アイムは、ソロモン72柱の悪魔の中でも特に印象的な外見を持つ序列23番の地獄の公爵または侯爵として知られています。その最も特徴的な点は三つの頭を持つことで、『ゴエティア』によれば「蛇のようなもの」「人間男性のようなもの」「子牛のようなもの」という異なる生物の頭部を備えているとされています。一方で別の伝承では、蛇、人間、猫の三つの頭を持つとも記述されており、この猫の頭は古代エジプトの女神バステトとの関連性を示唆するものとして注目されています。アイムは美しい人間の身体を持ちながら、マムシあるいはトカゲ、場合によっては竜に騎乗した姿で現れ、常に手には火の点いた松明を携えているという独特の姿をしています。
参考)http://www.st-page.com/sisetu/beno/datensi/Aim23.htm
アイムは「火の悪魔」として広く知られており、その手に持つ松明を用いて城砦や都市、さらには大きな宮殿にまで火を放つ破壊的な能力を有しています。プランシーの『地獄の辞典』では明確に「火の悪魔」と記述されており、松明の炎で城や都市を火の海にすることができるとされています。『儀式魔術の書』の記述では、都市や城、宮殿という具体的な対象ではなく、松明の火を使って破壊を拡げるという表現がなされており、その破壊範囲の広さが強調されています。この火の能力は、アイムを召喚する者にとって強力な武器となる一方で、制御を誤れば大きな災厄をもたらす危険性も持ち合わせているといえます。26の悪魔軍団を指揮する地獄の公爵としての権限と相まって、アイムは戦闘において圧倒的な破壊力を発揮する存在なのです。
参考)https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%A0
破壊的な火の力とは対照的に、アイムは人間に知恵を授けるという穏やかな能力も持ち合わせています。この悪魔はあらゆる分野で人間を賢明にする力があり、特に非常に個人的な物事、つまり私的な悩みや秘密に関する質問に対して真摯に答えてくれるとされています。召喚者を雄弁にしたり、賢人にしたりする能力は、会話術や知識獲得術の支配と関連があるとも考えられています。また、アイムは隠された物事に関する質問に対して真実を語る能力を持ち、秘密や謎を解き明かす助けとなります。この知恵を与える能力は、魔術師がアイムを召喚する主な理由の一つであり、単なる破壊者ではなく知識の提供者としての側面を持つ興味深い悪魔だといえます。
アイムの起源については、エジプト神話との深い関連性が指摘されています。フレッド・ゲティングズによる研究では、アイムが持つ松明と三つの頭という特徴から、この悪魔がエジプト神話に由来する可能性が高いと推測されています。特に注目すべきは、猫の頭を持つという特徴で、これは古代エジプトで崇拝されていた女神バステトとの関係を強く示唆しています。バステトは猫の頭を持つ女神として知られ、家庭の守護神や豊穣の女神として崇められていた存在です。キリスト教の影響下でこうした異教の神々が悪魔として再解釈される過程で、バステトの特徴がアイムという悪魔の姿に取り込まれた可能性が高いと考えられています。この神話的な背景は、アイムが単なる創作上の悪魔ではなく、古代文明の信仰体系と深く結びついた存在であることを示しています。
参考)ソロモン72柱の悪魔、堕天使の説明チャットノベル:序列第二十…
アイムは現代の様々な創作作品やゲームに登場し、独自の解釈がなされています。最も有名なのは『女神転生』シリーズで、「偽典・女神転生」では堕天使アイムとして登場し、原典に則した竜に騎乗した松明を持つ三頭の悪魔という姿でデザインされています。このゲーム内では火炎反射相性とアギ系(火炎系)スキルに特化した能力を備えており、火の悪魔としての特性が忠実に再現されています。また、モバイルゲーム『ドラゴングレイズ』では「悪魔火」という炎属性の物理攻撃技を所有しており、対象に物理ダメージを与えつつ自身の攻撃力と魔攻を増加させる能力を持つキャラクターとして実装されています。『メギド72』のようなソロモン王の悪魔召喚をテーマにしたゲームでも、72柱の悪魔を召喚・契約して戦うという設定の中で重要な役割を果たしています。これらの作品では、アイムの火の能力や知恵を授ける特性が様々な形でゲームシステムに組み込まれており、古典的な悪魔学の知識が現代エンターテインメントの中で生き続けていることを示しています。
アイムは、古代イスラエルの王ソロモンが使役したとされる72体の悪魔の一柱です。17世紀から伝わる作者不明のグリモワール『ゴエティア』、より正確には魔術書『レメゲトン』の第一部に記されたこの悪魔は、ソロモン王の封印によって契約下に置かれました。ソロモンの悪魔たちは四方の王、東のアメイモン、西のコルソン、北のジミマイ(ジミネア)、南のゴアプの力のもとに服しており、アイムもこの階層構造の中に位置づけられています。召喚と契約の概念は、召喚されるということが契約を意味し、召喚者から提示された制限を受け入れることを意味します。つまり、ソロモン王はアイムを召喚することで契約を結び、その強大な火の力と知恵を授ける能力を制御下に置いたということになります。この召喚契約のシステムは、現代の多くの創作作品でも基本的な設定として採用されており、悪魔召喚というテーマの根幹をなしています。
