がか座神話と構成する星|見つけ方と南天イーゼルの特徴

がか座は南天に輝く新しい星座で、3等星のα星を中心に三角形の形を描きます。18世紀に設定された画架をモチーフにした星座の神話や、カノープスを目印とした見つけ方、そしてβ星の惑星系の秘密とは?

がか座神話と構成する星

この記事で分かること
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がか座の基本情報

18世紀に設定された南天の新しい星座で、イーゼル(画架)をモチーフにした形状が特徴です

構成する主要な星

3等星のα星、デブリ円盤を持つβ星、γ星の3つで三角形を形成しています

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観測のポイント

カノープスを目印に南の低空を探すと見つけやすく、沖縄以南では全体像を確認できます

がか座の神話と歴史的背景

がか座は1756年にフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカイユによって設定された、比較的新しい星座です。18世紀に喜望峰で南天の星空を観測したラカイユは、南半球の未命名の星々を整理し、17種類の新しい星座を作り出しました。がか座もその一つで、当初は「画架とパレット」という名前で呼ばれていました。

 

参考)がか座|やさしい88星座図鑑

新しい星座であるため、古代ギリシャやローマに伝わるような神話や伝説は存在しません。ラカイユが設定した星座は、科学や芸術に関連する道具をモチーフとしており、がか座は画家が使うイーゼル(画架)を表現しています。注目すべき点として、この星座は「画家座」ではなく「画架座」である点で、人物ではなく道具そのものが星座になっている珍しい例です。

 

参考)https://seiza.imagestyle.biz/minami/gaka.shtml

ラカイユの時代、南天の星空は未開拓の領域でした。彼は望遠鏡や顕微鏡などの科学機器をモチーフにした星座を多く設定しましたが、その中でがか座は芸術分野を代表する存在として位置づけられました。当時のヨーロッパにおける科学と芸術の発展を反映した、時代を象徴する星座といえるでしょう。

 

参考)星座八十八夜 #54 ラカイユの美術道具シリーズ「がか座」 …

がか座を構成する主要な星の特徴

がか座で最も明るい星はα星で、見かけの明るさは3.30等級です。地球からの距離は約99光年で、A7IV型の準巨星に分類されます。α星は爆発変光星としても知られ、カシオペヤ座γ型の変光星で、連星であり高速自転をしている特徴的な天体です。南中したカノープスのほぼ真南に位置するため、見つける際の重要な目印となります。

 

参考)https://mirahouse.jp/begin/constellation/Pictor.html

がか座β星は見かけの明るさ3.86等級の4等星で、がか座で2番目に明るい恒星です。地球からの距離は約63.4光年で、太陽の約1.75倍の質量と8.7倍の光度を持つ若い星です。この星が特に注目される理由は、1983年にデブリ円盤が発見され、2008年には太陽系外惑星が望遠鏡で直接撮像されたことにあります。1984年には可視光で、がか座β星の周りに多量の塵からなる円盤が撮像されたことから、デブリ円盤の存在が明らかになりました。

 

参考)がか座 - Wikiwand

がか座γ星はカノープスの西側に位置し、β星と南北に並んでカノープスと三角形を描いています。この3つの星の配置がイーゼルの脚部分を形作っており、画架のシルエットを想像する助けとなります。全体的にがか座は3等星以下の暗い星で構成されているため、近くに位置するりゅうこつ座の1等星カノープスが見つける際の重要な目印となります。

 

参考)https://ryutao.main.jp/mythology_18.html

星名 明るさ(等級) 距離(光年) 特徴
α星 3.30 99 がか座で最も明るい準巨星
β星 3.86 63.4 デブリ円盤と太陽系外惑星を持つ
γ星 - カノープスとβ星で三角形を形成

がか座の見つけ方と観測に適した時期

がか座は南天の星座で、本州のほとんどの地域からは全体の姿を見ることができません。沖縄県北大東村以南の地域であれば全体像を確認できますが、地平線近くに位置するため見つけにくい星座です。がか座の見つけ方のポイントは、りゅうこつ座の1等星カノープスを目印にすることです。

 

参考)http://azfa2.jp/tenmondai/hosinoshasin/seiza/fuyu/pictor.html

カノープスは全天で2番目に明るい白色の1等星ですが、日本では南中時でも地平線すれすれの低空にしか見えません。空の低い場所に位置するため地球の大気の影響を受け、本来より暗く赤っぽい色に見えるのが特徴です。カノープスの西側、カノープスからほぼ同じくらいの距離にγ星とβ星が南北に並び、カノープスと三角形を描いています。α星は南中したカノープスのほぼ真南に見つけることができます。

