こうま座は、ギリシャ神話において天馬ペガススの弟「ケレリス」の姿を表した星座として知られています。伝令神ヘルメスが、双子座の兄カストルに与えた名馬だと伝えられており、カストルは馬術の名人として有名でした。ケレリスもペガススと同様に翼の生えた天馬だったとされ、兄ペガススのもとへ向かう姿を星座にしたという説もあります。
参考)https://ryutao.main.jp/mythology_35.html
別の神話では、海神ポセイドンが三つ又の鉾で岩を打ち砕いた際に、その岩の中から美しい馬が飛び出し、それがこうま座になったとも言われています。また、ポセイドンが美しいニンフに近づくために姿を変えた子馬だという伝承も存在します。
参考)https://mirahouse.jp/begin/constellation/Equuleus.html
こうま座の起源は謎に包まれた部分も多く、はっきりとした神話が確立していません。古代ギリシアの天文学者ヒッパルコスが「いるか座の星を切り取って作った」という記録も残されており、その歴史は紀元前にまで遡ります。プトレマイオスの48星座の一つとして古くから知られていますが、設定者については諸説あり、神話学者によって「ケレリス説」「キュラルス説」など複数の解釈が存在しています。
参考)こうま座とは (コウマザとは) [単語記事] - ニコニコ大…
こうま座の中で最も明るい星は、α星の「キタルファ」です。視等級3.92等の黄色巨星で、太陽の約2倍の質量を持つ連星系を形成しています。キタルファという名前は、アラビア語で「馬の一部」を意味する「アル・キトア・アル・ファラス」に由来しており、星座絵では小馬の頭頂部に位置しています。太陽系から約186〜190光年の距離にあり、スペクトル型はG0IIIです。
参考)こうま座とは?見つけ方や見どころ
δ星(デルタ星)は、視等級4.47〜4.49等の分光連星で、こうま座では2番目に明るい星です。太陽系から約60〜61光年の距離にあり、5.19等のA星と5.52等のB星が約5.7年の周期で互いの共通重心を周回しています。スペクトル型はF5V+で、小馬の下あごの部分に位置しています。固有名「フェラサウバル」を持つこの星は、F型主系列星の特徴を示しています。
参考)こうま座 - Wikiwand
γ星(ガンマ星)は、視等級4.70等の変光星であり、同時に二重星でもあります。りょうけん座α2型の回転変光星として分類され、双眼鏡で観察すると4.7等と6.1等の2つの星に分離できます。太陽系から約115光年の距離にあり、スペクトル型F0pの特徴を持ち、小馬の鼻先に位置しています。
| 星名 | 視等級 | 距離(光年) | スペクトル型 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| α星キタルファ | 3.92等 | 186 | G0III | 黄色巨星・連星系 |
| δ星 | 4.47等 | 60 | F7(V)+G0(V) | 分光連星・5.7年周期 |
| γ星 | 4.70等 | 115 | F0p | 変光星・二重星 |
| β星 | 5.16等 | 360 | A3V | 多重星系 |
β星は視等級5.16等で、太陽系から約360光年離れた位置にある多重星系です。スペクトル型A3Vの特徴を持ち、小馬の首の付け根に位置しています。この星には固有名が存在せず、こうま座の主要な星の中では最も暗い星の一つです。
こうま座には、天体望遠鏡での観測に適した興味深い天体がいくつか存在します。特に注目されるのがε星(イプシロン星)で、視等級5.30等の重星として知られています。小口径6cm前後の望遠鏡で観察すると、淡いブルーとイエローの2つの星に分離して見ることができ、さらに口径25cm程度の望遠鏡を使用すれば、明るい方の主星をさらに2つに分けることが可能です。太陽系から約197光年の距離にあり、スペクトル型F5IIIの分光連星系を形成しています。
R星は、こうま座に存在するミラ型変光星として特筆すべき天体です。スペクトル型M3e-M4eを持ち、約260.76日の周期で8.7等から15.0等の範囲で明るさを大きく変化させます。この変光幅は約6.3等級にも及び、最も暗い時期には15等級まで減光するため、観測には中型以上の望遠鏡が必要となります。ミラ型変光星は赤色巨星が脈動する現象で、恒星の進化過程を研究する上で重要な天体です。
