陰陽道の本を読んでも、実際に効果があった呪術は全体の約3割しか現代に正確に伝わっていません。
陰陽道とは、中国から伝来した陰陽五行説をもとに、日本独自の発展を遂げた呪術・占術体系のことです。平安時代に国家の公式機関「陰陽寮」が設置され、天文・暦・占いを管轄していた事実はあまり知られていません。
陰陽道に関する本を手に取る前に、まずその歴史的な位置づけを理解しておくことが大切です。陰陽道は単なる「占い」ではなく、律令体制の中に組み込まれた国家的な学問でした。つまり、政治・軍事・医療すべてに関わる総合的な知識体系です。
現代で流通している陰陽道・呪術関連の本は大きく3種類に分類できます。
自分の目的に合ったカテゴリの本を選ぶことが基本です。
「陰陽道の本を買ったが難しくて途中で挫折した」という声は非常に多く、これは選ぶカテゴリを誤っていることが原因の多くを占めます。初めて陰陽道・呪術に触れるなら、まず教養・解説系から入り、関心が深まってから学術系・実践系へ進む流れが最も無駄のない学び方といえます。
陰陽道を語る上で外せない名前が安倍晴明(921〜1005年)です。ところが、現代に広く知られる「晴明像」の多くは、夢枕獏による小説『陰陽師』シリーズを通じて形成されたものであり、史実とは異なる部分が少なくありません。
史実の安倍晴明は、天文密奏(天文異変を朝廷に秘密報告する制度)で活躍した実務官僚でした。呪術師というよりも、気象・天体観測の専門家という側面が強かったのです。意外ですね。
陰陽道の歴史を学ぶ上で特に評価が高い書籍として、繁田信一著『陰陽師−安倍晴明と蘆屋道満』(中公新書)があります。この本は史料に基づいて「本当の安倍晴明」を描いており、伝説と史実の差異を丁寧に整理してくれます。また、小坂眞二著『陰陽道の発見』(NHKブックス)は、陰陽道が国家体制の中でどのように機能していたかを解説した一冊として高い評価を受けています。
陰陽道の系譜は安倍晴明の子孫である土御門(つちみかど)家が、江戸時代まで約700年にわたり陰陽頭の地位を独占していたという事実も重要です。土御門家の歴史を知ることで、陰陽道がいかに長く日本社会に根ざした存在であったかが理解できます。