ほうおう座は16世紀末にオランダの航海士ケイザーとホウトマンによって設定され、1603年にドイツの天文学者ヨハン・バイエルが星図に採用した比較的新しい星座です。そのため、ギリシャ神話に基づいた物語は伝わっていません。この星座のモチーフとなったフェニックスは、エジプトの神秘的な鳥として知られ、500年に一度炎の中に飛び込んで死に、その灰の中から再び若く美しい姿で蘇る不死鳥を表しています。
参考)ほうおう座ってどんな星座?【神話も紹介】
フェニックスは、エジプトの太陽神ラーの魂とされる聖なる鳥「ベヌウ」がモデルになったと考えられており、日没とともに滅び日の出とともに復活する存在です。この死と再生のサイクルは、人生の中での試練や苦しみを乗り越え、再び立ち上がる力を持っていることを象徴しています。朝日と強い結びつきを持つベヌウを下敷きにして生まれたフェニックスが、夜空に輝く星座として描かれているのは興味深い対比といえるでしょう。
参考)ほうおう座とは?見つけ方や見どころ
ほうおう座を構成する星々は、3等星と4等星から作られるひし形を基本とし、そこから真っすぐな線と折れ曲がった線が1本ずつ伸びたような形をしています。肉眼で見える星は約70個あり、L字とI字に伸びて星が並ぶ配置が特徴的です。
参考)ほうおう座|やさしい88星座図鑑
ほうおう座を構成する主要な恒星
| 恒星名 | 等級 | 特徴 |
|---|---|---|
| α星(アンカア) | 2.37等星 |
ほうおう座で最も明るい橙色巨星。太陽の約83倍の光度を持つ |
| β星 | 4.0~4.2等星 |
二重星で、2つの星が1.35秒角の距離で並んでいる |
| ζ星(ヴレン) | 4.0等星 | アルゴル型変光星で、4等級と7等級の星から成る二重星 |
α星アンカアは「不死鳥」を意味するアラビア語に由来し、2016年7月20日に正式に固有名として承認されました。赤く輝くアンカアは、炎の色をした翼を持つと伝わるフェニックスを象徴するかのような星で、鳳凰の左の翼部分に位置しています。また、ζ星は2017年にオーストラリアの先住民の呼び名に由来する「ヴレン(Wurren)」という固有名が付けられました。
参考)ほうおう座ゼータ星とは - わかりやすく解説 Weblio辞…
ほうおう座は秋の星座として知られ、10月から1月にかけて南の夜空に現れますが、日本では地平線ギリギリにしか昇らないため、星座全体を見ることは非常に難しい星座です。20時南中は12月2日で、南中高度は約6~7度という低さです。日本国内でほうおう座の全景が見られるのは鹿児島県よりも南の地域、つまり沖縄に限られ、東京では星座の一部しか目にすることができません。
ほうおう座を見つけるための目印として、まずエリダヌス座の1等星アケルナル(0.4等星)を探しましょう。アケルナルの北西方向を辿ると、ほうおう座のα星アンカアが見えてきます。また、つる座の2つの2等星であるα星アルナイルとβ星ティアキを確認してから、さらに東の方角に目をやるとアンカアを見つけることができます。アンカアは、みなみのうお座の1等星フォーマルハウトと、くじら座の尾にあたるβ星ディフダとの3つの星で正三角形を形作っているため、この配置を手がかりにすると見つけやすいでしょう。
参考)https://seiza.imagestyle.biz/aki/hououmain.shtml
ほうおう座の見つけ方と詳しい観測方法|トロモロ
ほうおう座の季節ごとの見え方や観測のコツについて、図解付きで分かりやすく解説されています。
低い位置で光るほうおう座を観測するためには、南の空を遮るもののない、できるだけ開けた場所から観察することが重要です。南半球のオーストラリアなどでは8月から12月頃にかけて見ることができ、日本よりもはるかに観測しやすい環境にあります。
ほうおう座の星座絵は、翼を広げたフェニックスの姿を描いています。ひし形の一角からL字とI字に伸びる星の並びが、不死鳥が羽ばたく様子を表現しており、α星アンカアは鳳凰の左の翼部分、または頭部に位置しています。この星座絵によって多少の違いはありますが、7つの主要な星を繋ぎ合わせることで、翼を広げたフェニックスの姿が浮かび上がる仕組みです。