参考)2022年「メギドの日」記念『メギド質問箱』|『メギド72』…
アイムはソロモン72柱の悪魔の中で序列23番に位置づけられており、地獄の公爵または侯爵という高い地位を持っています。この序列は『ゴエティア』に記された順位であり、アイムは26の悪魔軍団を指揮する権限を有しています。地獄の階層構造において公爵や侯爵という爵位を持つことは、単なる下級悪魔ではなく、相当な権力と影響力を持つ存在であることを示しています。ソロモン72柱の悪魔たちは「長たる精霊たち(chief spirits)」とも呼ばれ、それぞれが複数の軍団を率いる指揮官的な立場にあります。アイムの26軍団という数は、72柱の中では中程度の規模といえますが、それでも相当な戦力を有していることを意味します。また、悪魔学者ヨハン・ヴァイヤーの『悪魔の偽王国』にも「エイムあるいはハボリム」として56番目に記載されており、複数の文献で言及される重要な悪魔であることがわかります。
参考)アイム - ナムウィキ
アイムは文献によって様々な名称で呼ばれており、その多様性も興味深い特徴の一つです。最も一般的な呼び方は「アイム(Aim、Aym)」ですが、「アイニ(Aini)」や「ハボリュム(Haborym)」という別名でも知られています。特に「ハボリム」という名称は、ヨハン・ヴァイヤーの『悪魔の偽王国』で使用されており、「エイムあるいはハボリム」として記述されています。日本語表記においても「アイム」「アイニ」「ハボリム」「ハポリュム」といったバリエーションが存在し、文献や作品によって表記が異なります。こうした名称の多様性は、悪魔学の文献が複数の言語と文化圏を経由して伝わってきた歴史を反映しています。また、「アイペロス」という似た名称の悪魔(イポス)も存在しますが、これは序列22番の別の悪魔であり、アイムとは区別されます。創作作品においてもこれらの別名が使用されることがあり、同一の悪魔が異なる名前で登場することもあります。
参考)アイム
ソロモン72柱の悪魔の中で、明確に「火を司る悪魔」として分類されているのはアイムとフェニクスの二柱のみです。これは、72柱という多数の悪魔の中でアイムが持つ独自性を示す重要な特徴といえます。フェニクスは不死鳥と同義とされ、再生と炎の象徴として知られていますが、アイムの火は破壊に特化した性質を持っています。松明を持って城砦や都市を焼き払うという能力は、戦争や攻城戦における強力な武器となり得るもので、実際の歴史における火攻めという戦術を悪魔の力として具現化したものと考えられます。一方で、水や水音に関連する悪魔としてフォカロル、ウェパル、クロケル、カミオなどが存在し、72柱の中には様々な自然現象や元素と結びついた悪魔が配置されていることがわかります。このような分類の中で、アイムは火という最も破壊的で制御困難な元素を司る存在として、特別な位置を占めているのです。
参考)215 「ソロモン!ゲットやで!」シリーズ 序列23番・アイ…
現代の占いやスピリチュアル文化において、アイムは知恵と洞察を求める際に召喚される存在として解釈されることがあります。古典的な悪魔学では破壊的な火の力が強調されていますが、占いの文脈では「隠された真実を明らかにする」「個人的な悩みに答える」という知的な側面が重視される傾向にあります。特に、非常に個人的な物事について真摯に答えるという能力は、パーソナルな占いやカウンセリング的なアプローチと親和性が高く、現代のスピリチュアル実践者にとって魅力的な特性となっています。また、エジプト神話のバステトとの関連性という古代的なルーツは、神秘主義や秘教的な知識を求める人々の興味を引く要素となっています。一方で、26の軍団を率いる地獄の公爵という強力な立場は、願望実現や目標達成のための力強いサポーターとしてのイメージも生み出しています。ただし、召喚や契約には相応のリスクが伴うという伝統的な警告も忘れてはならず、安易に扱うべき存在ではないという認識も占い文化の中で共有されています。
参考)アイム - Wikipedia
人気アニメ『ワンピース』に登場する「イム様」という謎のキャラクターが、アイムという悪魔の名前と同じ発音であることから、一部のファンの間で関連性が議論されています。作中でイム様は「悪魔こそ生命のあるべき姿」と述べており、悪魔的な特徴を持つキャラクターとして描かれています。イム様は魔法陣から本を取り出し、そこから様々な武器を具現化するという魔法じみた能力を持ち、遠隔地の対象を消滅させたり、他者に不死の体を与えたりする強大な力を発揮します。これらの能力は「悪魔の力」や「悪魔の契約」と関連付けられており、ソロモン72柱のアイムが持つ知恵を授ける能力や契約という概念との類似性が指摘されています。さらに、イム様は巨人族を支配下に置く能力を持ち、ブロギーとの契約で寿命と引き換えに不死の体と常ならざる腕力を与えるという描写があります。これは悪魔学における悪魔との契約、すなわち何かを差し出す代わりに超常的な力を得るという伝統的なモチーフを踏襲しています。ただし、これはあくまでファンによる考察であり、作者が明確にソロモン72柱のアイムを参考にしたという公式な言及はありません。
参考)ワンピース1150話考察:イム様の「悪魔」と“ひっくり返され…
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