コンサルティング業務源泉徴収の完全ガイド個人と法人の違いと対策

コンサルティング業務を依頼する際の源泉徴収は、相手が個人か法人かで大きく異なります。特に個人コンサルタントへの報酬には10.21%の源泉徴収が必要です。知らずに違反すると重いペナルティも。正しい手続きと計算方法を理解していますか?

コンサルティング業務における源泉徴収

コンサルティング業務の源泉徴収基礎知識
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個人コンサルタント

個人への報酬は原則として10.21%の源泉徴収が必要

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法人コンサルタント

法人への支払いは源泉徴収不要で経理処理が簡潔

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違反時のペナルティ

源泉徴収義務違反には追徴税と延滞税が課される

コンサルティング業務で源泉徴収が必要なケースの見極め方

コンサルティング業務における源泉徴収は、支払先の形態によって大きく異なります。所得税法では源泉徴収の対象となる報酬・料金が限定列挙されており、個人に対する支払いのみが源泉徴収の対象となります。
参考)個人の「経営コンサルタント」への報酬を支払う際には、源泉徴収…

 

個人コンサルタントへの支払いで源泉徴収が必要となるのは、その業務が「企業診断員」の業務に該当する場合です。国税庁の基本通達では、企業診断員には登録された中小企業診断士だけでなく、直接企業の求めに応じてその企業の状況について調査・診断を行い、企業経営の改善・向上のための指導を行う者が含まれます。
参考)経営コンサルタント(個人)に支払う報酬は源泉徴収が必要|スタ…

 

具体的には経営士、経営コンサルタント、労務管理士等と称する者の業務が該当し、これらの個人に対して報酬を支払う際は必ず源泉徴収を行う必要があります。一方、法人形態のコンサルティング会社への支払いは、所得税の対象外となるため源泉徴収は不要です。
参考)コンサルティング料の勘定科目は?仕訳方法や注意点などを解説 …

 

コンサルティング業務の源泉徴収税率と計算方法

個人コンサルタントへの報酬に対する源泉徴収税率は、支払金額により段階的に設定されています。支払金額が100万円以下の場合、源泉徴収税額は支払金額の10.21%となります。この税率には、2037年12月31日まで追加される復興特別所得税が含まれています。
参考)コンサルタント料の仕訳に使える勘定科目まとめ

 

100万円を超える場合の計算方法は、100万円×10.21%+(100万円を超えた分の金額)×20.42%となります。例えば、150万円のコンサルティング報酬の場合、100万円×10.21%+50万円×20.42%=102,100円+102,100円=204,200円が源泉徴収税額となります。
消費税が含まれている場合の源泉徴収計算では、税抜金額を基準とします。つまり、消費税込みの報酬から消費税額を差し引いた金額に対して源泉徴収税率を適用する必要があります。これにより、実際の手取り金額に大きな差が生じるため、事前の確認が重要です。
参考)フリーコンサルタントは消費税を請求できる?支払い義務は? -…

 

コンサルティング業務源泉徴収の経理処理と仕訳方法

個人コンサルタントへの報酬支払い時の仕訳処理では、源泉徴収税額を「預り金」として計上する必要があります。例えば、30万円のコンサルティング報酬を支払う場合、借方に外注費300,000円、貸方に現金269,370円と預り金(源泉所得税)30,630円を記載します。
勘定科目の選択については、一般的に「外注費」や「支払手数料」が使用されますが、「支払顧問料」を設定する会社もあります。重要なのは、一度決定した勘定科目を継続性の原則に従って使用し続けることです。安易な変更は会計処理上認められないため、社内でルールを共有し一貫した運用を行う必要があります。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-journal/consultant-fee/

 

源泉徴収した税額は、翌月10日までに税務署へ納付する義務があります。この納付期限を過ぎると延滞税が発生するため、経理担当者は源泉徴収税の納付スケジュールを適切に管理することが求められます。
参考)源泉徴収が必要な個人に対する支払は?【士業・講師料・デザイン…

 

コンサルティング業務で源泉徴収が不要となる特殊ケース

経営以外のコンサルティング業務については、源泉徴収の対象外となるケースがあります。例えば、webコンサルティング業務やITコンサルティング業務など、企業経営の改善・向上に直接関わらない専門的なコンサルティングは源泉徴収不要とされています。
参考)「webコンサルティング業務は源泉徴収が必要な業務でしょうか…

 

支払う側が従業員を雇用していない個人の場合も、源泉徴収義務は発生しません。これは個人事業主同士の取引において適用される特例で、源泉徴収義務者の定義に基づく例外的な取り扱いです。
参考)個人事業主が源泉徴収する場合、受ける場合の対応は?計算方法も…

 

契約形態によっても源泉徴収の要否が変わります。個人コンサルタントと請負契約を結び、具体的な成果物に対して報酬を支払う場合は、原則として源泉徴収は不要とされています。ただし、契約の実態が雇用関係に近い継続的な指導・助言業務の場合は、源泉徴収が必要となる可能性があります。
参考)コンサル報酬の源泉徴収は必要?個人コンサルタントへの支払い方…

 

コンサルティング業務源泉徴収違反時のペナルティと対策

源泉徴収義務を怠った場合のペナルティは非常に重く、追加納税と罰金が課されます。まず、本来源泉徴収すべきだった税額を企業が負担する必要があり、さらに不納付加算税として10%または15%の追加税が発生します。
延滞税も課され、期限から遅れた日数に応じて年率約7.3%から14.6%の税率で計算されます。例えば、年間600万円のコンサルティング報酬で源泉徴収を怠った場合、本税約61万円に加えて不納付加算税約6万円、さらに延滞税が累積していきます。
対策として最も重要なのは、契約締結時に相手方が個人事業主か法人かを必ず確認することです。契約書に相手方の形態を明記し、源泉徴収の要否を事前に決定しておくべきです。また、経理担当者への教育を徹底し、源泉徴収が必要な取引の判別基準を社内で共有することで、見落としを防ぐことができます。