのかもしれません 。2016年、国際天文学連合(IAU)は、この「Hadar」という名前をケンタウルス座β星Aa(三重連星の主星)の固有名として正式に承認しました 。
ハダルには、「アゲナ(Agena)」というもう一つの別名も存在します 。この名前の由来はラテン語とギリシャ語の組み合わせと考えられており、「A」はケンタウルス座のα(アルファ)星を、「gena」はラテン語で「膝」を意味するとされています 。これは、星座絵の中でハダルがケンタウルスの膝の位置にあることに由来するようです。ただし、「gena」には「頬」という意味もあり、解釈が分かれています 。
参考)http://www.sci-museum.kita.osaka.jp/~kato/8mus_pla/brights.html
このように、一つの星に付けられた複数の名前から、古代の人々がどのように星々を認識し、生活や文化と結びつけていたのかを垣間見ることができます。
以下の参考リンクは、国際天文学連合(IAU)による恒星の命名に関する公式な情報です。固有名がどのように承認されるかを知ることができます。
夜空を見上げたとき、私たちの目には一つの点として映るハダルですが、その光の奥には、3つの恒星が互いに影響を及ぼしあう、壮大な宇宙のドラマが隠されています 。望遠鏡を使っても分離して見ることは困難なほど、これらの星々は複雑に結びついています。
ハダルの中心部には、「ハダルA」と呼ばれる連星が鎮座しています。この連星は、瓜二つのB型巨星「Aa」と「Ab」から構成されています。これら2つの星は、質量が太陽の約10.7倍と10.3倍にもなる巨大な恒星で、極めて近い距離を保ちながら、わずか357日という周期で互いの周りを高速で公転しています。その軌道は非常に潰れた楕円形をしており、最も近づくときと遠ざかるときの距離が大きく変化するのが特徴です。
そして、この「ハダルA」から少し離れた場所を、もう一つの星「ハダルB」が周回しています 。ハダルBもまた、太陽よりずっと重く明るいB型星です。ハダルAの周りを一周するのに、約225年という長い歳月を要すると考えられています。
つまり、ハダルは以下の3つの星からなる「階層的三重連星」なのです。
これほど巨大な星々が、互いの強力な重力によって結びつき、複雑なダンスを繰り広げている様子を想像してみてください。星々の間では、強い恒星風が吹き荒れ、物質のやり取りが行われている可能性も指摘されています。一つの光の点に見えるハダルの輝きは、実は3つの巨大な星々が奏でる光のハーモニーなのです。このような連星系は、星の進化や形成を理解する上で非常に重要な研究対象とされています 。
参考)http://arxiv.org/pdf/2404.10167.pdf
ハダルは南天の星座であるケンタウルス座に属しているため、日本から観測できる地域は限られています 。具体的には、沖縄や奄美大島といった南西諸島で、ようやくその姿を地平線の上に見ることができます 。本州など、それより北の地域では残念ながら地平線の下に隠れてしまい、見ることができません。
もし幸運にも南の島で星空を眺める機会があれば、ぜひハダル探しに挑戦してみてください。見つけるための最も良い目印は、有名な「みなみじゅうじ座(南十字星)」です 。
参考)ケンタウルス座とは?見つけ方や見どころ
🔭 ハダルを見つける手順
この2つの1等星、リギル・ケンタウルスとハダルは、みなみじゅうじ座を見つけるための指極星(ポインター)としても知られており、南半球の航海者たちにとって重要な目印となってきました 。
観測のベストシーズンは、ケンタウルス座が南の空に高く昇る春から初夏にかけてです。星座アプリなどを使うと、正確な位置を簡単に知ることができるので、ぜひ活用してみてください 。日本では限られた場所でしか見られない貴重な輝きだからこそ、その美しさは格別なものに感じられるでしょう。
参考)Centaurus(ケンタウルス座)【天空に輝く神話の戦士】…
以下の参考リンクは、大阪市立科学館による明るい恒星のリストです。ハダルの等級や他の1等星との比較情報が掲載されています。
ハダルの輝きは、科学的な天文学の世界だけでなく、スピリチュアルや占星術の分野でも特別な意味を持つと考えられています 。特に、「スターシード」という概念において、ハダルは重要な故郷の星(ホームワールド)の一つとして語られることがあります。
スターシードとは、「地球以外の星や銀河に起源を持つ魂が、地球の次元上昇(アセンション)を助けるために、地球人として転生してきた存在」を指すスピリチュアルな思想です。そして、ケンタウルス座β星系、つまりハダルからやってきた魂を持つ人々は「ハダル星人」や「ハダリアン」と呼ばれることがあります 。
参考)https://ameblo.jp/majo-no-yakata/entry-12642954920.html
ハダル星人の特徴として、以下のような性質が挙げられることが多いようです。
もちろん、これらは科学的根拠に基づいた話ではなく、あくまでスピリチュアルな世界における一つの解釈です。しかし、夜空に輝くハダルという星が、地球から遠く離れた場所で、このような壮大な物語と結びついていると想像すると、星空を眺める楽しみがまた一つ増えるのではないでしょうか。
古代から人々は星々に神々の名前を付け、運命を読み解こうとしてきました。ハダルが持つ「癒やし」や「愛」といったテーマは、人々がこの星の青白い清らかな輝きに、何か特別なインスピレーションを感じ取ってきたことの表れなのかもしれません。科学的な視点とスピリチュアルな視点、両方からハダルを眺めることで、その存在の奥深さをより一層感じることができるでしょう。