スピリチュアルケア看護ルーで学ぶ実践と心の支え方

スピリチュアルケアは看護の現場でどのように実践されているのでしょうか。看護ルーで話題のこのケアについて、終末期患者の魂の痛みに寄り添う方法や、傾聴の技術、そして占い好きな方にも響く心のケアの本質を詳しく解説します。あなたの看護観は変わるでしょうか?

スピリチュアルケア看護ルーで知る実践

この記事で分かること
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スピリチュアルケアの本質

看護におけるスピリチュアルケアとは何か、その定義と実践方法を理解できます

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看護ルーでの議論

看護師コミュニティで語られるスピリチュアルケアの実際と悩みが分かります

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傾聴と共感の技術

答えのない問いに向き合う傾聴の姿勢と、患者の魂の痛みへの寄り添い方を学べます

スピリチュアルケア看護ルーが示す看護師の実践課題

看護ルーの掲示板では、看護学生や現役看護師がスピリチュアルケアについて「何がスピリチュアルケアなのか分からない」と悩みを投稿しています。この問いは、多くの医療現場で共通する課題を浮き彫りにしています。スピリチュアルケアとは、患者が病気や死と向き合う際に抱える「魂の痛み」に寄り添うケアであり、宗教的である必要はありません。看護ルーの用語辞典でも、全人的苦痛の一つとしてスピリチュアルな苦痛が位置づけられ、人生の意味への問い、自責の念、死への恐怖などが含まれると説明されています。
参考)全人的苦痛

 

スピリチュアルケアは特殊なケアではなく、日常の看護実践の延長線上にあるものです。患者の身体症状や精神症状の緩和を適切に行い、日常生活援助を丁寧に実施することで信頼関係が築かれ、患者は自分の深い悩みを語れるようになります。看護師が「関心を向けられている、尊重されている」という意識を患者に持たせることが、スピリチュアルケアの基盤となるのです。
参考)スピリチュアルペインを和らげる全般的なケア【スピリチュアルケ…

 

看護ルーのコミュニティでは、実際の体験や映画、書籍を参考にすることが推奨されています。理論だけでなく、具体的な人間の物語を通じて理解を深めることが、スピリチュアルケアの本質を掴むために重要です。
参考)スピリチュアルケアについて教えてください。

 

スピリチュアルケア看護の傾聴と共感の実践方法

スピリチュアルケアにおいて最も重要なのは「傾聴」です。傾聴とは、話し手から聞き手への一方的なコミュニケーションではなく、患者が「自分の思いを分かってもらえた」と感じられることで成立します。看護師は「何か答えなければ」という感情をいったん脇に置き、目の前の患者と向き合うことが求められます。
参考)スピリチュアルケアとは|一般社団法人日本終末期ケア協会

 

スピリチュアルペインには答えがないということを理解することが重要です。「なぜ自分がこんな病気になったのか」「あと2年でいいから生きたい」といった問いに対して、明確な正解はありません。患者も答えを求めているのではなく、辛さを共感してほしい、聞いてほしいという想いなのです。「うん、うん」と傾聴するだけでも、患者にとっては大きな支えになります。
参考)https://www.okinawa-u.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/2024/07/%E5%9C%9F%E6%9B%9C%E6%95%99%E9%A4%8A%E8%AC%9B%E5%BA%A7%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%82%A22024%E3%81%AE%E8%A8%98%E9%8C%B2%EF%BC%88%E6%9A%AB%E5%AE%9A%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88%E7%89%88%EF%BC%89.pdf

 

傾聴には訓練が必要であり、自分の言葉や態度に意識的になることで、自分のものの見方や考え方が見えてきます。また、スピリチュアルペインを抱えた患者の話を聞くことで、看護師自身もダメージを受けることがあります。そのため、一人で抱え込まず、緩和ケアチームなど多職種でスピリチュアルペインを共有することが大切です。
参考)http://www.oita-kanwa.org/yube/naiyou/naiyou-9.html

 

スピリチュアルケア看護におけるホスピスと緩和ケアの役割

ホスピスや緩和ケアの現場では、身体的苦痛の緩和に加えて、心や精神的な苦痛を和らげるケアが重視され、患者の全人的ケアが実践されています。近代ホスピス運動の創始者であるシシリー・ソンダースは、末期がん患者との関わりを通して全人的苦痛(トータルペイン)という概念を提唱しました。この概念では、身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛の4つの要因が患者の全人的苦痛を形成しているとされています。
参考)https://ifohs.kyoto-u.ac.jp/jp/kokoronomirai/kokoro_vol14_p38_p39.pdf

 

欧米のホスピスでは、多種の宗教者(チャプレン)が医療スタッフと協力して、死と向き合う患者の相談に乗れるようにホスピスに常駐していることが一般的です。日本ではこのような認識はまだ薄いものの、2013年には日本のホスピスの約15%に宗教家が携わるようになりました。
緩和ケアでは、スピリチュアルケアの目標として、患者が穏やかな状態や納得のできる状態を見つけることが挙げられます。完全に穏やかな状態にはなれなくても、「苦悩をもちつつも生きていける」と本人が思える状態に到達できればよいとされています。スピリチュアルペインは、他者が答えを与えることでも、解決することでもなく、その痛みや苦しみの意味をその人自身が見出すことで初めて真実なものになります。

