振り子時計は、ゼンマイを動力源として精密な機械式時計の一種です。ゼンマイに蓄えられたエネルギーは、複数の歯車で構成される輪列機構を通じて伝達されます。この輪列は2番車、3番車、4番車といった複数の歯車で構成され、ゼンマイの力を適切に変換しながら時計針へと伝えていきます。
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ゼンマイ式時計の場合、定期的な巻き上げ作業が必要になります。8日巻きタイプでは週に一度の巻き上げが基本ですが、巻き上げが不十分だとゼンマイの力が弱まり、時計が止まる原因となります。ゼンマイ自体も経年劣化により弾性を失い、表面にサビが発生することがあるため、長期間使用した時計では交換が必要になる場合があります。
参考)手巻きゼンマイ式振り子時計
動力源であるゼンマイから伝わる力は非常に強く、そのままでは時計の針が一瞬で回り切ってしまいます。そのため、この強い力を制御して一定の速度に調整する脱進機という機構が不可欠になります。
参考)http://www.tokeizanmai.com/escapement.html
脱進機は振り子時計において最も重要な調速機構です。この機構の中心となるのがガンギ車と呼ばれるギザギザの歯を持つ特殊な歯車で、ゼンマイの動力を受けて回転しようとします。ガンギ車の回転を制御するのがアンクルという部品で、その形状が船の錨(いかり)に似ていることからこの名前が付けられました。
参考)https://kanteikyoku.jp/store/kakogawa/news/169363/
アンクルは振り子の動きと連動して左右に揺れ、2つの爪でガンギ車の歯を交互に受け止めたり解放したりします。この動作により、ガンギ車は一定のリズムで少しずつ回転することができます。機械式時計の「チクタク」という音は、まさにこのアンクルの爪がガンギ車の歯を受け止めたり外れたりする瞬間に発生する音なのです。
脱進機は単に速度を制御するだけでなく、振り子にエネルギーを補給する役割も担っています。振り子は放置すると空気抵抗などで次第に振幅が小さくなり止まってしまいますが、脱進機がガンギ車から受け取ったエネルギーの一部を振り子に戻すことで、連続的な往復運動を維持できるのです。
振り子時計が止まる最も多い原因の一つが、設置角度の不適切さです。時計本体が壁面に対して垂直に、かつ左右に水平に設置されていないと、振り子の動きが不均等になり止まってしまいます。時計本体がお辞儀をした状態や反り返った状態では、振り子が正常に往復運動できません。
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具体的には、振り子の停止位置が時計の中心(鉛直線)からずれていると、脱進機構が正しく機能せず時計が止まります。この現象は「片振り」と呼ばれ、振り子が左右均等に振れずに片側だけに偏ってしまう状態を指します。壁掛け用のフックが不安定だったり、壁自体が傾いていたりする場合も、適切な設置が困難になります。
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設置場所は安定した壁面や柱を選び、時計本体を壁にぴったりと密着させることが重要です。ホールクロックなど床置き型の場合は、床が水平であることを確認し、グラつきがあれば足元に紙などを挟んで調整する必要があります。正しく設置されていても止まる場合は、内部機械の問題が疑われます。
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今までまっすぐに設置して正常に動いていた時計が突然止まるようになった場合、内部機械の油切れや部品摩耗が主な原因です。機械式時計の内部には多数の歯車や軸受けがあり、これらの摩擦を軽減するために適切な潤滑油が注油されています。しかし、潤滑油は時間とともに劣化し、粘度が変化したり固まったりして本来の機能を失います。
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油切れの状態で時計を動かし続けると、ホゾ穴(軸受け部分)から真鍮製の地板の摩耗粉がにじみ出てきます。特に力が加わる二番車などの歯車は、ホゾ(軸)部分が摩耗して真円が楕円に変形してしまいます。この状態では歯車の回転が重くなり、ゼンマイの力が十分に伝わらなくなって時計が止まります。
部品の摩耗が進行した場合、単に潤滑油を注すだけでは解決しません。完全分解して各部品の摩耗状態を正常に戻し、ホゾ穴を研磨棒で磨き直してから組み立て直す必要があります。摩耗した部品は修正するか、場合によっては新しい部品への交換が必要になります。定期的なメンテナンスを怠ると修理費用が高額になる可能性があるため、3〜5年ごとのオーバーホールが推奨されます。
参考)時計修理の用語集
振り子時計を長く愛用するには、適切なメンテナンスと定期的な調整が欠かせません。ゼンマイ式の場合、動力源であるゼンマイを完全に伸ばして古い油を拭き取り、布できれいに磨き上げる作業が重要です。この工程を省略する修理店もありますが、ゼンマイ同士のすべりを良くするために必須の作業といえます。
時計の精度調整は、振り子に付いている錘(おもり)の位置を上下させることで行います。錘を上げると時計は進み、下げると遅れるようになります。調整用のナットを回して錘の位置を変更しますが、このナットは軸のネジに対して遊び(ガタ)があるため、調整後は錘がナットにしっかり接触していることを確認する必要があります。
参考)https://www.seiko-clock.co.jp/product-personal/up_files/ZAS-018P-N.pdf
振り子時計を移動する際は特別な注意が必要です。振り子や機械式時計本体をケースに付けたまま移動すると、部品が外れて故障の原因となります。移動前には必ず振り子と錘を取り外し、ゼンマイの力を解放してから慎重に運搬しましょう。移動後はケースの安定性を確認し、水平・垂直を調整してから振り子と錘を元通りに設置します。
参考)https://www.montre.co.jp/clock/images/Hallclock_Instruction2.pdf
時計の針を逆回転させることは避けてください。特に12時をまたいでの逆回転は、正時に鳴るボン打ち機構を壊す恐れがあり厳禁です。電池式クォーツタイプの振り子時計では、時計が止まったり時刻が遅れたりする症状が出た場合、まず電池交換を試してみることが推奨されます。
参考)http://www.gtr.co.jp/hobby-site/clock/gravity.htm
古い振り子時計の修理は、専門的な技術と経験を持つ時計修理技能士に依頼することが望ましいです。精工舎(現セイコー)製などの機械式振り子時計の場合、正規サービスでの修理料金は55,000円からとなっており、モデルによっては修理不可と判断されることもあります。しかし、時計修理専門店であれば正規サービスで対応できないモデルでも修理できる可能性が高いです。
参考)精工舎(現・セイコー)製の振り子時計やゼンマイ式置き時計・メ…
修理には完全分解洗浄(オーバーホール)が基本となります。全ての部品を分解し、専用の洗浄液で古い油や汚れを除去した後、各部品の摩耗状態をチェックします。ホゾ穴の修正、歯車の調整、ゼンマイの洗浄拭き取りなどを行い、適切な潤滑油を注油してから組み立て直します。組み立て後は2〜3日かけて時間の誤差を調整し、気持ちの良い「チクタック」という音で動くことを確認します。
近年では、古いゼンマイ式の機械を取り除き、電池式クォーツムーブメントに交換するリメイクも選択肢の一つとなっています。この方法であれば、定期的なゼンマイの巻き上げが不要になり、メンテナンスの手間が大幅に軽減されます。クォーツ式でも振り子を装飾として残すことができ、時計本体とは独立して振り子を動かす機構を組み込むことも可能です。ただし、機械式特有の味わいや歴史的価値を重視する場合は、オリジナルの機械を維持する修理を選ぶべきでしょう。
参考)https://wakaouzi.biz-web.jp/tokeisyuuri_.html
手巻きゼンマイ式振り子時計の詳細な修理工程
セイコー製機械式掛け時計の取扱説明書

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