ほうおう座の面積は469.32平方度で、88星座中37位の大きさです。比較的明るい星から構成されているため、観測条件が良ければ分かりやすい星座といえます。しかし日本からは低空にしか見えないため、光害の少ない場所で、かつ南の地平線まで見渡せる環境が必要です。
ほうおう座周辺の主な星座
これらの星座に囲まれた中で、特にエリダヌス座の1等星アケルナルは、ほうおう座を探す際の重要な目印として活用されています。
ほうおう座の日本語名は「鳳凰」ですが、実際にモチーフとなったのは西洋のフェニックスであり、両者は起源も特徴も大きく異なる存在です。鳳凰は中国の太古から伝わる神獣で、聖人が国を正しく治めているときにのみ現れる「めでたい鳥」の象徴とされています。雄を「鳳」、雌を「凰」と呼び、孔雀に似た容姿で卵を産むのが特徴です。一方、フェニックスはエジプトが起源の霊鳥で、雄だけが存在し卵は産まず、鷲に似た容姿を持ちます。
参考)鳳凰が朱雀を経て火の鳥からフェニックス! - 妖怪うぃき的妖…
鳳凰とフェニックスが混同されるようになった理由には、中国の五行思想が関係しています。五行思想では、方角を司る霊獣として南(火の属性)を守る霊獣に鳳凰を採用し、名前を「朱雀」と改めました。これにより「鳳凰=朱雀=火の属性」という連想が生まれ、さらに西洋のフェニックスも「火の鳥」であることから、「フェニックス=朱雀=鳳凰」という誤解が広まってしまったのです。しかし厳密には、鳳凰は中国の霊鳥、朱雀は中国の神獣、フェニックスはエジプトの霊鳥と、それぞれ別の存在です。
参考)「鳳凰」と「フェニックス」の違いを解説!「朱雀」とも違う?
ほうおう座の詳細情報と観測ガイド|Stella Room
ほうおう座の基本データから見どころ、神話の背景まで、天文ファン向けに詳しく解説しています。
ほうおう座の学名が「Phoenix」であることから、この星座は西洋のフェニックスをモチーフとしていることが明確です。炎の中から蘇る不死鳥という象徴は、人生における変容や復活、新しいスタートに向けて進む力を与える意味を持っており、夜空に輝くこの星座には深い精神的なメッセージが込められています。
参考)ほうおう座-恒星(アンカア) - Astro 🌙 Desig…
ほうおう座は日本からの観測が難しい星座ですが、だからこそ見えたときの感動は格別です。南の地平線に近い位置にあるため、海岸線や高台など南側に障害物のない場所を選ぶことが観測成功の鍵となります。特に12月上旬の20時頃が南中時刻にあたるため、この時期に南方旅行を計画すれば、より良い条件でほうおう座を観測できるでしょう。
α星アンカアの赤く輝く姿は、望遠鏡で観測すると橙色巨星としての美しい色合いが際立ちます。また、ζ星ヴレンは口径8cm前後の望遠鏡で覗くと、青白く光る主星に寄り添うように小さな伴星が控えめに輝いている様子が見られ、二重星としての魅力を楽しむことができます。星図アプリを使って事前にほうおう座の位置を確認しておくと、実際の観測時にスムーズに見つけられます。
さらに、ほうおう座の観測を機に、周辺の南天の星座にも目を向けてみましょう。つる座やみなみのうお座、エリダヌス座など、日本では低空にしか見えない星座たちが織りなす南天の星空は、北天とはまた違った趣があります。秋から冬にかけて、南の地平線近くで輝くこれらの星座を探すことで、星空観察の新たな楽しみ方が広がります。沖縄や海外への旅行を計画する際には、ぜひほうおう座の観測を旅のイベントの一つに加えてみてはいかがでしょうか。
ほうおう座は肉眼星数が約70個あるため、双眼鏡を使って観測すると、より多くの星々を捉えることができ、不死鳥の翼の広がりをより詳細に感じ取ることができます。観測の際は、目が暗さに慣れるまで15分ほど待つことで、より暗い星まで見えるようになり、ほうおう座の全体像を把握しやすくなります。