スピリチュアルケア看護の時間性・関係性・自律性という3つの苦悩

スピリチュアルペインは、人間の存在の3つの側面から捉えられ、「時間存在」「関係存在」「自律存在」として分類されます。これらの分類は、スピリチュアルケアのアセスメントツールであるSpiPas(スピパス)の概念に基づいています。
参考)終末期にある患者さんのスピリチュアルペインを知る【スピリチュ…

 

時間性のスピリチュアルペインには、心残り、希望のなさ、死の不安、身辺整理に関する気がかり、人生の不条理などが含まれます。患者は死によって将来を奪われることから苦しみを感じ、「もう時間がない」という焦燥感に苛まれます。
参考)https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/sedation_2018/04_03.pdf

 

関係性のスピリチュアルペインには、家族や大切な人の心配、孤独感、負担感や申し訳なさ、人間を超えたものや信仰に関する苦悩などがあります。死による他者との関係の断絶が、深い孤独感や家族への心配を生み出します。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc/18/1/18_10-0009/_pdf

 

自律性のスピリチュアルペインには、自分のことができないつらさ、将来に対するコントロールの喪失、役割や楽しみの喪失、自分らしさの喪失、ボディイメージの変化などが含まれます。これらは患者のアイデンティティに深く関わる苦痛です。
参考)スピリチュアルペインを和らげる個別のケア【スピリチュアルケア…

 

スピリチュアルケア看護と占いや宗教との微妙な関係性

日本で「スピリチュアル」と聞くと、医療における全人的ケアとしてのスピリチュアルケアではなく、占いや霊的なもの、オカルトなどをイメージする人が多いのが現状です。この誤解が、スピリチュアルケアの実践を難しくしている一因となっています。
参考)スピリチュアルケアとは?看護師も資格取ったりしてるけど… |…

 

スピリチュアルケアは宗教的ケアとは区別されるべきものです。宗教的ペインは特定の宗教を信じている信者の苦痛であり、その宗教の教義を前提とする葛藤や疑問を指し、特定の宗教家の援助を必要とします。一方、スピリチュアルペインは人生の意味、苦痛の意味、死後の生命、罪責感などを問題とし、宗教に入信するわけでも、精神科医の投薬によって解消するのでもなく、自分自身で解決の道を探し出すものです。
参考)https://nirc.nanzan-u.ac.jp/journal/5/article/396/pdf/download

 

興味深いことに、占いに関心を持つ人々も、人生の意味や自己の存在価値、未来への不安といったスピリチュアルな問いを抱えています。占いは答えを与える材料として見なされがちですが、スピリチュアルケアの視点では、答えを与えるのではなく、クライエント自身が問いと向き合うプロセスを支援することが重要です。
看護師としてスピリチュアルケアに関心を持つことは決して悪いことではありませんが、相手の人生観や宗教観に安易に踏み込みすぎることは慎むべきです。大切なのは、「一緒に考え続ける姿勢」と「否定せず受け入れる関わり方」なのです。
参考)スピリチュアルペインとは?魂の痛みの3つの柱と看護計画 | …

 

スピリチュアルケア看護の全般的ケアと個別的ケアの実践

スピリチュアルケアは「全般的なケア」と「個別のケア」に分けられます。全般的なケアは、スピリチュアルペインに対するケアの基盤となるものです。
全般的なケアには、信頼関係を構築する、生きる意味や心の穏やかさ、尊厳を強めるケアを行う、現実を把握することを援助する、情緒的サポートを行う、置かれた状況や自己に対する認知の変容を促す、ソーシャルサポートを強化する、くつろげる環境や方法を提供する、積極的に症状を緩和する、チームをコーディネートするなどが含まれます。
個別のケアでは、高い頻度でみられる特定のスピリチュアルペインに対する具体的なアプローチが行われます。例えば、「負担感/申し訳なさ」(関係性のスピリチュアルペイン)に対しては、患者が家族に対して感じている申し訳なさを表現できる機会を作り、その思いを受け止めることが重要です。「自分のことができないつらさ」(自律性のスピリチュアルペイン)に対しては、患者ができることを見出し、小さな自己決定の機会を提供することが効果的です。
ケア提供者に必要な基盤は「気遣う」姿勢であり、患者に関心を寄せて、そこに「居合わせること(presence)」が重要です。看護師は患者と居合わせることにより、いつもとは違う感情が表現されていることや、行為や行動が違っていることに気づくことができるのです。
全人的苦痛の概念と4つの要因について、看護ルーの用語辞典で詳しく解説されています
スピリチュアルケアの基盤となるケアと個別のケアの具体的な実践方法については、ナースペースの記事が参考になります
日本終末期ケア協会のサイトでは、医療者が行うべきスピリチュアルケアの詳細が解説されています