きりん座神話と構成する星、歴史と見える時期

北天にひっそりと輝くきりん座は17世紀に作られた新しい星座で、ギリシャ神話は存在しません。明るい星は少ないですが、β星やα星など構成する星々には独特の魅力があります。この星座の由来や見どころを知れば、夜空の楽しみ方が広がるのではないでしょうか?

きりん座の神話と構成する星

きりん座の特徴
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17世紀に誕生した新しい星座

古代ギリシャの神話は存在せず、ヘベリウスによって設定された比較的新しい星座です

暗い星々で構成される大きな星座

最も明るいβ星でも4等星で、面積は756.83平方度と広大ながら目立たない星座です

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周極星座として一年中観測可能

北極星とぎょしゃ座の間に位置し、秋から冬にかけてが観測の見頃となります

きりん座の神話は存在しない理由

 

きりん座には古代ギリシャ神話や伝説が存在しません。これは、きりん座が17世紀に入ってから作られた比較的新しい星座であるためです。古代の48星座(トレミーの48星座)には含まれておらず、大航海時代以降、ヨーロッパの天文学者たちによって新設された星座の一つとなっています。

 

きりん座の設定には複数の天文学者が関わっています。まず1613年にオランダの天文学者ペトルス・プランシウスが天球儀にこの星座を記しました。その後、ドイツの数学者ヤコブス・バルチウスが1624年に発行した星図で世間に広め、最終的に1687年にポーランドの天文学者ヨハネス・ヘベリウスの星図で「きりん座(Camelopardalis)」として正式に設定されました。

 

キリンはアフリカ大陸の中南部に生息する動物であり、古代ギリシャやエジプト時代のヨーロッパ人は実物を見る機会がありませんでした。大航海時代を経て初めてヨーロッパにキリンの存在が知られるようになり、その珍しい姿が星座の題材として選ばれたのです。

 

きりん座を構成する主要な星の特徴

きりん座は広大な面積(756.83平方度で全天18位)を持つ星座ですが、明るい星が少なく、4等星以下の暗い星々で構成されています。そのため都会の明るい夜空では全く見えず、星空の綺麗な場所での観測が必要です。

 

🌟 主要な構成星の一覧

  • β星(ベータ星):きりん座で最も明るい星で、4.0等級の黄色い超巨星です。主星が4等級、伴星が7.4等級の二重星であり、望遠鏡(口径5cm前後)で2つの星を観察できます。
  • α星(アルファ星):4.29等級の青色超巨星で、きりん座ではβ星、CS星に次いで3番目に明るい星です。地球から約5,200光年離れており、全星座のα星の中で最も遠い位置にあります。質量は太陽の32倍という巨大な恒星です。
  • CS星(きりん座CS星):4.22等級の青色超巨星で、脈動変光星の一種「はくちょう座α型変光星」に分類されます。約26.76日の周期で4.29等から4.34等の範囲で変光する興味深い星です。
  • 11番星・12番星:きりん座の後ろ足付近に輝く二重星で、11番星はブルー、12番星はオレンジという対照的な色を持ち、そのコントラストが非常に美しいことで知られています。

きりん座の構成星や星図についての詳細情報(天体写真の世界)

きりん座の名前の由来とラクダ説

きりん座の学名「Camelopardalis」はラテン語でキリンを意味しますが、興味深いことに、この名前には「ラクダ(Camel)」と「ヒョウ(Pard)」という2つの動物の名前が組み合わされています。これは、古代の人々がキリンを「ラクダとヒョウが混ざった動物」として認識していたことに由来します。

 

実は、きりん座のモデルとなったのは本来キリンではなくラクダだったという説が存在します。バルチウスが当初、旧約聖書に登場する美女リベカの嫁入りを手伝ったラクダの姿をもとに「らくだ座」を描いたと伝わっています。その後、星座が正式に設定される際、ヘベリウスが似たスペルを持つラクダ(Camel)とキリン(Camelopardalis)を取り違えてしまい、「きりん座」として定着してしまったというのです。

 

このエピソードは、星座の歴史における偶然の産物であり、現代まで続く名称の混乱を物語っています。もし正確に翻訳されていれば、私たちは今頃「らくだ座」を夜空に探していたかもしれません。

 

きりん座が見える時期と観測方法

きりん座は北天に位置する周極星座であり、日本では一年中見ることができます。特に見頃は秋から冬にかけて(10月から2月頃)で、20時南中は2月10日頃となり、このときの高度は約56度です。北極星のあるこぐま座ぎょしゃ座の1等星カペラの間の領域に広がっています。

 

🔭 観測のポイント

  • まず冬のダイヤモンドの一角である「ぎょしゃ座」の1等星カペラを目印にします。カペラは天頂近くにある明るい星で、五角形を形作るぎょしゃ座の目印です。
  • カペラから北極星に向かって約3分の1ほどの位置に5等星があり、これがきりん座の尾の部分になります。
  • そこから東側へ三角形を描くように星をたどると、キリンの長い首が北極星の方向へ伸びています。
  • 肉眼で確認できる星は45個(5.5等まで)ですが、都会の光害がある場所では観測が困難です。できるだけ暗い場所で観測しましょう。

きりん座は周極星座であるため地平線下に沈むことがなく、北半球の中緯度地域では常に空のどこかに存在しています。ただし、季節によって位置が変わるため、冬の夜空で最も高く昇る時期が観測に適しています。

 

きりん座の観測時期と位置の詳細(コトバンク天文学事典)

きりん座の天体観測の見どころ

きりん座には明るい星は少ないものの、望遠鏡や双眼鏡で観測すると興味深い天体が数多く存在します。特に深宇宙天体(ディープスカイオブジェクト)の観測に適した星座として天文ファンに知られています。

 

🌌 主な観測対象天体

  • NGC 1502(散開星団:6.9等級の散開星団で、約45個の星が集まっています。双眼鏡でも確認でき、望遠鏡ではさまざまな色の星々がきらめく美しい姿を楽しめます。
  • NGC 2403(渦巻銀河):8.8等級の渦巻銀河で、おおぐま座との境界近くに位置します。比較的明るい銀河であり、中型の望遠鏡で渦巻構造の一部を確認できます。地球から約800万光年の距離にあり、私たちの銀河系と同規模の銀河です。
  • NGC 2523(銀河):2024年12月に日本のアマチュア天文家・大野勝仁さんがこの銀河に16.5等の超新星を発見したことで注目を集めました。
  • NGC 2550A(銀河):2024年1月に板垣公一さんが17.8等の超新星を発見した銀河で、きりん座は超新星発見のフィールドとしても重要な領域となっています。

きりん座の二重星も観測の魅力の一つです。β星の二重星は望遠鏡で分離でき、11番星と12番星の青とオレンジの色彩対比は、カラフルな宝石のような美しさを見せてくれます。

 

きりん座での超新星発見のニュース(アストロアーツ)

 

 


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