 

参考)カノープスを見つけよう

観測に適した時期は2月上旬で、2月8日頃に南中します。よく晴れた夜に南の空が開けた場所で、冬の大三角やおおいぬ座のシリウスを目印にして、南の地平線すれすれに姿を現すカノープスを探すことから始めましょう。那覇では南中高度が11.2度、福岡では2.6度程度しかないため、南の視界が開けた観測地を選ぶことが重要です。

がか座β星のデブリ円盤と惑星系

がか座β星の周囲に広がるデブリ円盤は、天文学者たちに大きな驚きをもたらしました。デブリ円盤とは、主系列に至った恒星の周りに形成される塵の円盤で、惑星の材料の残骸(デブリ)で形成されているため、残骸円盤とも呼ばれます。1984年に可視光でがか座β星の周りに多量の塵からなる円盤が撮像されたことで、その存在が初めて明らかになりました。

 

参考)若い惑星系に残るガスは塵から供給された

デブリ円盤の観測から、がか座β星の周囲では惑星が作られつつあるか、すでに作られている可能性が示唆されています。実際に2008年には、太陽系外惑星が望遠鏡によって直接撮像されるという画期的な成果が得られました。これは、惑星が恒星のまぶしい光の中から直接観測された貴重な例の一つです。

2017年の研究では、アステ望遠鏡を用いてがか座β星のデブリ円盤を電波観測し、炭素原子のサブミリ波輝線が検出されました。この発見は、デブリ円盤に付随するガスの起源を解明する手がかりとなっています。原始星の周りにはガスと塵からなる原始惑星系円盤が形成され、円盤内部で塵が衝突合体して惑星が生まれ、その後ガス成分は消失して惑星系が完成すると考えられてきましたが、デブリ円盤に残るガスの存在は新たな疑問を投げかけています。

 

参考)https://www.wakusei.jp/book/pp/2022/2022-1/2022-01-078.pdf

理化学研究所:若い惑星系に残るガスは塵から供給された
デブリ円盤のガス起源に関する詳細な研究成果が紹介されており、がか座β星のデブリ円盤観測についての専門的な情報が得られます。

 

がか座と南天の星座観測の魅力

がか座を含む南天の星座観測は、日本からは制約がありますが、だからこそ特別な価値があります。南半球では、日本では決して見ることのできない南十字星や大小マゼラン雲などの天体が観測できます。ゴールデンウィークの時期は南半球で星空観測をするのに最適で、22時頃には南の空の見やすい位置に南十字座が昇り、天の川も美しく見えます。

 

参考)http://www.cc9.ne.jp/~lynx/cosmic/220327.html

南半球の季節と星座の関係も興味深い特徴です。南半球では12月下旬から3月下旬が夏で、最も大きな星座のいくつかを眺めるのに最適な時期となります。南半球の中〜高緯度の多くの地域では、みなみじゅうじ座、ケンタウルス座、りゅうこつ座は周極で一晩中沈まず、秋(3月下旬〜6月下旬)には夕方に見やすい高度まで上がります。がか座もこれらの星座に近い位置にあり、南天観測の際には合わせて観察できる星座です。

 

参考)https://starwalk.space/ja/news/constellations-southern-hemisphere

星空観測の際には月齢を確認することが重要です。満月の前後1週間ずつは避けた方がよく、旧暦の1日が新月、15日が満月であることを覚えておくと便利です。オーストラリアのエアーズロック周辺のような乾燥地帯では、一年中きれいな星空が見られるため、南天観測の理想的な場所となっています。

  • 🌏 オーストラリアやニュージーランドは南天観測の理想的な場所
  • ⭐ ゴールデンウィークは南十字星や天の川が最も見やすい時期
  • 🌙 満月前後1週間を避けることで星空がより美しく見える
  • 🔭 りゅうこつ座のカノープスを起点にがか座を探すのが効率的
  • 🌌 南半球の夏は最大級の星座を観測できる絶好の機会

がか座は目立たない星座ですが、そのひっそりとした存在感が南天の星空に独特の味わいを加えています。3等星以下の暗い星々で構成されているからこそ、見つけた時の喜びはひとしおです。近くに輝くカノープスという明るい道標があることで、初心者でも挑戦しやすい観測対象となっています。南天の星座観測は日本からは難しいですが、沖縄や海外での観測機会があれば、ぜひこの控えめな画架の星座を探してみてください。

 

参考)がか座とは (ガカザとは) [単語記事] - ニコニコ大百科