こうま座9番星も変光星として登録されており、視等級5.81等のM2III型赤色巨星です。太陽系から約1058光年という遠距離にあり、絶対等級は-1.75等と本質的には非常に明るい星です。
こうま座には小望遠鏡で観察できる星雲星団は存在しませんが、ε星は小望遠鏡向けの素晴らしい観察対象として推奨されています。双眼鏡や小型望遠鏡でも楽しめる二重星や連星系が複数存在し、4番星や6番星なども二重星として観測可能です。
こうま座は全天88星座の中で87位、面積わずか72平方度という2番目に小さい星座です。日本から見える星座の中では最も小さく、最も明るい星でも4等星のキタルファしかないため、探し出すのは容易ではありません。観測に適した時期は秋で、10月上旬の20時頃に南中し、南中高度は東京近郊で約60〜62度となります。
参考)https://seiza.imagestyle.biz/aki/koumamain.shtml
こうま座を見つけるには、まず「ペガススの大四辺形」として知られる秋の大四辺形を目印にします。ペガスス座は大きな四角形が目立つため、すぐに見つけることができます。こうま座はペガスス座の頭の先、つまり四辺形の西側付近に位置しており、わし座との間辺りですがペガスス座に近く、その頭の上にのっているような配置です。
小さくて暗い台形のような星の並びを探すと、それがこうま座です。4等星のα星キタルファと、その北に並ぶ2つの5等星は、わし座のアルタイルとその両脇に並ぶ3つの星と同じくらいの間隔で離れています。いるか座やや座とも同じような大きさなので、これらの星座と大きさを比べることで、間違えずに見つけることができます。
観測のポイントとして以下の点に注意が必要です:
隣接する星座はペガスス座、いるか座、みずがめ座の3つで、これらを目印にすることで位置を特定しやすくなります。ペガスス座より先に昇ってくることから、ラテン語では「エクウス・プリオル(初めの子馬)」と呼ばれていました。
こうま座は紀元前から知られる古い星座で、プトレマイオスの48星座の一つとして記録されています。しかし、その起源についてははっきりと分かっておらず、設定者については複数の説が存在します。紀元前1世紀のロードス島のゲミーノスが著した『パイノメナ序説』には、「ヒッパルコスがいるか座の星を切り取って作った」と記されており、プトレマイオス以前からこの星座が存在したことが確認できます。
参考)こうま座とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書
日本における呼称の変遷も興味深い歴史を持っています。1879年(明治12年)にノーマン・ロッキャーの著書『Elements of Astronomy』を訳した『洛氏天文学』では「リットルホールス」として紹介されました。その約30年後の明治後期、1910年(明治43年)2月刊行の日本天文学会の会報『天文月報』第2巻11号に掲載された「星座名」という記事では、単に「駒」と呼ばれていたことが確認できます。
参考)こうま座 - Wikipedia
17世紀初頭の1603年、ドイツの法律家ヨハン・バイエルが編纂した星図『ウラノメトリア』では、「小さい方の馬」を意味する「EQVVS MINOR」という名称が付けられ、α・β・γ・δの4つの星が記載されました。バイエルはさらに「先行する馬」を意味するEquus priorや、現在と同じEquuleusという名称も付記しています。
中国の天文学においても、こうま座の星は記録されていました。清朝乾隆帝治世の1752年に完成した星表『欽定儀象考成』では、こうま座の星は二十八宿の北方玄武七宿の第四宿「虚宿」に配されていたとされています。これは東アジアの天文学における星座体系の中で、こうま座の星々がどのように認識されていたかを示す重要な記録です。
こうま座の小ささは際立っており、全天で最も小さいみなみじゅうじ座(サザンクロス)に次ぐ面積の狭さです。明るい星が少なく目立たない星座であるにもかかわらず、2000年以上にわたって天文学の歴史の中で語り継がれてきたことは、古代の天文学者たちがいかに綿密に夜空を観察していたかを物語っています。
Wikipedia「こうま座」
こうま座の詳細な天文学的データ、歴史、主要な恒星の情報が網羅的にまとめられています。星座の起源や各時代での呼称の変遷を知るための参考資料として有用です。
星座と神話 - 天体写真の世界「こうま座」
こうま座の神話や主要な星の解説、双眼鏡・天体望遠鏡での観測情報が詳しく紹介されています。実際の観測を計画する際の実用的な情報源です。