疑似科学とは、科学的で事実に基づいたものであると主張されているにもかかわらず、科学的方法とは相容れない言明・信念・行為のことです。似非科学や偽科学とも呼ばれ、矛盾、誇張、反証不可能な主張、確証バイアスへの依存などを特徴とします。アメリカ国立科学財団の2006年の報告によると、「疑似科学への信仰は広く行き渡っている」とされ、米国の成人のうち約3分の1が占星術を科学的だと考えているという調査結果があります。
参考)疑似科学 - Wikipedia
科学性を判定するための4つの観点として、理論の観点、実証の観点、論理の観点、社会的観点が提唱されています。科学の方法論では、説明が矛盾なく一貫していること、他の科学分野の理論と整合的であること、限定的な条件や特殊な前提の下でしか適用できない理論ではないかという点が重要です。疑似科学は科学的証拠に基づかず、実験的に否定された後も長期間に渡って信奉されていることが多いという特徴があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssep/48/0/48_273/_pdf/-char/ja
疑似科学が広く信じられる背景には、バーナム効果という心理的傾向があります。これは誰にでも当てはまるような曖昧な占い結果を、自分だけに当てはまる特別なものだと感じる心理です。また、セルフ・フルフィリング・プロフェシー(自己成就予言)という現象があり、ある事柄を強く信じることで、無意識のうちにその通りの結果を引き寄せてしまうことがあります。確証バイアスにより、自分の信念を支持する情報だけを選択的に記憶する傾向も、疑似科学の信仰を強化します。
参考)「占いを科学する」最終回・科学的視点から見た占い|プラスアル…
疑似科学を見抜くためには、批判的思考を促進することが重要です。実験的な証拠があるか、再現可能な結果が得られるか、専門家による査読を受けているか、という点を確認する必要があります。また、主張が反証可能かどうか、つまり誤りを証明する方法が存在するかを検討することも大切です。スペインの医師を対象にした研究では、批判的思考を用いることで偽ニュースの検出能力が向上し、ストレスレベルも低下することが示されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8818444/
占いの多くは疑似科学の典型例として分類されており、実証可能性と再現性の欠如が問題とされています。占いの結果と実際の出来事の間に関連性があるように見える現象は疑似相関と呼ばれ、人間の主観が異なる以上、全く同じ状況を作り出すことはできません。占いの効果の一部は、バーナム効果やプラセボ効果などの心理学的メカニズムで説明できますが、これらだけでは占いの効果のすべてを説明できるわけではありません。科学的視点から見た占いは、予測可能性や客観性を欠いているため、科学とは異なる文化的・心理的現象として理解されています。
代替医療の分野には多数の疑似科学的実践が存在します。ホメオパシーは、物質を極度に希釈した水が治療効果を持つと主張しますが、そのような効果は科学的に証明されておらず、プラセボ効果でしかないとされています。鍼治療はいくつかの痛みや吐き気に効果があるものの、多くがプラセボ効果であると分析されています。カイロプラクティックは腰痛に多少の効果があるとされますが、施術により頸動脈の内壁が損傷され脳梗塞に至る危険性も指摘されています。これらの代替医療の治療効果のほとんどは、治療を受ける側の期待感や信頼感によってもたらされるプラセボ効果であることが明らかになっています。
参考)『代替医療のトリック』
占星術は、天文現象と人間界の出来事や性格描写との間に関係があるとする信念体系ですが、科学的検証の結果、占星術の前提や主張を支持する証拠は見つかっていません。占星術が反証可能性のある予測を行った場合、それは反証されてきました。アメリカ国立科学財団の調査では、占星術を信じることが「疑似科学的信念」の例として挙げられており、科学がどのように機能するかについての知識の欠如を表していると指摘されています。実験下で検証した場合、占星術の予測能力の存在は示されていません。
参考)疑似科学とみなされているものの一覧 - Wikipedia
血液型性格診断は日本で人気のある疑似科学の典型例であり、ABO式血液型によってヒトの性格を特定できるといった主張です。しかし、大規模な統計的研究により、血液型と性格の間に相関は見られないことが示されています。医学的・生理学的に血液型物質が性格に影響を与えるということも示されていません。2015年の日本人を対象とした研究では、TCI(気質と性格目録)を用いた調査が行われましたが、血液型と性格特性の間に科学的に意味のある関連性は確認されませんでした。この信念は、1920年代の古川竹二の仮説に由来し、1970年代に大衆的ブームとなった文化的現象として理解されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4433257/
健康食品の分野では、科学的根拠のない効能が謳われることが多く、消費者は注意が必要です。疑似科学的な健康食品の特徴として、誇大広告、個人の体験談のみに基づく宣伝、「自然」や「天然」という言葉を過度に強調する点が挙げられます。「デトックス」という概念は代替医療で使用されますが、体内から「毒素」を取り除くという主張は科学的根拠がなく、英国の組織サイエンス・アバウト・サイエンスはデトックスダイエットを「時間と金の無駄」と表現しています。人体では、肝臓と腎臓を含む多くの器官が化学物質の処理を行っており、特別なデトックスは不必要です。サプリメントや健康食品を選ぶ際は、科学的な研究に基づいているか、誇張された主張をしていないかを確認することが重要です。
マイナスイオン療法は、空気イオン発生器を実験的な非薬物治療として使用することですが、広く疑似科学とみなされています。マイナスイオンが健康に良いという主張は科学的証拠に乏しく、プラセボ効果以上の効果は確認されていません。「六角水」という概念も詐欺的なマーケティングで使用される用語で、水の特定の構造が健康に良いと主張しますが、これは消費者の化学、物理学、生理学に関する限られた知識を利用した詐欺です。遠赤外線やマイナスイオンなどの用語は、科学的に聞こえるように使用されますが、実際には健康への影響に関する確固たる証拠はありません。身近な製品を選ぶ際は、製造業者の主張だけでなく、独立した科学的研究による裏付けがあるかを確認することが大切です。
参考)疑似科学とされるものを科学的に考える|Gijika.com
情報リテラシーを高めることは、疑似科学に惑わされないために不可欠です。信頼できる情報源を見分けるためには、情報の発信元が査読付き学術誌か、専門家によって検証されているか、利益相反がないかを確認する必要があります。また、単一の研究結果だけでなく、複数の独立した研究によって支持されているかも重要な判断基準です。ソーシャルメディアやインターネット上の情報は、科学的根拠のない主張が拡散されやすいため、特に注意が必要です。科学ニュースを読む際は、元の研究論文を確認し、メディアによる誇張や歪曲がないかをチェックすることも大切です。批判的思考を養うためには、主張されている内容が論理的に一貫しているか、反証可能な予測を含んでいるか、他の確立された科学的知見と矛盾していないかを検討することが推奨されます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8879168/
参考となる信頼性の高い情報源として、日本学術会議や各分野の学会による声明、国立研究機関による報告書などがあります。
疑似科学とされるものを科学的に考える|Gijika.com
疑似科学の評定基準や科学リテラシーを学べる総合的なウェブサイトです。
疑似科学とみなされているものの一覧 - Wikipedia
物理科学、応用科学、医学、社会科学など、分野別に疑似科学とされる主張を網羅的にまとめた参考資料です。